たいとる : 『クソダサクリスマスセーターの間違ってない使い方』
ながさ :ほどほど×3
どんなおはなし :年末年始にまつわる小話三本。

1、ガイカイルジョンハルGL四人が蝙蝠できゃっきゃっする若干のシモとハコテン。
2、ハルブルだとこうなる。
3、その後のチ××評論(18歳未満は見てはならぬ)


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1. 『クリスマス終了を告げられた地球を滅亡から救う作戦開始までの27分』


ウォッチタワーのラウンジ。
大きなモミの木はスモールヴィルから、いっぱいのきらきらした飾り付けはみんなで。
宗教・文化どころか星も種族も違っても、お祝いごとに関係ない。
その一角、珍しく地球圏にいる四人。
荒れ模様の南場も最終局に入り、今日は緑一色も出たハルが牌の感触ににやりと笑う。

「一番負けた奴はバッツのおひざの上で記念撮影」
「またそういうことを……」
「クリスマススピリット? の存在を確かめるため?」
「えー、サンタ絶対怒るし俺あの人に怒られんのヤダー」
「いや、プレゼントくれるかも。 俺は今年も良い子だったからなー」

根拠はないが自信はある断言に、果たしてあのサンタはハルを良い子だと思ったことが一度でもあるのだろうか、
と思案するジョンは指摘はせず、九筒と共に流して「負けるつもりはないんだろ」。
しかし次はガイの自摸、牌を見るなりにやぁっと笑い、戦友達はキナ臭いものを感じ取る。
自信ありげな様子を隠そうともしないガイは、そんな三人を見回して、

「良い子だぁ? 良い子の何が面白い。 大人には“大人”のクリスマスってのがあるだろ?
 一番負けた奴はバッツのひざに乗って『俺の尻穴にあんたのデカマラ突っ込んでください』って言え!」
「酷い」
「えぐい」
「バットマンに何の罪が……」
「楽しみだろー? 下ネタ嫌いな奴だから絶対すっげェ怒られる!」

はしゃぐガイは、クリスマスの子供のようにほとんど無邪気。
手牌から捨てる一枚も元気良く、その隣でカイルがにっこり微笑む。

「それ、当たり。」






クリスマスシーズン、ウォッチタワーにはサンタがいる。
赤い服でなく黒いスーツとケープ、帽子のかわりにとんがり耳。
でも靴下に願い事をいれておくと、25日のモミの木の下、プレゼントを置いてくれる。
(年齢制限はあるらしい。)

「いたか?」
「モニターのとこ。すっごい機嫌悪そう」
「だいたいあんなもんだろ」

この時期のサンタは昼も夜も忙しい。
あちらのチャリティー、こちらのパーティー、
サンタのために特別プレゼントを押し付けてくる悪い子たちを蹴散らし、
合間に地球の平和も守らねばならない。
そんなサンタの肩の力を解きほぐしてやろうという意図が彼等の行動に、あるわけがない。

「止めてもいいんだぞ」
「止めとこうよ」
「止める? 止めちゃう?」

にやにやしてる三人をじろりと睨み、ガイは不敵な沈黙で踏み出す。
目指すはモニターの前に座す冷厳の彫像、クリスマスなど遠い宇宙の出来事であるかのようなダークナイト。
ガイは堂々と胸を張る。 ずんずん進むその歩みを、通りすがりの何人か目を逸らして見なかったふり。

