たいとる : 『クソダサクリスマスセーターの間違ってない使い方』
ながさ :ほどほど×3
どんなおはなし :年末年始にまつわる小話三本。
3、その後のチ××評論(ハルブル・
18歳未満は見てはならぬ)
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3. 『クソダサクリスマスセーターの間違ってない使い方』
やはり、“デカマラ”は正しくない、とハルは思う。
現実問題、デカいとちっちゃいならデカいがえらいのは事実だ。
何だかんだ御託を並べてもいざって時のそれの大小がどれほど露骨で深刻な差を生むか、
わかっているから、そんなのを比べる奴はガキだとかなんとか男は口先だけで強がるし、女は優しい嘘をつく。
(嗚呼ガールズトークの残酷。 内心で値踏みしないとは彼女達も言ってない。)
(だけでなく、ナニがデカいだけで自信満々になるからバカみたい? ごもっとも。)
(けれど裸一つで戦いに臨む時、チ×コは最後の武器であり、自尊心の鎧だ。)
どういう文脈であれ、だから“デカマラ”という言葉にはどこか必ず賛辞の響きがある。 または敬意が。
そして、今ハルの念頭にある人物も、小さくはない。
むしろ体躯と良く比例した、どこで誰に見せても恥ずかしくない代物だ。
断言しておきたいがガイは一度だって本物を見てない。
それに対しハルが知ってるのは自分で確認した実測値。 大きさや形、色艶だけでなく、この手で感じた質量と熱。
鈴口を指で優しく遊んでやるときの息遣いがどれほど煽情的か、胸一つに納めるとしても、
しかし“デカマラ”という表現は、間違いでないが、正しくはない。
第一に品位を欠く。
この場合主眼とすべきは単にデカいかどうかでなく、全体としての均整だ。
人間の顔と同じようにチ×コにも色々ある。
長さ、太さ、その二つの比率、亀頭の形状と大きさ、筋の入り方、曲がるのは右か左か、皮の具合は。
大を尊び小を蔑む傾向が支配的である世界でも、姿形の良さは存在するとハルは信じる。
今目にしているのが正にそれだ。
正面にしても、横から見ても、裏まで確かめても、格調すらある。
大自然は時として芸術作品を造り上げるものだが、人為を排し出現した調和に、人は神との対話を見る。
と、つくづく眺めながら、ハルはお高いブランデーを一口。
肴になるチ×コというのも珍しい。
が、当の本人は、
「なー、そろそろセックスしよ?」
「……しない」
足腰の立たない野郎が生意気に。
鐘楼から落っこちた蝙蝠は意外と簡単に見つかり、怪我はなかったが飛べないのでハルが保護した。
どんなに狂暴な動物だろうが惑星に一匹しかいない絶滅危惧種なのだから、グリーンランタンにはその責任がある。
緊急性を考慮し、連れ込んだのは閑静な郊外にある本邸でなく中心市街一等地のペントハウス。
くったりした図体のでかいのを王族御用達みたいなベッドまで抱えて運び、こんな時にもリングは便利で、
いつもハルをてこずらせる厄介なカウルとボディスーツが、不思議と今日はすんなり外れる。
整わない黒髪と、汗の光る首筋、その胸で窒息出来そうなおっぱい(♂)……、
まるで魔物の呪いが解けたように、漆黒の殻から上気した裸身があらわになる。
指一本動かさずに地上の全てが手に入る男、のはずが、どこをどう間違えたのか、
鍛錬と精神力だけで人間の限界を超えようとする身体の、こちらには馴染みのある古傷、こちらのは知らない。
真新しい打撲痕を見ない日はなく、殴ると言えば拳が砕けても殴り続ける、頭のネジの飛んだ大富豪。
それが今、息も絶え絶えの。
呼吸を整えようと切なげに胸を上下させるのは、笑いすぎて死にそうだからで。
“クソダサクリスマスセーター”
これほど強力とはハルも知らなかった
カウルを外したときにはもう涙目。 睫毛に光がこぼれるのを両腕で隠し、どうしても声だけは堪えたいらしい。
苦悩する人のように眉を顰め、内側から押し寄せる波濤に身を竦ませて、ちらりと垣間見えた眦から雫が一粒。
この光景のいったいどこがファックと違うのか、ハルはちょっとわからない。
「……言った、はずだ。 クリスマスセーターの男とは、絶対に、ない」
