たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×78-84
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集かは怪しい。 主にGL、フラッシュ、蝙蝠がだべってる。+海の王者。 newな52でポッキー。
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78.11月の風景
「お、なんだ大富豪、ポッキーいっぱい持ってきて」
「やった! おやつだ!」
「会社で大量にもらった。 なんでも日本に古くからある風習で、
11日に自分の年の数だけポッキーを食べると無病息災で過ごせるのだとか」
「ふーん、異文化だね」
「いやそれ絶対違うと思います」
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豆。
79.正しいポッキーゲームとは
1.一人がポッキーをくわえます。
2.ポッキーの片方の端を、もう一人がくわえます。
3.二人で仲良く食べ進めてください。
「あ、ゴメン! キスしちゃった」
「このゲームの目的をやった後でなきゃ気付かないとか、なんだ、ある意味すごいな」
が、ブルースは、口唇の接触について特に何を問題にするでなく。
口中のチョコレート菓子を咀嚼しながら、フラッシュが話す間にも魔法のように消えていく
小袋のポッキーの行方について思いを馳せていた。
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どうなってるか分からない。いつも不思議。
80.じむり
「しかし、状況によってはこのゲームは成立しないように思う」
その垂直を観察でもするように棒状のチョコレート菓子を眺めていたブルースは、
一本を手に取ると、丁度テレポーターから現れた七つの海の王に声をかけた。
今日は元々ミーティングがある予定だ。
「アーサー、こちらに来てくれ」
「……何だ」
アーサーは胡散臭そうに三人を見遣った。
コイツ等またバカやってるな、と察しはしたが、こちらへ来いと言うのがブルースなので、聞いてやる。
ブルースはポッキーをくわえ、アーサーの正面に立つと、軽く一歩踏み出して、
ガツン。
「やはり、口まで届かないな」
「胸www胸でつっかえるとかおまえらどんだけ巨乳wwwwww」
「(大胸筋+アーマー)×2だね!」
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ジム・リーのはみんな立派な胸をお持ちで。
おっぱい順は、アーサー>ブルース>ハル>>バリーぐらいで。
あ、アーサーの方が背が高いと思ってたら今見たら蝙蝠の方がちょい高いらしい。まあいいや。
ちゅか、147kgとか書いてあるんだけど王様……。 海の生き物だから?
81.正しさの闘い
「……で、これは何なんだ」
「何ということもない、只の戯事だ」
首から下はダークナイト、そこに、遊蕩家として名高いどこぞの大富豪の首を乗せたブルースは、
訝しげなアーサーの問いに、ポッキーをくわえたまま唇も動かさず滑らかに答える。
「両端から食べ進めていき、早く唇を離した方が負けという至極単純な、」
主に恋人同士などで行われるパーティーゲームの一種。
と、ブルースは続けようとしたのだが、その前に、
「喰えばいいのか」
アーサーの両手が彼の顔をがしっと掴むと、覆いかぶさるように、
「あ。」
「あー」
「……せめてもうちょっとふざけるとか目ェ閉じるとかしろよ、おまえら」
「ポッキーゲームじゃなくて別の真剣勝負だね」
「あ、舌入れた」
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王様で遊んではいけない
82.法度
そもそも、ポッキーゲームがどういう趣旨なのかアーサーは知らず、興味もなく。
ただ、先に唇を離した方が負けというのなら、負けてやる気はない。
売られた喧嘩は買う。
やられたらやり返す。
が、ここに同じ信条の男がもう一人。
何であろうと一対一の零距離なら、どうあっても勝つ。
ブルースが両腕をアーサーの首に絡めて引き寄せたのは、そういうことだ。
その時点で、既にポッキーは消えていた。
さて、気性から言えば二人と同様平和的とは言い難いハルが、存外冷静に二人の闘いに終止符を打ってやったのは、
やはり第三者だったからだろう。
二人の間に出現した、"NO KISSING"のマークを持って爽やかに笑う緑のスーパーマンの効果は絶大で、
そのすぐ後に到着したクラークやダイアナを交えて滞りなくミーティングが進んだのは、
全くハルのおかげと言っていい。
残っていたポッキーはバリーが瞬く間に美味しくいただき、証拠は全て消えた。
四人が口を噤めば、何があったのか明るみに出ることは無いだろう。
完全犯罪、成立。
ミーティングの最中、ハルは今日もテキトーなことを思いつくまま喋っては一蹴されながら、
ちらりとアーサーの方を見ると、いつにも増してむっつり黙り込んでいるのは、嫁にばれたらシメられるからだろう。
しかし、ブルースの方は、カウルを元に戻していつもどおりの無表情。
だが、ハルは知っている。
アーサーから離された時、ブルースは自分の吐息だけが乱れているのに気付くと、拳を震わせた。
「この僕がたかがポッキーゲームで、こんな……ッ」
「おい何か混ざってんぞ人格破綻者」
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new52のJL蝙蝠は、変なとこで人と張り合うよねえと。
83.戦い終わって日が暮れて
テレポートが始まる直前さっと入り込んだハルは、一緒にバットケイブに転送された。
「大富豪、俺もチューがしたいです」
いい笑顔のハルをじろりと睨み、ブルースはコンピュータの方に向かう。
そこにある大きな椅子が、ダークナイトの定位置。
指先の僅かな動作で中空にホログラムの画面が現れる。
しかし、カウルを脱いだブルースは、それを見るでなく、疲れた様子で椅子に身体を沈めた。
「……私は今、ウォッチタワーで既婚者とディープキスをしたことについて、道徳的に自責の念に駆られている」
「全然そんな風に見えなかったんですけどー」
「しかもあんな無様な結果に」
「深海生物と素潜りで勝負するようなもんだろ。 つか、おまえ別に反省してないよな?」
「猛省している。 次の機会にはもっと、」
その頭をハルはすぱんっと叩いた。
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この後無事にチューしました。
84.
口に出すと怒られるので言う気はないが、ハルは地球にいること自体、休暇だと思っている。
生まれ故郷とはいえ、地球が宇宙で一番穏やかで暮らしやすい星、ということは全くない。
むしろ厄介な事件を不思議なぐらい引き寄せる重力中心の一つと言っていいかもしれない。
そして、笑えないほど詰まらない理由で人が死ぬ。
無窮の宇宙を見渡せば、もっと文明も社会も成熟した星は幾つもある。
ただ、ハルとは縁が無い。
ありのままを述べるなら、ハルが行くのは、命を使い捨てにさせる世界だ。
宇宙最強の武器を携えるグリーンランタンは、それが必要とされる極限状況に赴く。
(往々にして手遅れ。)
(使い捨てるのが自分の命一つで済むなら、全く安い。)
いつかハルは、その世界から帰ることなく、リングは次の誰かを探すだろう。
それでも多分、地球はセクター2814に存在している。
地球には地球を守ろうとする力が在る。
良い星だと思う。
ハルが少しぐらいバカやっても、そいつ等がいればどうにかなる。
そして、
ザーメンを腹の上に撒き散らして胸を上下させているブルースを、その頭から爪先までキスしてやりたいと思った時、
ハルは痛切に、何かを実感した。
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