たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×64-73
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 67から唐突にプロポーズ。 71はバリーさんだよ。



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64.デートだよ。



月曜日 クラークとランチ
火曜日 オリーとランチ
水曜日 JSA御一行様とランチ
木曜日 ウォッチタワーに籠もる
金曜日 A精神病院を慰問
土曜日 ザターナとディナー
日曜夜 ハルと芋焼酎


「で、これってデート?」
「いや、単なる焼酎」

大富豪は端然と、薩摩切子を傾ける。



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ランチは仕事。
ディナーはデート。
ハルはハル。










65.ダメ人間。


洗濯をするはずだったし、シンクが酷いことになってる。
冷蔵庫もほとんどからっぽ。(中を腐らせなくて済む。)
本日休日、久しぶりの。
だから、そいつらをどうにかする予定だった。
が。
何でか突然現れた大富豪がくつろぎはじめ、
その身体を抱っこして座り込んだあたりから、予定が狂った。
動けない。
動く気が、全く起きない。
厚々した書類の束(凶器か。)を読んでるブルースをからかってるうち、
何もしないまま日が暮れる。
嗚呼、休日。

「会長、メシおごれ」




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66.こっちもダメ人間。


すん、と鼻を鳴らした。
真っ黒蝙蝠は無味無臭だが、ブルースはいつも、いいにおいがする。
別の移り香が混じっている時もあるが、かじりつきたくなるような、いい匂いだ。
から、その首筋を、がぶっとやった。
途端、書類という名の凶器で頭を叩かれた。

「直に終わる。 少し待て」

しかし、なんだかわからない書類に夢中のブルースは、
お利口さんのわりに、おまえ香水なに使ってんの、という問いに、
まともに答えられた例がない。
ダメ人間だ。



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67.あなたが泉に落としたのは、


「パララックスにもならず、スペクターにもならず、
 酒は節度をもって楽しみ、酔った挙句喧嘩して留置所に入れられることもなく、
 借りた金はすぐに返し、軽はずみな行動は慎む。
 そんなハルなら、私が引き取ろう」
「おまえ大概俺のこと大好きだよな」
「それなりにな」




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一種のプロポーズ








68.関白宣言


「冗談はさておき」
「え、今の本音だろ?」
「この先、もしもパララックスのような事態がもう一度起これば、
 私はどのような手段を用いてでもお前の存在を宇宙から完全に消滅させる。
 しかし……、お前はきっといつまでも、酒を飲んでは失敗し、
 二日酔いで朝は動けず、バリーの財布に甘え、必ず余計なことに巻き込まれる。 私はそう理解している」
「いや、俺ほめられると頑張るタイプだから」
「それに、お前はこれからも、地球より宇宙で過ごす時間の方が長い」
「帰巣本能はあるから心配すんな」
「お前の人間性は承知しているし、いつか二度と地球へ戻らなくなったとしても、私は構わない」
「そこは構ってお願い」
「ただ、」
「ん?」
「ただ、私より先に死ぬな」

小揺るぎもしない眼差しで、そう言うのだ。

「……キスして良いですか」
「好きにしろ」



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プロポーズの続き







69.三十路過ぎれば結婚も良く話し合う


「じゃあ、俺も言わせてもらうけど」
「何だ」
「自分勝手に一週間ブッ通しで事件とか追うな。 ちゃんと寝ろ。 メシは食え。
 と、言おうと思ったんだけど、アルフレッドがおまえの世話を焼かないはずがないし、
 過保護な駒鳥達がいつも最低一人は張り付いてるだろうし……
 あれ? そうすると今更注文つけることが特に無い。 なんだおまえ、良妻か?」
「ふふん」


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妻でなく夫だよ








70.息子達と婚約者を会わせてみようと思います。


「さて、話し合いの場が欲しいという要望があったので、このような機会を設けてみた。
 場所はこちらで選定した。 無関係の人間が被害に遭わぬよう、周囲20㎞に人家は無い。
 これは訓練ではない。 従って、食料の心配はしなくて良い。 必要なものは揃えてある。
 銃火器の携帯は認めない。 ジェイソン、私に預けなさい。
 爆発物についての判断は各自に任せる。
 ただし、それを用いてハルにブービートラップを仕掛けてはいけない。
 繰り返す、これは訓練ではない。 一般市民が休暇に海や山へ行くのと同じであると心得てもらいたい。
 諸君の健闘を祈る。
 ……ダミアン、備前長船は返しなさい。 それはお父さんのだ」




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お父さんて言わせたかっただけ。
父は仕事なので休暇に参加しません。











71.結婚式とは。



「結婚しようよ」
「しない」
「どうして」
「面倒だ」

反論しようとする相手を、片手で軽く制し、

「この件についての議論は今週だけで既に五回もクラークと交わした。
 クラークだな? 私を説得するようお前を差し向けたのは!」
「うん、あ、お茶ありがとー、アルフレッド。
 だって、君達もうお互いの家族に会ったんだろ?
 法律上の手続きをまだしてないのは、ハルの家族を気遣っているから、ていうのは分かるけど、
 せめて式は挙げようよ」
「嫌だ」
「内輪で、ささやかに」
「却下」
「執り行うことに決定したから、その日は空けておいてね」
「待て、誰が、」
「大丈夫、本物の天使が祝福を授けてくれることになってるから。 彼も喜んでたよー」
「ザウリエルか。 お前達、いったいどの範囲までこの話を広げている」
「え? みんな」
「何がささやかにだ……」
「結婚指輪その他の準備は、二人に相談してもどうにもならないので、こちらで勝手に決めました」
「その前に一言話せ」
「当日逃げちゃダメだよ。 逃げたら僕とクラークが追っかけてくるからね」
「私はいったい何をされるんだ」
「結婚式だよ? あ、GLCからの意見を採用して、ハルの方は完全にサプライズなんだ。
 死ぬほど驚かせるって言ってた」
「何が起こるんだ、本当に」



