たいとる ： 『脈絡もないがつまりはそういうことだ』
ながさ ：短い×1-6
どんなおはなし ：小ネタ集。
『FINAL CRISIS』、『BLACKEST NIGHT』、『BATMAN&ROBIN』、『BATMAN :
THE RETURN OF BRUCE WAYNE』
まで突っ込んで、途中関係ないネタもまじえつつ、しかし収拾はつけない。
ちなみに、この1-6は原書↑４冊と関係がない。
出てくる人は無名の一般市民だったり色々。
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１．34歳 売春斡旋業
こんなのフェアじゃねえ！
俺はアーカム送りの奴等とは違う、ケチで真っ当なチンピラだぜ ?!
おいおい勘弁してくれよォ、このゴッサムに何人ポン引きがいると思ってんだ。
なんで俺だけが蝙蝠野郎に目ェ付けられんだよ！
女を薬漬けにした？ それがどうしたッ！
あいつらだって気持ち良ーく商売が出来るってもんだろ !?
と、襟首を掴まれたまま男は必死に"隣人達"に喚き立てたが。
しかし誰一人男と目を合わせようとしないのだ。
そこには同業者も女達も客もいたが、しかし、誰も決して。
ズダ袋のように男が引き摺られていくのは、小便と反吐の臭いが染み付いた路地裏。
脱げた靴の片方を さっと浮浪者が奪って鼠のように逃げた。
喉を涸らして騒いでも、両側にそびえる灰色の壁は虚ろ。
喚く言葉もやがて失せた。
なあ、おい、どこ行くんだよ……
警察。 警察に 行くんだよな？
"真っ当なチンピラ"の虚勢、その儚さ。
べらべらと風に翻るのはストリップバーの破れたポスター。
暗く、冷たく、重いものが、男の胸の底から迫り上がる。
まだ動く片腕を跳ね上げ爪がコンクリートを引っ掻き、ぬちゃりと何かが触れた。
悲鳴は少女のようにか細く、どこからか聞こえる罵声に易々と掻き消され。
男の目玉はぎょろぎょろと落ち着かない。
……あんた、俺を 殺さないよな ？
ずるずると男を暗がりに引き摺っていく、その腕は。
否、腕なのか。
視界に映らず、あるいは蠢く無明無形。
夜闇の底は裂け、冷霧は深淵から這い上る。
な？
何とか言えよッ
なァ！
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小便と書けばハードボイルドになると思っている節がある。
勘違いも甚だしい。
２．50歳 ドラッグクイーン
ジンとヤニとで掠れた、長い長い思い出は
そして締めくくられた。
「これで満足かしら」
瞳を明けた彼女は、ドレッサーの鏡の中、赤いウィッグの女王が問う。
胡粉で塗り潰した顔に、金と紺青で描く眦の威厳。
「ああ、参考になった」
その低い声がしかつめらしく、女王の唇は薔薇の色。
不思議と、声の主の黒い影は鏡の中に無いのだが。
「こんなオカマの昔話のどこが面白いの。 あなたもおかしな人ね。
見れば分かるけれど」
振り向けば、夜闇の騎士は不動のまま、数々の舞台衣装に囲まれている。
華やかな白、艶めく深紅の中、彼女を見つめる漆黒の典雅。
「……あたしのステージに上がらない？ あなたの歌が聞きたいわ」
「遠慮しておこう」
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意外と歌えますが。
３．13歳 14歳 11歳
１、２、３でぶっ刺して、それで終わり。
何びびってんだ、すっかり寝てんじゃねェかこのジジイ。 ラクショーだ。
へっ、見てろよォ……俺に怖いもんなんか無いってのを、教えてやる。
振り上げたナイフは、19㎝の刀身を
泥酔した老人の胸に突き立てようとし、
握った拳ごと後ろから掴み取られた。
真っ黒い、大きな手だった。
ひっ と少年の喉が引き攣ったが、声は出せなかった。
代わりに友達二人が悲鳴を上げて逃げ出した。
「待っ
拳を掴み潰すような黒い腕は無造作に少年を吊り上げる。
足元から地面の消えた感覚に全身の血液が熱を失う。
突然世界から大気が消え失せたように息が出来ない。 声が出せない。 怖い。
そして少年が目にしたのは、"怪物"の貌。
ここに一つの倒錯がある。
それは夜闇の怪物を模した、ただの仮面であり、
両眼に冷たく光る銀色のガラス質は、"彼"の情動の僅かな欠片も浮かべはしないのだ。
にも関わらず、少年はその目の中に確かに、見た。
己があの老人に投げかけた、汚いゴミを眺めるような眼差しを。
さて、人は塵芥を廃棄するのにどれほど躊躇うだろうか。
答えは少年自身が良く知っている。
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未成年なので指を砕くのは止めてあげました☆
４．年齢不詳 塔のラプンツェル
ダーリン♪ あなたを思って待っていたら、こんなに髪が長くなっちゃったわ♪
あなただけなんだから、売女だなんて思わないでねェ♪
「あ、バッツ来た」