「よぉバッツ!」

声をかけると同時に彼はバットマンの椅子をぐるりと自分の方に向き直させた。
間髪容れずその素晴らしく発達した大腿筋の上にでんと尻を落として座りこむ。
流れるような一連の動作に、遠くから見守っていた仲間達は思わずうなった。
ガイは勝利を確信した。
そのままバットマンの肩に腕を回し、にんまりと顔を近づけ、あとはほんの、一言二言だけ。
『俺の尻穴にあんたのデカマラ突っ込んでください』
そして彼は、未だ誰も成し遂げたことのない偉業を達成することになる。
ガイは大きく息を吸い、高らかに声を張り上げた。
はずだった。
不思議なことに、歴史に刻まれるべきその声は、彼の喉から生まれいずることはなかった。
もう一度口を開く。
それを吐き出そうとする。
出ない。
苦しくなって今度は酸素を肺に取り込もうとする。
それも叶わない。
喉に張り付いた言葉を無理矢理吐き出そうと全身に力を込める。 顔に血が昇る。
頭の中で黄色い警告灯がチカチカ瞬き、置き去りにされた子供のようなおぼつかなさ。
羞恥などあるはずがない。 尻穴を見せたときですらそんなもの欠片も感じなかった。
わけのわからない狼狽に目玉を見開くが、しかしバットマンは、無言で彼を見据えている。
あらわにしているのは口許だけ。 あとは夜闇に包まれ、隠されて、人間らしい情動など窺い知れない。
蒼白い双眸は一条の光も差さない地の底、暗闇に潜む盲目の獣。
瞳のない瞳が、ガイの目の前に。
そこに彼自身の顔が映り込んでいる。
小さな歪んだ像、なにかまるで随分と昔の、途方に暮れた泣き顔のような。
突然彼は悟った。
あるいは何もかもわからなくなった。
彼は、途方もない間違いをおかしてしまったのかもしれない。
迂闊にも接近し、膝の上に乗ってしまった暗黒サンタクロースが、“あの父親”でなく、
ガイ自身もまた10歳の子供ではないと、どうして言い切ることが出来る……。







悄然とした足取りで戻ってくるガイに、仲間達は驚きを禁じ得なかった。
遠目には成功しつつあるように見えたのが、いったい何が起きたのか。
ガイは多くを語らず、胸糞悪い幻覚だとかなんとかごにょごにょ。
どうやら敵は予想外に手強いらしい。

「あとは任せた!」

とガイが両肩に手をばんと置いて託したのは先刻彼にとどめを刺したカイルで、
「俺?!」と慌てるカイルはなんだかわからないうちに前へと押し出され、歩き始めている。
背中の方からやいのやいの品のない応援だか野次だか飛ばしてくるガイは、けれどもどこか、いつもと様子が違い、
だから仇を討たねばならないのならカイルが討たねばならない。
が、問題は相手だ。
“バットマン”
知らない仲じゃない、色々と世話になった、尊敬もしてる。
けれど話しかけようとすると、校長室に呼び出されたみたいに緊張しちゃう時が、今でもある。
そんな人に向かって何言えって?
無理、ムリです、『そのお上品なお口で俺のデカマラくわえてください』とか言えません。
あれ? なんか違う気がする……。
『下のお口に俺のデカマラ突っ込ませてください?』
いや『ねじこませてください?』
『イキまくるまで?』
そんな!!
カイルの煩悶が何の実も結ばないまま、彼は既にその場所に立っている。
天空に浮かぶ地球最前線の砦、変異をもたらす微細な兆候も逃すまいとするモニターの前には玉座。
その主が、下着と靴下だけの姿の時に偶然居合わせ、着替えを手伝った挙句跪いて靴紐を結ぶことになった過去など、
今、何の助けにもならない。





戦いの場に赴いた後輩を遠くから見守っていた同僚達は、カイルとバットマンが何事か言葉を交わし、
その後カイルが自分達の元へ戻ってくる姿に、首を傾げた。

「……え、あいつ泣いてる?」
「泣いてるな」

袖で顔をぬぐいぬぐい、健気に涙をこらえながら生還兵が語るに、

「正解がわからなくて『抱いてください。』って言ったら本気で怒られた。 死にたい」
「あー、あいつガキばっか囲ってるくせにロリショタだめ絶対だから」
「だが、誰もがやれることじゃない。 頑張ったな、カイル」

訳知り顔で解説するハルの隣、他人事なのでジョンは気軽に戦果を評価したが、
そのジョンにカイルが告げる。

「次、ジョンだからね」
「は?」
「御指名」
「なんでジョン? 俺だろ? そろそろ俺の出番だろ?!」

心底意外そうに言うハルを、コイツほんとバカだ、という目でガイが横から見ていた。
ハルのこの、バットマンに少しでもちょっかい出したくて出したくてしょうがない性分は、
付き合いの浅くも短くもない三人でも、よくわからない。
指名を受けた本人であるジョンは、その理由を知る由もないが、ハルを連れていくと事態がややこしくなるだけ、
というのは分かっており、あとをガイに任せて一人、戦場へ旅立つ。
が、程なく三人のところへ戻ってきた彼は至って平静で、

