たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×85-91
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 二月なので愛とかそういう話。わりに。



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85.開発の結果



実際、ハルはその気になればいくらでも真面目な顔が出来る。


「なあ、おまえが乳首感じるのって、俺がいじるから?」
「違う」
「違うの?」
「違う」
「じゃあ誰が、」





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この後滅茶苦茶殴られた。









86.重い。



人生、うっかりして魔法のランプに出くわすということも間々ある。
至極官能的な女性声のジンが語ることには、三千年間閉じ込められてきたランプから解放してくれたなら、
二人への礼として、“真実の愛”に目覚めさせてやるという。
バットマンとグリーンランタンは、ちらりと顔を見合わせ、口を揃えて答えた。

「いえ、そういうのは結構です。」



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この後走って逃げた。










87.じっちゃんの名にかけて



ウォッチタワー。
テレポーターを使って現れたバットマンは、なぜだか珍しくカウルを外しており。
偶々そこに居合わせたハルは、その表情と、両手で持った包みを見ると、
ブルースが口を開く前に、ずばりと言った。

「その中身はチョコレートだ。
 今日はバレンタインデーで、おまえはハロウィンのお返しをするためにJSAのじーさん達のとこへ、
 手土産にアルフレッドの菓子を持って行ったのはいいけれど、喜んだじーさん達があれもこれも持たせたおかげで、
 行きよりも帰りの土産の方が多くなったから、おまえは困ってる。
 でも結局、嬉しーんだろ? おまえホント、ジジ専だよな」

そんなハルを見遣るブルースの眼差しは、さらり。
別段否定するでもなく、

「流石、重度のファザコンは言うことが違う」





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おハルさんは、蝙蝠の一挙一動にリアクションしたい派なので、良く観察してるといいですね。








88.なんでもない日、おめでとう



ハロウィン
クリスマス
ニューイヤー
バレンタイン
聖パトリックの日

そして、ゴッサムなら王様の誕生日。
お城の門は開け放たれ、招かれた客も招かれてない客も、華やかな宴の夜。
議員に長官、女優と芸術家、資本家と労働者。
アラブの王族がペットのライオンと一緒に御登場。
奇術師が手をたたけばお庭に孔雀が舞い降りて、
くるくる踊るサーカスの少女。
楽団の演奏はきりもなく。

さて、宴の中心は“プリンス・チャーミング”。
艶やかな花々に取り囲まれ、微笑する。
世界一美しいという女性“達”が、ここには大勢いたものだ。
王様は移り気で気まぐれ。 あの娘はダメだったから、今度はアタシの番。
みんな、ガラスの靴をぴったり履きこなしてみせたいけれど、
小さな足はずっこけて、大きな足はナイフでかかとを切り落とした。
嗚呼、フロアは老若男女の血で染まっている……。

王様はにこにこして、知らんぷり。
そのうち、ふいっと姿を消した。







ル○バだ。

ハルは自分のアパートの鍵を開けて中に入ったところで足を止めた。
そこに、円型のロボット掃除機がいる。
ハルを見つけると、すーっと足元に近づいてきて、何事か始める。
彼が歩くと、ついてくる。
どう避けても、ついてくる。
しかし、迷いル○バを拾った記憶はなく、第一ハルはずいぶん久しぶりに自分の部屋に帰ってきた。
ぐるりと見渡すと、あちらとそちらに、見覚えのない家具。
どうも誰かが住んでいる。
しかも快適に。
が、ハルは別段驚くことなく、寝室に足を向けた。
すると、床に脱ぎ散らかされた、高級そうなスーツ。
(高級そう、ではなく、本当に高級なのだとハルは知っているが。)
ベッドの上には、シーツを引っかぶった塊。

「おいコラ」

頭のあるだろう方のシーツをめくって覗き込めば、ブルースは、思ったよりも奥にもぐって丸くなっている。
じろっとハルを睨んだ眼は、機嫌の悪いブス猫のそれだ。
ゴシップニュースの常連である“ブルース・ウェイン”と同じ顔だが、きっと別人だろう。

「腹減った。 なんか食いに行こーぜ」

一度は開いた青い眼が、またすーっと閉じる。

「……今日はもう、一歩たりとも出たくない……」
「引き籠りか。 仕方ねーな、ピザでいいだろ? 財布よこせ」

ベッドの傍に投げてあるジャケットを、持ち主の了解を得ないまま探っていると、
シーツの塊が何かぼそりと喋った。

「ん? 何か言ったか?」
「……何でもない」

妙なこともあるもんだと、ハルは首を傾げた。




遥か彼方の銀河で長い時間を過ごしていた身としては、ピザとビールは懐かしい地球の味で、
どこにも行かず、シーツにくるまってストレスだとかほざく友人を隣に、『七人の侍』を見ている。

なんでもない日も、悪くはない。









89.