一句一句に力を込めて誓う腹筋は尊厳に満ち、もしやそれは曾祖父からの家訓なのか。
ぎゅっと目をつむり、ハルに触るのも怖いみたいに両の腕を盾にして。
「絶対とか言われると意地でもこれは脱ぎません。 せっかく兄ちゃんのために用意してくれたプレゼントです。
弟の好意を無駄にしないようにしたいと思いますのでおまえももう一度目ん玉ひんむいて焼き付けろ」
「不可能な話を、」
「簡単に諦めんな」
ハルはグラスを置いて身を乗り出した。 覆いかぶさる気配にブルースが顔を背けて縮こまる。
薄目で見るとまるで“恥じらい”のように思えるのが面白いが、実際には聖書を突き付けられた悪魔の苦悶。
(どうやら笑っているらしい。)
「ほら、とりあえず腕どけて顔見せてみ? ブサイクなとこ写真撮るから」
その瞬間もう発作に襲われたのか、びくんびくん震わせる身体がイった時そっくり。
今日は随分と琴線にふれる。
(ブサイク、でないのが問題だ。)
「……無理だ」
「ムリじゃない」
ここでがっついたところを見せると先程同様、酔っ払い程度に御機嫌なコイツの容赦ない胴締めを食らう。
鍛え抜いた両脚によるそれはスタミナを奪うためじゃない、内臓破壊が目的だ。
おかげでハルは3秒で一時休戦を申し入れねばならず、体勢を立て直すため大富豪所有の高級ブランデーを、
厳しい戒律により酒色を忌む苦行僧が普段ただの置き物にしているそれを、代わりに堪能した。
なかなか有意義な時間だった。
「つか、チ×コ鑑賞されるのは平気なのに顔見られんのはイヤとか」
おそらくは曾祖母からの禁忌。
破れば地獄の門が開く。
「……顔よりも見慣れて見飽きているだろう、お前は……」
微かにふるわすのは冷笑に違いない。
「はは、ひとをまるでいつもチ×コばっかり眺めてる奴みたいに、まあ見てるけどでも誤解すんな。
おまえと違って俺は常識も良識もある大人だから時と場合を心得るし誰のでもガン見するわけじゃない。
それに、“見慣れる”と“見飽きる”は違う。 良いものってのはしっくり馴染んで飽きのこないのを言うもんだ。
おまえだって俺の好きだろ」
「いや」
「即答ッ」
思わず仰いだ天は瀟洒な内装。 素敵なお住まいを幾つもお持ちで。
(陰気な穴蔵の方が好きなくせに。)
「おまえ……って奴はッ、なんてガッカリな蝙蝠だ!!
いいか、人情も機微もわからねークソ野郎に俺はこれからもう一度とても大切な質問をする。 真実を心に聞け。
おまえが今日まで握ったり舐めたり穴に突っ込まれてイイ声あげてたチ×コは、好きでもないチ×コか」
今度は少し間が空き、顔を隠したまま、
「嫌い、ではない、かもしれない」
「当然」
「しかし、そんな声は上げてない」
「"Hal, HAL! F*** me harder, PLEASE!" とか覚えてんだろ」
「誰かと勘違いをしている」
と言い放って "Jordan." を付け足すから、今日も全く可愛らしい。
目元を覆う腕の影、その口角が弧を描くのを見下ろしながら、ハルは自分のベルトを外す。
グリーンランタンの姿はとっくに解いて、いつものジャケットは向こうのソファに置いてある。
神々のセーターは(面白いから)そのままに、下着の中から辛抱強く出番を待ち続けていたそれを取り出せば、
自由になった途端勢い良く起立するのが実に素直。 忍耐力もあり血の通った仕事をする相棒だ。
その腰を、ブルースの腰にぐいっと押し付ける。
割り開かせた両腿の間、手を添えて自分とブルースのを一緒に重ね、感じやすいそれ同士をゆっくり摺り合わせる。
かたくなに顔を見せない男が、小さく息を呑んだ。
「……無理だと、言った」
「言ったろ? ムリじゃないって」
「“あれ”を着ていると思うと、出来る気がしない」
「えー?」
へらりと笑ってハルの腰は動き続ける。
急ぐつもりはない。 熱を帯びて這い上がってくるじれったさを愉しみながら、
気乗りしないとか言ってる奴の芸術的なチ×コと自身の先端をキスさせ、頬擦りさせて励ます。
「泣く子も土下座するゴッサムのダークナイト様に『出来ない』なんて言われても? ちょっと信用できません?