「ぃよォ！ダーリンｖ 俺のことが恋しくって夜も眠れなくなったのかい？」
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年齢不詳・本名不明 アーカム精神病院収容中。
直後、顔面にブーツの裏がめりこむ。
で、患者に暴力をふるわないで下さいと先生が泣いて頼むまでマウントポジションから殴られる。
収容者に刃物は渡されないため、伸びちゃった前髪も結んでる。
ちなみに独房の並び順は、スケクロ・王子・２面・ニグマ。
お昼になるとレクリエーションルームできゃっきゃっしてる。
歌心は即興です。
５．執事の仕事とは。
怠慢と謗られるだろうが、アルフレッドは主人の帰宅に気づかないことがある。
執事として全く情けなく思う。
時が時なら、ウェイン家の当主が屋敷に帰る際には、家人からメイドや従僕まで揃って出迎えたという。
現当主は、歴代よりも些か奇矯な面があり、身の回りの世話にしてもアルフレッド一人しか置いてない。
故に、彼が前置きなく行方をくらました十数日の後、
やはり前触れもなく深夜、物音一つ立てず、
猫のようにいつのまにか屋敷に帰っていると察した時、
アルフレッドはまず、彼の姿を探すところから始める。
初めは地下へ。
そこから、痕跡を辿る。
そうしながら、様々なことを考えるのだ。
彼が怪我などしていないかどうか。
あれほど思慮深くありながら、彼は己自身のために考えるということが出来ない。
さらに、"事件"に没入すると、飲むことも食べることも忘れてしまう。
逆説的だが、その様子は、餓えに駆られた獣が一心不乱に獲物を追う様にも似ている。
そして、碌に寝てもいないのだろう、また。
ケープはここに。
カウルはあちら。
一見したところ損傷はあるが、酷い有様という程ではなく、床に血痕もない。
しかし、脱ぎ落としながら廊下を歩いている。
行儀が悪い。
ぽいっと放り投げられたグローブが一つ、二つ。
拾い上げながら辿り着いた先。
アルフレッドの主人は、バスタブの住人。
「ブルース様」
声は届いたようで、何か返事でもしたようだが。
両目を明けることはない。
ぬるくなった湯の中、欠けることのなかった四肢は悠々。
「お帰りなさいませ、旦那様」
アルフレッドは背筋を正し、両の袖を捲った。
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この後ちゃんと丸洗いして、ベッドで寝てもらいました。
出て行った猫が帰らないのも心配だが、出て行った主人が帰らないのも心配。
旦那様というか、御館様と書きたくなる。
６．一週間家を空けると何が起きてるか分かりません。（養子後ティム）
うちのボスが他所で何て言われてるかは知ってるし、異論もない。
たしかにあの人は、その必要を認めたなら、
ジャスティスリーグだろうと何だろうと必ず行動不能にさせるだろう。
あらゆる手段を使って、徹底的に。
もちろん、これはただの比喩だ。
けれど、ブラフでもない。
でも、結局は皆、理解してないんだ。
好き勝手に言ってるだけで、本当のところはきっと、分かってない。
うちのボスは、"バットマン"として知られている以上に、手がかかる。
僕には連絡を欠かせるなって言うくせに、自分はすぐに音信不通、時々遮断。
それなりの理由がある場合はまだ良いとして、
忘れた、とか、思いつかなかった、とか。
あんなに僕がいつも、出かける時は行き先を告げてからって言ってるのに。
おかげでしっかりピンチになっちゃったりするし、
ちょっと目を離しただけなのに、心臓停止だとか子供が一人増えてたりするし。
気が抜けない。
それでいて、誰も彼も、この人の掌の上で踊る。
そういうとこ、すっごく性質が悪いよ。
「ただいま、ブルース」
こくり こくりと 微かに揺れていた頭が、止まる。
テーブルには"朝食"が途中のまま。
午後のサンルームは、秋晴れの穏やかな日差し。
椅子に深く沈み込んでいたブルースが、静かに両目を明ける。
瞬きした睫毛が震え、藍色の瞳が光を重ねる。
「……おかえり、ティム」
少し掠れたような声で微笑う、仕方のない人。
行くと言ったら宇宙の果てでも行くのに、家に帰ることは何故か頭から消えてそうな、
うちのボスが昨日まで追っていたのは、どんな難事件か。 それとも大冒険か。
発端から大団円を聞き出す前に、まず朝食の存在を思い出させよう。
本日のお小言はその後で。
父親の世話を焼くのも大変だ。
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家に帰るまでが遠足です。
世界最高の探偵は、あらゆる万が一に備えておりますが、時々信じられないくらいおかしいよ。
そんな時こそ駒鳥の大・活・躍！
RoBWの、僕がブルースの保護者ですが何か問題でも？ なティムが好きです。
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