たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×6-8。
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
ちゅうい :腐女子向けだよ。 良い子の15歳以下は見ちゃいやん




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6.負けるが勝ちが人生だ。

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晴天の、本日。
ウェイン・エンタープライズの名物CEOは東アジアに出張中(豪遊中)で。
コーストシティにいたブルースは、昼間は飛ばない蝙蝠のために動いていた。
その用件も終えたのが、日暮れまで暫しある頃。
ブルースがハルの部屋を訪れたのは、何の用事があったわけでない。
主が不在の部屋に(無断で)入って、ざっと中を見回したのも、
事件の容疑者の生活形態を調べる目つきと極めて良く似ている。
そのうち、リビングの窓が外から開けられた。

「ハル」

声をかけると、ハルは初めて気づいたようだった。
普通の人間なら、窓から "グリーンランタン "が入ってきたら、
(特に後ろ暗いところのある人間ならば)驚くだろうが。
ブルースはそれがハルと分かっているし、自身も窓から入ることが間々ある。(蹴破ることも多い)
むしろ、部屋の中に誰かいると気づかなかったハルに、呆れていた。
しかし、そこが彼等とブルースが大きく異なる点なのだ。
ハルやクラークは、常に最悪の事態を想定しながら行動する必要がない。
何の特殊な力もないブルースとは違う。

ただいま、と呟くようにハルはブルースに凭れかかった。
この二週間ほどハルが地球にいなかったことを、ブルースは知っている。
そもそも、グリーンランタンというものは、宇宙の広大なセクターを任されるもので、
地球はそこに存在する数ある星々の一つに過ぎない。
このハルなど、あまり地球のことばかり関わっているので、
そのうち訓戒処分でも受ける日は近いなとブルースは考える。

「……ハラ減った……」

ハルは人の顔を見るとそんなことを言う時がある。
それは、バットケイブに行けばアルフレッドが持て成してくれる、という刷り込みだろう。
しかし、これがハルの親友であるスピードスターだったなら、言葉どおりの空腹なのだろうが。
今日のハルの場合、それは疲労を意味しているのかもしれない。
凭れかかってきたハルの、その背中にブルースは腕を回すと、
柔らかなブラウンの髪をくしゃりとした。
耳元でハルの笑う気配がした。
二人してつまずくように倒れたカウチの上、

「しっかりしろ」

と言いながら、ブルースは覆い被さっているハルの身体を退かそうとはしない。
ハルも、しばらくは、動かなかった。
その腕が緩慢に、しかし明確に動き始めても、ブルースは何も言わなかった。
ただ、初めて眺めるハルの部屋の中を、家主の下から仰向けに見渡して。
あれこれと物思いに耽るうち、ふと 気づいた。

「……ハル?」

ベルトを外して、シャツを引っ張り出して、ボタンを一つ一つ外していく、その指が。
脇腹を撫で上げるその掌が、素肌に触れるハルの身体が、違う。
否、違うのではなくて。
ブルースはハルに視線を戻そうとした。
そんなことをするまでもなく、ハルの方がブルースを見下ろしていた。
目元だけを覆うそのマスクを、ジャスティスリーグで見慣れていないわけではない。

「ハル、何故、その格好のままなんだ」

言葉で返す代わりに、疲労困憊(のはず)のグリーンランタンは、
軽いキスをブルースの頬や鼻先や額に降らせていく。
勿論、そんなものでブルースが誤魔化されるわけがなく、顔を背けて身体を起こそうとした。
内心、すこぶる嫌な予感がしていた。
そして、それはすぐに現実になる。

「ッ 手を、離せ」

下腹部から感じた刺激にブルースは唇を噛み、声を抑えて言った。
ハルの手はまるで気にする様子もなく、ブルースのそれに指を這わせて動き続ける。
直接的に昂ぶっていく欲求に、ブルースは両目を固く閉じた。
そこにいるのは、たしかにハルなのだが。
熱を持ち始めたブルース自身を急き立てようとする手は、肌で慣れたハルのそれとは違って。
その感触が、何かとても。
視界を閉ざした闇の中で、耳朶を噛まれた。
びくっと肩が勝手に跳ねた。
声もなくハルは笑い、唇が首筋を伝い降りていく。
良くない傾向だった。
この男は、コミュニケーション能力が低下している時の方が、性質が悪い。

「ハルッ」

一声で両目を明け、半身を起こそうとしたブルースは、己の視界に後悔した。
そこに、グリーンランタンがいる。
肘の辺りまである真っ白なグローブの、その手が指を絡めているのは、
堪えきれずにすっかり立ち上がった、ブルースのそれで。
かっと頬が熱くなった。
反射的に身体を引こうとしても、そもそもカウチに沈んでいるから限度がある。
逆に、グローブの手が、まるで咎めるように指でぐりりと先端を弄るので、
悲鳴のような声が漏れそうな口をブルースは両手で押さえ、
そして、もう逃げようがない。
身体が、まず感覚から、与えられる快楽を悦んでしまう。
そんな自分の有様が、逃げ出したくなるほど、はしたなく思えた。
その白い指を濡らしている体液が、誰のものか、など。
いっそ卒倒してしまいたい。

