たいとる : 『なぜなに教えて大富豪』
ながさ :短い
どんなお話 :『ラブコールC』の中に入れようとして入らなかった、ブルース・ウェインって誰? にまつわる小話。
         公式のおハルさんもちゃんと分かってんのか、未だはっきりした描写がないという……。



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流石に、そろそろハルは、気付いた。
あのとんがり耳の真っ黒蝙蝠は、本物の、大富豪だ。
という結論に至るまでの××ヶ月は、別に彼が、地球で過ごす時間があまり長くなく、
経済情勢にもセレブのゴシップにも興味がないから、ではない。
事実、産業界におけるウェインテックが、どういう水準の仕事をする企業であるか、
彼は一般人より承知しているし、自宅に帰る前にウォッチタワーで食料を適当につまんでいる間、
人並みにテレビを見ている時もある。
が、その“ウェイン”と、ハルの知っている“ウェイン”は、彼の中で容易に一つにならなかった。
合点のいくところはある。
バットマンの装備を見れば、高度の技術とそれを可能にする資本との関係を推測することは出来るだろう。
しかし、それでも、
バットマンと、ブルース・ウェイン本人は、イコールにならない。
その二者を同一であるとする考えは、致命的に狂っている。
それが尋常の感覚ではないかとハルは思う。

「頭おかしいだろ」
「まあ、正気ではないな」

ある日、二人だけだったので直接聞いてみると、そんな風に答える。
ブルース・ウェインなら、バットマンを支援出来るだろう。
しかしそれと、彼自身がバットマンでなければならないことは、全く別の問題だ。
どこの世界の大富豪が、自分は指一本動かさなくても、全てを手に入れることが出来るのに、
たった一つしかない自分の命をわざわざ危険に晒す。
スリルは、なければハルも生きていけないが。
金持ちの道楽のように、それが目的でグリーンランタンなどやっているわけがない。
そして、バットマンほど、道楽と対極にある存在はない。
それは、人間が狂っている。
(あるいは、正しすぎる。)

どちらにしろ、ハルの知っているバットマンは、
世間一般の思う富裕特権階級とは最もかけ離れた存在だった。
更に付け加えるなら、

「おまえコレないわー、セレブのそういうとこドン引き」

また別の日、テレビの画面の一つをハルは顎で示した。
それは、世界屈指の資産家でプレイボーイのブルース・ウェインが、酔った挙句にクラブでストリップした、
というもので、鮮明な画像がないのがもったいない、らしい。
バットマンとストリップも、決してイコールにならない。

「それか。 それは大袈裟に言われている」

ブルースは、にやにやしているハルに淡々と、

「私はジャケットとネクタイしか脱いでない。 シャツを脱ごうとしたらジムから、
 GCPDの本部長から電話があって、結婚前の男子が人前でそういうことをしてはいけないと、諭された。
 だから、反省している」
「……へぇ?」

カウルで表情の読みにくいダークナイトを眺めながら、
ハルはなんとなく、こいつ完全にシラフだったな、と覚った。

「じゃ、ストリップは本当か」
「馬で負けて、そういうことになった」
「馬? おまえ賭けんの?」
「自分のにはな」
「うん?」
「私の馬と、友人の馬が同じレースに出走したので、もしもどちらかが勝ったなら、
 負けた側は罰ゲームをすることに決めた」
「馬、持ってんだ」
「あまり気にかけてやれないが」
「ちなみに、お友達って何してる人?」
「外科医だ」
「うわー、やっぱり金持ちのニオイがするー」
「優秀だぞ。 紹介してやっても良い。
 しかし、お前のその注意力と計画性の欠如は、彼にもどうにも出来ない。
 残念ながら、それは現代医療の限界だ」
「は? 俺の完璧な頭脳に何か文句でも?」


そうやって、だんだんと理解していく××ヶ月の、
ある日のハルのおやつは赤いきつねで、ブルースのは、きなこもち(あんみつかけ)だった。

「なー」

バットマンは黙々と何かのデータに目を走らせている。

「おまえさ、そのカウルなんで口のとこ開いてんの」

常識的に考えて、自分が何者であるのかを誰より秘密にしなければならないのは、ブルースだ。
顔を隠すなら全て覆ってしまえばいい。 余計な情報を相手に与える必要はない。
まあ、物を食べるのには都合が良いが。

「隠せば? ニンジャみたいに」

すると、今までハルの話を聞き流していたバットマンが、くるりと彼の方を向いて、うんざりした顰め面。
なるほど、人間の口許は多くを語る。

「忍者は嫌いだ」















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年間通して何体もぶちのめしてるから嫌いだと思うの。
外科医の御友人は、そろそろnewな52に登場してもらいたいハッシュ先生です。
女関係もだけど男関係も嵐を呼ぶぜ、ぼっさま。
二人して素行の悪いセレブなツラの皮かぶっててほしい。 んで本部長から未成年を心配する親のような説教をされるといい。




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