たいとる : 『突然ですが夏休みです』
ながさ :短い×14
だいたいどのあたり :昔々のジャスティスリーグ。
どんなおはなし :GL/蝙蝠で夏休みだったりする小ネタ集。1、2は違いますけど。
ちゅうい :腐女子向けだよ。
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1.モーニングコール
『起きろ』
声は一言、断ち落とすように。
二秒後、ハルは顔を顰めて、しぶしぶベッドから背中を起こす。
せめてもう30分待ってからでも良いだろ、と。
両目を明けたのは、見知らぬ部屋。
「……あー、あったま痛ェ……」
一人呟く、清々しい二日酔いの朝。
昨日バーにいたところまでは覚えているが、そこから先は霧の中で。
ぼんやり見回せば、脱いだ服がベッドの傍に落ちている。
サイドテーブルには、空になったウィスキーのボトル。
記憶には、ない。
どうやらモーテルの一室にいるようだ。
一緒にベッドで過ごした相手は、とっくに部屋を出たらしい。
ろくに顔も思い出せないが。
歎息。
ハルではない。
冷淡に、あからさまに嘲る、低い声。
部屋にはハルの他、誰の影もない。
『大方、記憶を失うほど飲んだんだろう』
声は、ハルの右手から。
グリーンランタンは、一人一人が宇宙の秩序維持を担うのだ。
そのリングは、たとえ銀河の彼方からの出頭命令でも、即時伝える。
声から察するに、暫く振りに聞くゴッサムシティの偏屈で有名な探偵は、相変わらずの様子で。
ハルは、あくびしながら答える。
「楽しい夜だったのは覚えてる」
『相手の顔も覚えてないような奴が良く言う』
「いや、ブロンド。 で、すっごい美人」
といって、思い出す気配はまるで無く。
この先も思い出すことはないのだろう。
あるのは、やけにすっきりとした、空白だ。
ハルは鼻で笑った。
右手からは、無言。
何も言わないが、ハルには自然と分かる。
空白の向こう側、ブルースが今、如何にも呆れたという風に、僅かに片眉を上げた。
だいたい、あの鉄壁の仏頂面は、そう簡単に忘れられない。
それでまた笑えた。
「で? 俺に何か用なんだろ」
『二日酔いの飲んだくれに用など無い』
「30秒待て。 シラフに戻る」
『計っていいのか』
「それだけ待てるのなら」
沈黙は。
微笑ったのかもしれないと、何故かそう思った。
『30分で私のところまで来い。 "仕事だ"』
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多分、物騒なことを考えてる探偵様。
ところで、おハルさんは別に飲んだくれじゃないよ。 並程度よ。
が、飲酒運転で事故起こして実刑くらったことはある。
シークレットオリジンを読んでないのでそこらへんどーなったか確認してませんが。
2.北米に棲息
ぐりーんらんたんというのは、れっきとした"組織"に所属するそんざいなので。
情報とうかつするオアへの報告書や、時には始末書を。
きちんと提出するまでがお仕事です。
そんなある日の、通信記録一部ばっすい。
『……地球を中継地にしたセクター2814の違法貿易網についての詳細は分かった。
しかし、報告書の数箇所で見られる "バットマン"というのは、何物だ?』
「ああ、それか? そいつは地球で最も凶暴な生物のことだ。
洞窟の奥に棲んでいて、縄張りに近づく奴を容赦なく攻撃する」
『それは大型の肉食動物か?』
「いや、もっと性質が悪い。 殺し以外なら大抵のことはやる。
地球に来る時は気をつけろ」
『そうしよう』
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全く嘘というわけでもない。
しかし、ものによっては蝙蝠様の名前は全宇宙規模で知られてるので、
オアのガーディアンズから事件解決を頼まれたりもしたが、
ゴッサムが忙しいから嫌だと断ろうとしたのはホントの話。
引きこもり探偵!