「行くぞ、そろそろ“仕事”の時間だ」
「えー、ジョンだけただの業務連絡?」
「いや……伝言がある。 『もしもこれ以上“私”の妨害をすれば……』」

豊かなバリトンは今、寒雷の轟き。

「『お前達のケツマ××に拳を突っ込んで肘まで通す』とさ」

瞬間、くるりと踵を返しガイの首根っこを掴んで駆け去ったカイルは、
実際ジョンとハルとは別行動で先発することになっており、だからこれは逃亡や撤退ではないが、
遠くからの二人の吠え声をジョンは聞く。

「っざけんなー! おまえのグローブ、ブレードついてんだろうがー!!」
「俺らバージンだから拳は無理ですーっ」

バットマンはジョークを言わない。 ブラフも仕掛けない。
厳しく引き結ばれたその唇が言葉を紡いだのなら、それは真実である。
しかし、

「……ハル、どこへ行く」

外部ハッチの方角とは逆、つまりバットマンのいる方へ足を向けようとするハルを、ジョンが止めた。

「こっちもすぐに出発だぞ」
「行ってきますのチューだけ」
「止めろ、俺達のケツマ×コを生贄にする気か」
「え? もう一回言って?」

にへっと笑って卑猥な単語を繰り返させようとする相棒を、「小学生か」と顔面を掴んで引き摺っていきながら、

「ただいまのチューまで我慢しろ、どうせ戻ってくるんだから」

ジョンがそんなことを言ったのは、あるいはこれも、クリスマスだからなのかもしれない。
ウォッチタワーはどこも、きらきらしたモールや可愛いスノーマン、キャンディケイン、そしてヤドリギ。
俺達を巻き込むなよ、と付け足すのを彼は忘れなかった。










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JLのお父さんでありお母さんでありサンタでありフェアリーであり……。
四人いたらとりあえず麻雀がはじまるGL。 増えると花札。 ポーカーとかも普通にやるよ。
生態は授業出ずに部室で遊んでる学生と同じだ。
ちなみに尻は穴までホントに見せた。 だがカイルがぼっさまの御着替えを手伝ったことがあるかどうかなど知らぬ。













2. 『bat in the belfry』


斯くして終了を予告されたクリスマスは存亡の危機を脱し、ところによっては延長され人々は互いの無事を祝った。
そして迎えた新年、ゴッサムシティは雪が降っている。
凪の夜、踊り疲れて眠ってしまった街路、ふりつもる雪はきりもなく、なにか夢の底へと舞い落ち、
ハルは雪のにおいにくしゃみ。

「……そんで、」

ゴッサムの数ある聖堂の一つ、闇へと聳えるその鐘楼の上。
フライトジャケットの男がガーゴイルの背中の上で爪先立ちする、シュールレアリズム。
話しかける相手は隣、街を見守る聖人の像は、黒いとんがり耳の怪物の仮面が奇妙。
黒衣がざわりと雪に流れ。

「甥っ子と姪っ子はハシャいで初めてのスキーに行った。 今頃もうバッジャーパスで、
 パパとママの分も一緒にサンタに頼んどくって約束した“おじさん”は、嘘つきにならずにすんだ。
 ……おかげさまで」

物言わぬ石像の横顔は、終わらない夜が研ぎ澄ませたような。
しんしんと雪のしじま。

「“おじさん”の“おじさん”から借りた金は次のクリスマスに枕の下にねじこみに行くから、ベッドで待ってろ」
「……ほう」

街路を見下ろしたまま、それがその夜初めての発声。
石の声とはどういうものか。
存外やわらかでなくもない。

「次のクリスマス。 まさかお前の口から計画性を窺わせる言葉を聞くとは予期していなかった」
「ほめてる? それ褒めてんだろ?」
「隊を率いるという責任はお前のような人間にも変化を促すらしい。 そのまま向こうで励め」
「心配しなくても寂しがり屋で“かまってちゃん”な誰かのために月一で帰ってやる」