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オチは特にない。
リランチ前のDCは既婚者がいっぱいだ。










72.改めまして。
(68、69の直後ぐらいだよ。)



にぱっと笑って、さっきの、とハルは言った。
その声に、隣で浅い眠りに入りかけたブルースの、目蓋が薄っすら持ち上がる。

「さっきのアレ、どこをどー考えても、プロポーズだろ」
「……それは、お前が宇宙で一番恐れているという、あのプロポーズのことか」
「宇宙怪獣の名前か? 別に怖くねーよ、いい思い出がないだけで。 教えてやろうか?」
「必要ない。 大方の察しはつく」

ブルースは目蓋を閉じ、シーツを抱え直す。

「先程言おうとしたのは、お前のような生活破綻者の一人ぐらい、私が一生面倒を看てやるという……」

ん? と眉根を寄せ、ブルースは目を明けた。

「プロポーズだな」
「だろー?」

眉間の険しくなるブルースを眺めてハルは笑う。
あまり知られてない事実だが、完全装備のバットマンより、素顔のブルースの方が余程恐ろしげな形相をする。
が、その頭蓋骨の内側はどうかというと、それほどでもない、
かもしれない。
唇を重ねれば、舌先はゆるく触れ合う。
吐息の感じる距離でハルは言った。

「結婚しよう」
「……正気か」
「いや」
「だろうな」

後になってハルが考えてみても、その時の心持ちというのは、気が向いた、としか言いようがなく、
酒は一滴も飲んでなかった。
ブルースは、難しい顔のまま身体を起こし、胸の前で腕を組む。
そして、じろりとハルを睨み、

「私は、四人の息子達の父親であり、さらにウェインとケイン双方の家名と会社、その社会的責任を負う。
 付け加えるなら、アーカム精神病院の患者達が“施設内で”治療を受けられるよう、尽力は欠かせず、
 ダミアンの母親とは一時的に休戦しているが、ある日お前が買うホットドッグには、
 致死性の毒物が混入されているかもしれない。
 その他、お前の辟易するしがらみばかり私には付いて回るが、お前はそれを承知しているのか」

ハルは、ブルースの前で同じように腕組みし、
少し考えて、言った。

「俺には、空軍に入る時に絶縁されたっきり会ってない母親がいるけど、それでもいいか」



*


三時間後、ジェシカ・ジョーダンの病室を突如訪れたゴッサムの大富豪は、
息子さんを僕にくださいと堂々宣言し、日々次男のことを心配していた彼女を感激させた。
18歳で家を飛び出した息子は、何故だか喧嘩したような痕が顔にあったのだが、
母はただ、息子が五体満足で生きており、結婚相手まで連れてきたことを、神と亡き夫に感謝した。
涙を流す母の姿を見て、息子は、自分がいかに母に心労をかけたのかを知り、
反省すると同時に、胸の底が熱くなったが。
しかし、母よ。
あなたの息子のハンサムな顔をボコボコに殴ったのは、あなたが今感涙を垂れる、その大富豪だ。
と、思ったが、口にしなかった。
母は全て承知しているような気がした。

ジェシカの三人の息子の中で、長男のジャックは、母との約束を破りパイロットになった弟とは、
顔を見せたら殴り飛ばすと言ってやはり絶縁していたが、母からの連絡で病院に飛んでいくと、
そこで、後光の差すような美丈夫(かつ、世界屈指の資産家)と出会い、顎が床に落ちた。
が、父の没後、一族を守ってきた長兄として、“ブルース・ウェイン”は難色を示したい相手だったが、
何年かぶりに見る弟の顔は、既に誰かが一発二発殴った後のようで、
膨れっ面してちょっと下を向き、これまでのことを謝るのが、
子供の頃とまったく変わっておらず、
許してやった。


*


「ん、なにそれ、ジャックの名刺? 俺持ってない」
「お前は要らないだろ」
「俺、おまえのも持ってない」
「それも必要ないだろ」
「あ、ジャックから何か来てる、……そのままジムの家に行けって。
 もう準備して待ってるからさっさと来い。 こっちはジムな」
「お前達兄弟は、」
「うん?」
「仲が良いな」
「そーかァ? ジャックと話したのなんてホント久し振り過ぎるぞ?
 まぁ、殺し合いはしないけど」
「何よりだろ?」
「そりゃァな」
「……お前の家族は、」

インターチェンジに差しかかったところで、ハンドルを握るブルースが言葉を切った。
サングラスの眼差しは前に向けられている。
ハルは黙ってその顔を眺め、それから、前を見る。
ブルースは、唇の端でほんの少し、弧を描く。

「お前と比較して、極めて真っ当だ」
「うっせェ」



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一人っ子だったから、兄弟ってうらやましい。









73.聞いてみた。



もうじき三歳になるジェーンは、いい匂いのする大富豪の膝の上、にこにこしながら聞いてみた。

「ブルースとハルおじさんは、どっちが花嫁になるの?」
「婚約指輪を贈るのは僕だから、ハルおじさんだな」
「やめろ説得力がある」



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姪。







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