これはもう身体に直接聞いてみるしか手はないな!」
「陳腐の極みだ。 一度私も言ってみたい」
「だろー?」
腕の影でブルースが何と答えたのかは分からない。
単に不機嫌に唸っただけか、それとも失笑だったのか。
ただ、見下ろし眺める身体は、薄っすらと汗の浮いた、しなやかに投げ出された筋肉の見事な隆起は、
鋼というより刃、その気になればどんな体勢からだろうと相手の手足をへし折るが、
(USAFの名誉のために言うなら、コイツの修錬は狂気の沙汰。)
まだ、そのつもりはないようで、
どんなつもりか、ゆるやかに腰がゆらめき、ためいきに溶けるような、
「……ハル」
「ボク? ジョーダンですけど?」
今度ははっきりと苛立った唸り声が聞えてくる。
人間のそれでない。 飢えた猛獣が洞窟の奥から威嚇した。
けれど、鋭い爪でも牙でもなく、一番弱くて敏感で、どうにもならない部分をハルに預けてさらけ出し、
身悶えする寸前の剥き出しのその緊張を、ハルは、自分がさっき何を考えたか忘れた。
いつのまにか手が勝手に快感を追う。
身体の底で炎が渦を噴き上げる。 ないまぜの意識で見下ろす男の唇は、
さっさと腕どけろ。(キスがしたい。)
「おまえちょっと、ホントいいかげんにしろ」
「お前こそいいかげんにしろ」
何の争いかハルも詳しいところは知らないが、
とりあえず、たぶん、凡そ数か月ぶりのそれなのだ。
喉奥の熱に掠れる悪態を聞くのも、その吐息がふるえているのも。
臓腑を炙って欲求が急激に迫り上がる。 が、叱咤するように抗いハルは手を離した。
思わず呻いた喉が塞がる。 自分に待ったをかけたのは自分自身だが、笑えるほど切ない。 笑おう。
ナイトテーブルの一番下の引き出しを中も見ずに漁る。
ブルースは、自分のテリトリーで“リング”を使われることに良い顔をしないが、
寧ろ、意志の足りない者には絶対に扱うことの出来ない宇宙最強の武器を、チ×コ完全勃起状態のまま、
ちょっと手の届かないところにあるゴムとローションを取るのに利用する、この冷静沈着な集中力を褒めてくれ。
「……っ」
「何か言いました?」
潤滑剤(きっと100%オーガニックの無駄に高級品)をたっぷり指に取って目を上げると、ブルースは、
虚空に叫ぶ沈黙は、弓なりに背をしならせ、両の掌を両の目に押し当て、
突き上げる肘が、まるで氷の峰のように鋭く天を仰ぐのが、
いる。 ロダンにこんな人いる。
「ブルース?」
カウルがあろうとなかろうと、ブルースは表情の変化に乏しい。
というより、それを表に出そうとしない。
大概が深淵を覗き込む哲学者みたいな小難しい顔でだんまり、“嬉しい”も“怒っている”も素通りか圧殺。
ハルは、偏屈頑迷な友人の、如何ともし難いこの病気を、まあそれなりに、気にかけてなくもなく、
限りある機会、気晴らしか気休めか、友人が自縛の拘束着から生身の手足を自由にする時、
出来る限り協力したいと思う。
「……すっげー……」
張り詰めたその四肢の、嵐に向かって叫ぶ人のような雄弁。
ハルが恍惚と眺めるそれは、声の上げ方を知らない友人が全身でさらけ出す熱情なのだ。
ぬめる指を、その奥へ。
本能をあらわにしてなお品格ある男性器の後ろ、慎ましく処女ヅラしたケツマ×コ。
優しくしたい。
時間をかけて馴染ませ、柔らかく解きほぐれて、抜き差しのたびにぐちゅぐちゅと音を立てるぐらい。
短気で我慢を知らない蝙蝠は、さっさと突っ込ませたがっていっつも文句を言うが、
生憎こっちはこれが楽しくて宇宙の果てから飛んでくる。
(処女ヅラをしてるだけで全くちっとも処女じゃあないが、無理やり入れれば痛いのは誰だって同じで、)
(なのにコイツがどうでも良さそうに言うのは、単純にドMだからだけじゃない。)
(腕でも足でも中身でも、いつだってどこかが痛い。)
「んっ……く、」
円を描いて入口を撫でていた指を、強張った身体から力を抜こうとする呼吸に合わせ、ぬるりと中へ。
ほんの浅く、ゆるく出し入れを繰り返しながら、だんだん異物に慣れさせる。
「ハルっ」
「まぁだ。 全然まだです」
もちろん、焦らしていないわけがない。
取り繕えない声をもっと聞かせてほしい。
熱くて柔らかい内側に入り込まれ、イイところを暴かれる男がどんな声を上げるのか、自分の耳で聞いてほしい。
開かれたブルースの両脚が心許なげに膝を揺らすので、なでなでしてやろうと片方を小脇に抱えると、
触れた瞬間、電流が走ったようにその脚がびくっと震える。
「んー? ああ、セーター」
道理で暑い。
ハルの着ている物など(ジャケット以外)いつもはぞんざいに剥ぎ取ってそこらへんに放り投げるブルースは、