夜闇の怪物が重たそうに視線を持ち上げる。
24/7が殺伐の“かまってちゃん”はハルをじろりと睨み、喉奥から唸るように、

「不要だ」

にんまりとハルは笑う。
星々の海を銀河から銀河、足が地につかないが褒め言葉のパイロット。
月に一度など彼は帰らず、年に一度ですらなくなるかもしれない。
そしていつかは無窮の暗夜のその最果て。

「ところで、お前にやる分のプレゼント」
「既に年が明けている」
「さっきジョン達とメシ食いに行ったら財布が空になった」
「私は寧ろその時点までお前に何らかの支払い能力が残っていたことに驚きを禁じ得ない」
「大事なのは気持ちだと思う」
「気持ち」

ハルと対するのは表情のない仮面。
けれどもその底から、お利口さんのブルースが、まるで遥か遠い宇宙の言語を聞かされたように。

「それとクリスマススピリット。 俺の弟はそういうトコうるさい奴で、
 ホントに来るかわからない兄貴のためにちゃんとプレゼント用意してくれてた。
 それがこちらになります。」

と、ハルはジャケットの前を開けた。
コーストシティ生まれの男が真冬のゴッサムの肌刺す寒さを痩せ我慢していた理由は、その中にある。

「クソダサクリスマスセーター」

今や欠かすことの出来ないクリスマスの風物詩、21世紀の新たな伝統だ。
この時期でなければ着るのを躊躇うどころか間違いなく正気を疑われる柄のセーターの、
隠れた名店の中でも至高の逸品を、弟は探し出した。
一目見た瞬間ハルは絶対誰かに見せてやらねばと決意し、そして訪れたゴッサム。
この街の王様は銀の匙をくわえて生まれ、身の回りのものは車から靴下までバカらしくなるぐらい最高級、
年が年中パーリーパーリーのセレブは、クリスマスも葬式も大して違わない。
おまけにその正体は青い血の人喰い蝙蝠で、好物は連続猟奇殺人とギャングの抗争だ。
平和を愛する庶民のクリスマスセーターを、ブルースはおそらく生涯で今日初めて目にした。
その効果は、小さくなかったらしい。
ブルースは何も言わなかった。
“それ”が何であるのか、目的を、存在意義を問わない。 笑いもしない。
雪のかけらが、夜空から踊り。
地上は沈黙。
ブルースはまるで、その頭脳を回転させる精緻精妙な歯車の全てが突然己の役割を忘却したような、
長い長い一瞬の停滞の後、ゆるゆると両腕を持ち上げ手を顔に。
人も蝙蝠も、“叫ぶ”という身体の表情にあまり違いはないらしい。
ハルは妙に冷静にそんなことを考えてみる。
しかし凍てつく夜気の中、その唇が淡くひらいた時、声はなかった。
言葉でなく、ただ空気を薄く削ぎ落とした、雪のような透徹。
寝静まった世界が突如揺れる。
或いはハルの目の前にいる一人だけが。
ぐらり、ブルースの身体が傾いだかと思うと、墜ちた。
墜ちた。
蝙蝠のくせに鐘楼から。
岩の台座から身を投げたスフィンクスのように。
ハルはぽかんとして、誰もいなくなった空間に目をぱちぱち。

「……おーい」

奈落を覗き込み、返事はない。
あの蝙蝠は、羽は贋物でも着地はにゃんこみたいに上手だ。
今頃はもうどこかに逃げただろう。
顔を上げれば、銀の三日月。
夜闇に浮かぶ摩天楼の影はどこか太古の神殿めいて、ハルは英雄のように誇らしく、胸を張る。
サンタの悪戯か、異次元の神々の奇跡か。 きっと弟は信じないだろうが彼は見た。
あの一瞬、ブルースはたしかに、微笑っていた。














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実際には、地に足をつけるまでがパイロットの仕事です。
寂しがり屋でかまってちゃん、はレゴだったんだけど、でもあれ、寂しがり屋ではあるけどかまってちゃん?
むしろかまってほしくないくせに寂しがり屋だからめんどいのね。





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