たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×48・49
だいたいどのあたり :昔々のジャスティスリーグ。
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
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48.解答は79ページ
"Trick or treat!"
ブルースちゃんがもっていたのは、JSAのおじいちゃん達からもらったお菓子と、
スケアクロウから没収した、カボチャかもしれないクッキーです。
ちょーだい、と言うハルくんに、ブルースちゃんは何をあげたでしょうか。
理由も含めて30字以内で説明してください。
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カボチャという可能性も一応ある。
ハロウィンにJSAに行くと、老若男女誰でも必ずお菓子が与えられます。
いらないっすと断っても無駄です。
49.上空の猫の影響により飛行遅延されたし
『ハロウィンなのでこんなの出来た。』の、逆バージョンを作ろうとして、何故かこうなった。
というわけで、片方人外エルスです。
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ブルースは、猫又である。
その証拠にしっぽが二股に分かれている。
普段は誰が見ても愛らしい、ふわふわの真っ白猫だが、
本性である魔獣の巨躯は、肩の高さだけでも人間の頭を軽く越えるほどだ。
毛並みは雷電の真っ黒黒、しかも九尾で、咆哮などこの世のものとは思えない。
ある時期ゴッサムシティで、虎の突然変異が真夜中に人を襲うという噂が立った。
事実、一晩に何人も病院に運ばれる事件が続き、正体の知れない凶行は街を恐怖で戦かせた。
けれど、虎ではなくてブルースだ。
どうして猫又になったのか、それはブルースにもわからない。
まだ子猫の時分、飼い主である夫妻を殺された悔しさに、その苦い血を舐めたせいかもしれない。
気がつくと、何かとてつもなく大きく、恐ろしいものに変わっていた。
その時から、暗黒夜のゴッサムに君臨する捕食者は、ギャングでもマフィアでもなく、
闇の底に潜む一匹の魔獣だった。
容易く銃の引き金を引く人間達が大っ嫌いで、狩りの獲物に事欠く日はなかった。
けれどもある夜、魔法使いのおじいさんに出会った。
おじいさんはブルースに、罪もない人まで怖がらせてはいけないよと懇々語り諭した。
以来、黒い獣はゴッサムから姿を消した。
そして、ブルースは放浪している。
もはや誰に飼われているわけでなく、大地の続くところ全ては唯我独尊の草枕。
もともと彼は“お出かけ”が好きだ。
愛猫を実の子供のように可愛がった夫婦が、どこに行くにも彼を連れて行った結果、
人間と一緒に人間の乗り物で移動することに抵抗がない。
だから、堂々とバスや鉄道を利用するし、気の良い猫好きさんの車もヒッチハイクする。
自転車のカゴに入っている時もあるし、馬の背に揺られていることもある。
雪よりも白い、典雅なターキッシュアンゴラ。
星の煌めく瞳は氷底湖の青。
子供に抱き締められても大人しい彼は、行く先々の優しい人々に愛されるけれど、
いつのまにか、街からいなくなっている。
人間達の悪行を裁いて西へ東へ、流離いの猫又。
そうやって流れ流れた先が、カリフォルニアはエドワーズ空軍基地。
青空へと飛び立つ銀翼を仰ぐ、乾いた風の地平。
けれど彼のベッドは、司令官室の上等なソファ。
日課は基地内のパトロール。
随所でおやつをもらいながら、テストパイロットスクールでは航空力学の講義にも参加。
授業の時間なのでスマートフォン等での撮影は禁止だ。
住人の飼い猫でもない彼が、いつどうやって砂漠に囲まれた基地にやって来たのか。
誰も尋ねてみないので、謎のまま。
午後の三時頃、日陰を選んで駆ける、軽やかな影がある。
ふうわり流れる二房の、たなびく純白の尾。
白猫は、461ハンガーの入口で止まった。
中を覗くと、せかせか歩く人間の足、矢継ぎ早の話し声、機材を運ぶ音、電話のベル。
彼の耳がぴんとする。
作業中のスタッフは、静かに入ってきた猫に気づくと、おや、とか、みゃあ、と彼に挨拶。
今日が初めての話でない。
猫の青目は鷹揚に応えて音もなく、隅の方へと歩いていく。
そこには、彼の “カーペット” が横になっている。
ブルースは前足で踏みつけながらその胸に上がり、端然と座り込む。
“カーペット”の階級は大尉。
今整備を受けている機体のパイロットだ。
昨日からのミッションは今夜まで続く予定で、その合間に仮眠している。
不思議なことに、右手にしているリングが、魔法使いのおじいさんのものと似ていて。
だからブルースは、このカーペットの上で寛ぐ。
カーペットには、ハルという名前がついている。
ブルースは、カーペットの様子を注意深く観察する。
起きない。
胸の上に猫又を一匹乗せたまま、気付かずに眠っている。
前足でその頬を、てふてふ、ふにふにしても、目を明けない。
今度は鼻先を近づけてみるが、くすぐったそうにしただけで、特に変化ない。
ただのカーペットのようだ。
そう確認すると、ブルースはまた丁寧に前足を折りこみ、座り直す。
そして、目を閉じた。
それから程なく、ハルは目を覚ました。
叩き起こされなかったということは、まだ時間ではないのだろう。
そんなことを考えながら時計を見ようと腕を動かそうとして、
止まる。
何故だか、自分の上に、ネコがいる。
寝ている。
ハルと顔を向き合うようにして、背中を丸めて。
前足をきちんと自分の下に仕舞う姿勢は、なんでそんな格好で、とも思うが、
ハルがさわろうとした瞬間、ぴゅんと駆け去ることが出来ると彼は知っている。
まったく可愛げのないネコなのだ。
ハルが立っている時は、まず近づいてこない。
誰かに甘えている時も、ハルが傍に来ると途端に遠ざかる。
おかげで、おまえはあのネコをいじめたんだろうと言われる始末だが、
触らせもしない野性動物をどうやって苛めることが出来るのか。
(確信しているが、コイツは血統書付きの野良だ。)
だいたい、ハルはイヌ派なのだ。
イヌの方がずっとわかりやすいし、愛嬌がある。
こんな野良ネコ、あからさまにハルに対してだけ愛想がなくて、
ちょっと撫でようとしてもすぐに逃げられ、
なのに、ハルが気付いていない時だけ、傍に寄ってきて、
人のことをカーペットがわりにして眠る、
真っ白くて、ふわふわの、こんな猫。
可愛く、ない。
浮かせかけた腕を、ハルはゆっくりと下に戻す。
ピンク色の三角の耳が一瞬ふるえ、けれど猫は動かない。
ハルはぼんやりとそれを眺め、そして目を閉じる。
胸の上で、あたたかな動物が眠っている。
人が夢に胡蝶となるなら、猫はいったい何になる。
暗夜の騎士か、冷霧の悪魔か。
三界六道十万億土、遊子は遊ぶ、蓮の朝露。
草葉に野晒し、花には揚羽。
そして、彼の瞳に映る、果てなき玻璃の青空は、銀翼が飛ぶ。
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どのブルース様もおハルさんのことがわりと好きだといいですよという真剣な主張。
ただ、うん、警戒心は強い。 お屋敷生まれのお屋敷育ちにして、北米大陸の生態系の頂点に君臨する猫又。
当たり前な顔してシッポ2本なんだけど、6本指の猫もいるからこれぐらい普通だよね、と周りの人は思ってる、らしい。
でもこの話、猫又である必要ないよねと後で気付いた。
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