3.突然ですが夏休みです。
ウェイン邸の万能執事が、久方ぶりに母国で羽を伸ばすかわり、
人一倍世話の焼ける主人に約束させたのは、執事不在の間、主も "休息"することだった。
よって、半強制的にゴッサムから遠く離れた南国の保養地送りに処された大富豪は、
そこで人並みの夏休みを満喫せねばならないのである!
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白い部屋の、白いベッド。 窓の向こうは、潮騒の青空。
裸身のブルースは、シーツの上に座っている。
いつもの難しい顔のままで。
「だいたい、私は夏が嫌いだ」
「へー。 なんで」
その傍ら、悠々横になっているハルは、右手を伸ばすと、
ブルースの背中をぱちんとやった。
「この季節ぐらいコレ拝ませてやれよー。 入れ食いだぞビーチは」
「下らん」
即座に言い捨てる友人は、
実際、ストイックな身体をしているとハルは思う。
まるで、鋼を精錬するように。
余分な一切を削ぎ落とし、より強く、より鋭く、
限界の先の先を求めて、ひたすら鍛え抜く身体。
そして、臓腑の奥の暗がりでは、底のないような夜闇と繋がっている。
「言い逃れをしなければならないことが増える」
ブルースは、至極つまらなそうに言った。
その首筋の左から肩甲骨の下、抉られたような太い傷痕が走っている。
「ああ、そっか」
ハルから見れば、特に珍しくもないのだが。
銃創や裂傷、大小様々な傷痕が、その身体の至る所に刻まれている。
それは、享楽に生きるだけの大富豪に、あってはならないものなのだろう。
ハルは、たまに考えてみることがある。
何故コイツは、こうなのかと。
ブルースは、事実として、紛れもなく、生粋の、特権階級だ。
表沙汰に出来る資産だけでもケタ違いすぎてピンと来ない。
が、特別だというのは、そういうことではなく。
ブルースは、望めば全てを手に入れることが出来る。
何でもやれるし、何にでもなれる。
これでアホなら逆に幸せだったかもしれないが、
コイツ自体、出来が良い。 すごく良い。
その、とびっきり恵まれてる持ちモン惜しげもなく全部一点にぶちこんで、
挙句が。
「おまえは水着のおネーチャン達とイチャつくのも一苦労だな」
安寧とは真逆の背中を、つくづくと眺める。
ハルはベッドに寝転んだまま、その背にそっと手を伸ばした。
それを、一瞥もせずに叩き落そうとするブルースの指を、掴まえる。
「じゃあ、明日は海に行こう」
口付けは、それぞれの指に。
掴んだ手が、手の中で びくんと小さく跳ね、
何かを言い逃したブルースは、唇を結ぶ。
かわりに、ぞんざいに振り払おうとした。
指を指に絡めたハルは、そのままブルースの腕に任せて身体を起こす。
「どうせプライベートビーチだろ」
視線を掬いとり、覗き込む瞳は藍色。
ブルースは怒ったように眉を顰め、唇が唇でふさがれても、喉の奥で低く唸ってみせた。
その時には、背中からベッドに沈んでいたが。
「たまにはちゃんと、太陽の下に出ろ」
夜露に濡れたような黒髪に、白い額に、
ハルは唇を寄せる。
ブルースは不服そうに、けれど、睫毛を伏せて、
ハルの感触を一つ一つ、たどる。
やがて、吐息の中、低い声で何か呟いた。
聞こえないその言葉を、ハルは笑った。
喉へ、鎖骨へ。
唇は熱を込め、ゆるやかに下へ。
白い部屋の、白いベッド。 窓の向こうは、潮騒の青空。
「なあ、この脇腹のデカイの。 何の痕だ?」
「……ああ、槍が貫通したな」
「コラ。」
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良くある良くある。
基本的に夜行性なんで意識しないと日焼けする機会がない。
そういう人こそ太陽の下に引っ張り出そうよ。
それがさまーばけーしょん。 昼間からいちゃいちゃ。
明日の話だってしちゃうんだ。
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