この期に及んでまだ両腕で目を覆い、自分を守ろうとして本当に諦めが悪い。
が、もしかしたらそれだけでないのか、何かを訴えるような唇を覗き込み、ハルは首を傾げた。
「御注文は?」
「……さっさと、それを」
「脱ぎませーん。今日は世界着衣エッチの日って国連が採択したの知らなかった?」
「そんな日は無いッ」
「あるよ? 前だって着たままだった時あったろ? 嫌そうには見えなかったけどなー」
反駁しかけたブルースの唇が、言葉の代わりに細い吐息を洩らした。
銀糸を震わすようなそれにハルは頷き、ブルースの中に埋めた指で前立腺をやわらかく探り続ける。
「やっぱり、嫌そうに見えない」
もがこうとする身体の肩が浮く。 きつく食い縛る歯の月のような青白さ。
牙があったら喉笛に噛み付いていただろうが、唸るように囁いた。
「違う」
「何が?」
「汚せ、ない。 弟の、」
言葉はそこで途切れ、決然と唇を引き結ぶ。
そんな友人を、ハルは暫く黙って眺め、それからまた、
切ない吐息を聞かせてほしく、ゆっくりとそこを慰撫する。
「別にいーんだよ、心配しなくて。
ジムは兄ちゃんの性生活に寛大だし、後でちゃんとクリーニングするから」
もう少し気の利いたことを言いたいが、なかなか。
「プロの繊細な技、披露してやるよ?」
ブルースは両手を目に押し当てたまま首を横に振る。
声も出ないそれはどこか子供がむずがるようだった。
ハルは声を上げて笑った。
あるいは、笑ったのではないのかもしれない。
執事のいるお屋敷に生まれた深窓の箱入り息子。
清く正しく育てられたのが、今はどうしてか洞窟性大型肉食蝙蝠で、
ナイフとフォークを使って食事すること以外、人間らしさは残ってないが、
ハルの大事にしているジャケットが元々誰のだったのか知っているし、絶対に忘れない。
友人のそういうところに、ハルはほんのちょっと、弱い。
(洞窟の奥には棺が二つ。 いや、三つか。)
仕方ない。 暑いのはたしかに暑い。
どうせ汗だくなら素肌で抱き合うほうがいいと、セーターを脱ごうとしたその時、明かりが消えた。
途端に何も見えなくなる。
月350ドルの安アパートが停電したんじゃない。
床面積のクソ広い贅沢なペントハウス(窓の外にはもちろんプール)、それが突然闇の底。
右も左も毛筋ほどの光もない。 目を明けているのか閉じているのかすら分からない、唯々闇々々々。
(結局ここは蝙蝠の城で、主が是とすれば全てのものは夜になる。)
「ホント、『待て』が出来ねー奴」
ハルも他人のことは言えないが。
脱ぎかけのセーターを身体から抜こうとして、この闇は腕がある。
まだ目の慣れないハルが手探りでもぞもぞしているのを助け、なかなか手際良い。
まずセーター、次はシャツ。 素っ裸にされるまでほとんど時間はかからず、
お礼に捕まえようとすると、どこに消えたのか指の先に届くのは天も地も融けた闇ばかり。
爪の先から輪郭がとろけていく、あの奇妙な浮遊感と圧迫感。
(宇宙の最大構造は暗黒だ。)
いつかの流刑地のような果てのない茫漠に投げ出され、けれども、ハルは独りでない。
無明無間のどこか、あるいは皮一枚を隔てたそこに。
体温と、におい。
肌の、髪の、首筋の、肩の、膝の。
盲目の漆黒世界に夢幻のように鮮やかに、浮かぶ。
懐かしいその夜闇へ、両手を伸ばす。
それよりも前にブルースの手がハルを捕まえている。 しかも耳。
引き裂きたいのか撫でたいのか、顔でも頭でもかきまわす指が心地良くなくもなく。(たぶん引き裂きたい。)
お返しにハルは今度こそブルースを捕まえて、勢い良く唇で唇をがぶりとやる。
接触の衝撃で血が滲んでもよさそうだが、不思議とこのキスとやらが甘い。
痛いほど胸が高鳴る。 胸骨を突き破って鼓動が重なる。
陶然と、見えるはずもない藍色が睫毛を揺らし、囁いた。
そんな恋人に、ハルは牙を剥いて笑う。
「こういう時だけ甘える」
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おつかれさまでした。
別にプロじゃないけどあのリング、クリーニングぐらいできるでしょと思ってる。
とりあえず、なんだ、ぼっさまはおハルさんのチ×コわりとほんとに好きで、手持無沙汰になるとなんとなくいじって遊ぶよ。
遊ぶだけだけど。
この二人、まずは鉄板ファザコン繋がりであってほしいものです。
お互いにそれは理解してて、どんな時でも相手のそれだけは冒さないという領域があればいいなあと。
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