たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
           それぞれのお話は基本的に独立しています。 たまに繋がっているのもありますが。
昔々、ってどのあたり :ハルがパララックスになる前のこと、というつもりで作ってます。 ただ、番号が進むほどそこらへんどうでもよく、むしろ俺アース。
ちゅうい :腐女子向けだよ。




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1.わめきたい、大人だもの。

なんか言い争いしてる二人を遠くから眺めてる緑矢と超人。


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「ジョンは?」
「まだだよ」
「アーサーは?」
「彼もまだ来ないと思う」
「で? あそこにいるバカ二人か……」
「どうしようか。 その、議論が白熱してるようなんだけど、僕が間に入るともっと怒りそうなんだよね」
「よし、放っておけ」
「いいのかい?」
「どうせ下らない話なんだろ」
「うん、まあ、地球の危機には関係しないかな?」
「よし、撤収だ。 あいつらも殴り合いにはなっても、殺し合いにはならないだろう」
「友達を殴るのも良くないことだよ」
「いーんだよ、二人とも黙って殴られる奴じゃないから」
「だから怖いんだけどなあ……」
「気にすんな。 ハイ撤収撤収」




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きっと本当に他愛無い言い争い。 蝙蝠が後でひっそり反省するぐらいの他愛無さ。
ジョンジョンと海王様がいると真っ先に叱ってくれる。
その二人がいない時は、緑矢のおいたんに放っておかれる。
そしてWWがいる日は、そもそもそんな事態が起きない。 姐さんだから。
ちなみに、蝙蝠もお春さんも、おいたんのことが大好きです。











2.職場内恋愛

小声でこそこそ微妙な話題。


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「…… 一度聞いてみたかったんだけど」
「じゃあ聞くな」
「じゃあって何だ、じゃあって。 で? 本当のところは」
「何の話だ」
「彼女」
「……何もない」
「へえ?」
「何だ」
「意外」
「でもない」
「そうか?」
「第一に、彼女はそれ以上に大切な友人だ。
 第二に、ここで顔を合わせる人間とそういう関係になるつもりはない。
 第三に……」
「全然意外じゃないな」
「……おまえだったら、」
「ん?」
「どうする」
「そうだなァ、とりあえず 『これが終わったら、その後の予定は?』 」
「凡庸だな」
「分かりやすい方がいいんだよ、おまえは面倒な奴だから。
 で、この後は?」




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何もない関係というのも、美しくて良い。











3.St.Anger

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バリーもブルースも、話し込むと長い。
二人の後姿を通りすがりに目にしたハルの、
頭の中、ふと よぎったことは。



東雲の残月も、霧に微睡む街の底。
常世の薄闇の、また底の。
深い闇を身に纏う影。

「……前に、すごくいい女に会って、」

黒は沈黙の色。
口許だけを僅かに晒し、後は深々と隠したような。
その唇に、内側に 触れたとして、易々乱されるものでもなく。

「けれど、口説いたら1時間説教されたことがあった」

その仮面を外して、漆黒のケープを取り去り。
露わにしていく肌の、感じやすい皮膚を、指と掌と唇でなぞって、辿るうち。
ブルースが熱のこもった吐息で、唇の端を吊り上げた。

「珍しいな……」

細めた瞳に、酷薄なような微笑。
ハルは顔を上げると、その顎先に唇を寄せた。

「尼さんだったんだ」

ブルースは、ぱちりと瞬き一つして。
下に落としたままの、闇のように広がるケープに目をやると。
ただ 腕を静かに振り上げて。
ハルの頭に ごちんと拳骨を落とした。







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口説いちゃダメな人達。
修道女よりも蝙蝠の方が露出が少ないよ。
にしても、メタリカをお好きな人には謝るしかない。












4.疑問

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前々からの疑問だったのだ。
だから、ハルはそっと手を伸ばすと、前に立っている蝙蝠の、黒いトンガリ耳を、摘んだ。
途端に、ビクゥッとなったので、

「その耳まで感覚あるのか?」

驚いて声を上げたハルを、
蝙蝠は、錆び付いたように振り返り、

「あ る わ け な い だ ろ」




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たまに伸びる。 硬い時と柔らかい時がある。














5.ご無体な

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それが唐突だったので、ハルは小首を傾げた。

「ブルース?」

深い色の眼差しは問いに答えない。
こころもち面を俯け、ブルースが眺めるのは、その手が掴む、ハルの右手で。
かの大富豪が、そっくりの優雅な仕草で女性の手を取ると知っているハルは、
こそばゆい。
といって、彼女達への甘やかな、どこか憂鬱な微笑など、今は欠片もなく。
ひたりと見据える視線は観察というものに近い。
だから本当に、こそばゆい。

「ブルース」

藍色の双眸が視線を上げる。
深い水の、たゆたうようにハルの顔を眺め。
しかし、何を言うこともせず、そのままハルの手を持ち上げると。
己の口に運んだ。
指の先が、唇に触れた。
難しい顔で引き結んでいることの多い唇が、
唇で触れると、思ったよりもずっと柔らかく開くことを、ハルは知っている。
ブルースの目は、ただじっとハルを見ていた。
まるで、そのまま見ていろと言うように。
唇の隙間からこぼれる吐息を、指だけで感じるのが、もどかしかった。
じれったくなって指を割り込ませると、唇は素直にハルを受け入れて。
奥へと誘い込むように、舌が滑らかに動く。
ブルースは、何も言わずに目蓋を伏せ。
まるで、没頭するように。
吸い付く唇と、丹念に絡める舌と、軽く当てる歯とが、
ハルのそれにするように、中指を愛撫していった。

決して長い時間ではなかっただろう。
けれども、瞬きも呼吸も忘れて魅入られる、束の間だった。

やがて、ブルースはゆっくりと口内から指を引き出すと、ハルの手を離した。
目蓋を持ち上げてハルを映した双眸は、何事もなかったような、藍色。
しかし、その唇は、溢れて伝い落ちた唾液を拭うこともせず、艶やかに濡れたまま。
ハルは、動かずにいられなかった。
衝動なら喉奥を焦がすほど込み上げていた。
だが、その身体を押し倒そうとすると、ブルースはあっさりとハルを止めた。
そして、品良く指を揃えた手を自分の口許に持っていき、唇を覆うようにする。
それから、その手をハルの前に差し出した。
開いた掌の上に、エメラルド色のリングがあった。

「どうしておまえはそう、危機意識が欠如しているんだ」
「え"。 えェー?」





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時々、坊ちゃんの発想も本気で分からない。




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