朝になるとさっさと服を着て、「行く」の一言も一瞥もなく出ていこうとするブルースを、
服を着る気のまるでないハルは呼び止め、財布を渡した。

「部屋代に何枚か抜いておいた」

ブルースはちらりとハルの顔を眺めただけで、自分の財布の中を改めてみることもない。
しかし、ハルがその顔を引き寄せてキスをしても、嫌がるということはない。
友人が出て行くと、裸のままのハルは欠伸して、ベッドに戻った。

その日が自分の誕生日だったと気づいたのは、日付が変わった頃だった。








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フルチンのフルって何だろう。 "full"なのかな「振る」なのかな。 とか考える時ありますよね。
ぼっさまとおハルさんは誕生日がお隣同士なんだってさ。

長期間帰ってこないおハルさんが部屋代を滞りなく払えていると思いにくいので、いっそ土地建物ごとぼっさま所有で良いではないか。
んでおハルさんはそれを知らず、お金があるときに払ってるといいよ。
おハルさんがいない時は、世界に点在するぼっさまの引き籠り部屋の一つになります。










90.死ぬには良い日だ



いつかは、そりゃあまァ、死ぬだろうと、
思っているわけだ。
昨日まで一緒にメシを食ってた奴が今日はもういないのが、日常。
そのうちに自分の番が来たら、はいサヨナラ。
そしたら次は、誰かの番。

(ある時ハルは、今日がその日かもしれないと思った。)
(那由多の星々が砕けて混沌に飲まれていく光景など毎日拝めるものでなく。)
(が、そんなことを考えてみながら、)
(ハルは笑った。)
(血反吐で汚れた口を歪め、げらげらと。)
(隣では、年間360日顰め面をしている蝙蝠が、じろりと至極冷めた目で。)

一人で死ぬわけじゃない、なんて
そんな贅沢、考えてみたこともございません。








91.てきめん。



前後の脈絡は分からないが、目が覚めるとそこに、ブルースの寝顔があった。
ハルは暫くその寝顔を眺め、それから、徐に首を持ち上げて状況把握に努める。
彼の部屋、ではない。
室内の様子はホテルかモーテル。
二人とも服を着ているし、見れば間にはバリーがすよすよ眠っていて、ブルースの向こうにはクラークが。
なんだ、とハルは思った。
いったい何が“なんだ”かは彼にも分からない。
思い出してみれば、昨日は妙な場所で偶然四人がばったり出会い、これはもう、飲むしかなく。
あっちの店からこっちの店へ、いつのまにか連絡はどこまで広まったのか、色んな連中が入れ替わり立ち替わり。
最後に残ったのが、最初の四人だった。
のだろう。
記憶は途中から消えている。

皆が良く眠っているので、ハルはひとりで考える。

普段、ブルースはほとんどアルコールを飲まない。
飲めないのでなく、真冬の山奥で修行する坊さん達と同じで、酒色が重大な戒律違反になるからだ。
(といって、その法を背負わせたのは神でもなんでもない、自分自身だが。)
けれど、昨日は人並みに、ビールと、ワインと、焼酎と……。
そしてこの、酔っ払いの雑魚寝。

改めてハルは友人達の有様を眺める。
どういう訳だか四人は一つのベッドの上に寝転んでいて、ハルは寝返りを打てば端から落ちてしまいそうだ。
そのハルとブルースの間に挟まっているバリーは、窮屈でもないらしく、ぴよぴよと心地良さそうに。
ハルとは反対側の端にいるクラークは、気付いてみれば、ブルースを横抱きにしている。
それがクラークであるから、なにかとても、自然なことに思えた。
抱っこされたブルースは、安らかな顔をしている。

クラークは、アルコールでは酔わない。
バリーは、体内のアルコール分解速度など自在に変えることが出来る。
ハルは、リングを使おうとすれば勝手にアルコールが抜ける。

だから、今日はたぶん。
ブルースが飲んでもいい日、かもしれない。
何かしてもいい日が存在すればの話だが。

熟睡している酔っ払い達の中、ひとりだけ正気でいるのも妙な気分で、ハルはもう一眠りしようと目を閉じる。
その右手に、温もり。

残された不可解な謎は。
目が覚めてから今に至るまで、ハルがブルースの手を握っているということだ。
何故そんなことになったのか彼はまるで覚えてないし、覚えてないから彼のせいではない。
いい加減その手を離したらどうかと右手に向かって念じてみるが、寝惚けてるのか聞きやしない。
けれど、ブルースは、良く眠っている。
添い寝にはリラクゼーション効果があり、不眠や統合失調症にも効果があるのだとかなんとか。
だから、まあいいや。

と、考えるうちにハルは他愛なく眠っていた。
添い寝の効果は明らかだ。






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この後みんなが起きる頃にはハルだけ熟睡。 勿論。






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