「なんか、いつもより、感じてる」

即物的な感想にブルースは身体を竦めた。
全くそのとおりで、困るを通り越して恐慌に近いほど、身体が敏感になっている。
息が乱れ、知らぬ間にブルースはまた目を閉じていた。 そして、もう明けることができなかった。

「ブルース?」

ハルが唇を小さく吊り上げて笑っている。
腹立たしいことに、ブルースは見なくてもそれが分かる。
決して本人に言ったことはないし、これからもそんな予定は皆無だが。
ブルースは、ハルが笑うのが、嫌いでない。
呆れることも苛々することも多いが、嫌い ではない。
胸のどこか、すっと安らぐような、時もある。
だからこそ、目を明けられない。
今、そのマスクをしたハルを正視すれば、本当にどうにかなりそうだった。

身体の芯が蕩けるような熱に揺らめいて。
奥底から迫り上がってくる、切ないようなそれを抑えられない。
胸の中でありとあらゆる罵倒を並べ立てても、
それがいったいどういう類の拒絶だったのか、だんだんと覚束なくなる。
唇に口付けを感じた時、ブルースはハルの舌に自分のを絡めながら、
己の腕がいつ解かれ、いつからハルの身体をかき抱いているのか、分からなかった。
それでも、両目だけは閉じたまま。
忘我の闇の中、一つの意志を込め、ハルの肩を噛む。
後はただ、その熱から解放されたかった。






その日を境に。
ハルはブルースから、避けて避けて避けて避けて避けて避けられまくった。
いったいどうしてそんなに怒っているのか聞こうとしても。 どこで、何を、どうやっても。
黒い羽の蝙蝠は見つからない。

神も悪魔も五次元妖精も存在する世界で日夜戦うジャスティスリーグが、
これだけは不可能だと知っていることが、一つある。
それは、本気になったバットマンを捕まえることだ。





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正しい意味でコスプレ。















7.プレゼントには獏を一匹。

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人間、誰でも人肌恋しい時というのは、あるものだ。

「……時がある、のでなく、おまえはいつもそうだろう」

そう鼻先でせせら笑う蝙蝠を、果たして人間の範疇に入れるべきかどうか、意見の分かれるところだろう。
ジャスティスリーグのメンバーなら知っていると思うが。
蝙蝠というのは本当に食えない生き物で、一度ぐらい皆はめられた経験があるはずだ。
まず容赦がない。 まるで無い。
殺さない限り、どんな手段を使っても構わないと考えているところがある。
その上頭も良く回るので、万が一敵対するはめになった時には、これ以上危険な存在はない。
そして何より、あらゆるものを疑う。
人を、事件を、言葉を、世界を、何もかも。
たとえ全宇宙が真実だと信じていることでも、自分が確認しなければ決して信用しない。
けれど、だからこそ。
どちらを向いて良いのかも分からないような最悪の状態に陥った時、
いつもどおりの不機嫌な顰め面で、傲慢なほど超然と道を示すのは、
闇夜から来た黒い羽なのだと皆が分かっている。
そういう、特別な奴だと思ってる。

そんな蝙蝠の生態はといえば。
おそらく世界で最も安全な場所の一つである住処の、
(でなければ、警戒心の強いこの蝙蝠が眠るはずがない)
自室にあるベッドの端に腰掛け、肌触りの良い上等なシーツに一瞥もくれず。
ブルースは、じっと闇を見据えている。
動かないその背をハルは眺めている。
うなされて目を覚ましたブルースが、何を恐れているのか、
ハルは多分、知っている。

「俺? 否定はしない」
「出来ないの間違いだな」
「何でもいいよ。 で。 人肌恋しくありませんか」
「ない」
「言ったろ。 俺が恋しいんだよ」

ふざけているんだと分かるように、軽く言ってやれば。
大儀そうな溜息をついてから、隣に戻ってくる。
その手を引っ張って、シーツごとブルースを両腕で抱き寄せた。
それでも、腕の中の身体は、強張ったままだった。
ハルは気にせずに目を閉じる。
ブルースの目がまだ明いていることは、知っている。
目を閉じるのが、怖いのだ。

ハルは、時々考える。
そうやって、闇の中に居続ける友人のことが、とても歯がゆい時があるのだと、
いつかブルースに言ってやろうと思う。






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ちゃんと友達。














8.信じるとか信じないとか。

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「黒」
「……なら、赤だな」
「黒だって言ってるだろ」
「赤」
「俺が絶対に黒が来るって言ってるのに、おまえ信じないの」
「その根拠のない自信に付き合う気が毛頭ない」
「根拠がない? ふぅん?」
「 何だ」
「じゃあ聞く。 おまえ本当に、俺が外すと思ってるのか」
「……」
「絶対に?」
「いや」
「じゃ、黒。」
「勘だろ」
「勘だ」



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勘=言語分野によらない判断能力の一つ。 来るったら来る。
お春さんは大勝ちか大負けしかなさそう。 むしろその二つしか出来ない。
坊ちゃんは至極どうでもよさそうに、取り敢えず裏に張ろうとします。









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ホントは8番を書きたいがための小ネタ集でした。



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