たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×50-55
どんなおはなし :49番から引き続いて、猫又とパイロットのお話ですよ。 だらだら続く。
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50.ハルと猫 =クリスマス中止のお知らせ=
お前にくれてやるクリスマス休暇はない。
と、ハルが宣告されたのは23日。
冗談きつッwwww と返そうとして、上司の目が笑ってない。
ハルはエドワーズ空軍基地所属のパイロットであり、頭抜けた技量は米軍全体でも屈指だが。
数々の規律違反に、謎のMIA。
懲戒免職にならないのが不思議と人は言う。
折しもカリフォルニアを大寒波が襲っていた。
澄みきった晴天で知られるモハーヴェ砂漠すら、一面の雪。
コーストシティの子供達は白銀のクリスマスにはしゃぎ回っているそうだが、
大人達は雪道渋滞立ち往生。
エドワーズ空軍基地の滑走路も、除雪しては地吹雪に見舞われを繰り返し、仕事にならないので、
あれもこれもそれも開発が遅れてるけど異常気象だから仕方ないよね!ww
の旨を関係各方面に通達、基地全体がクリスマス休暇に入った。
が。
もちろん、施設を全くの無人にすることはない。
機密扱いの新型エンジンや、電源を落とすわけにはいかない実験等を抱えているのだ。
クリスマス休暇の間、基地に残る“不運”な人員は、どうしても必要であり、
大抵は、クジ引きやカードで決めておくものだが。
そもそも、クリスマス休暇は、家族と過ごすために存在する。
家族のようなものとは無縁のお前に、休暇をくれてやる意味がない。
という理由を、今年一年の不始末を挙げ連ねた上で大真面目に付け加える上司を、
軽く殴り倒すほどハルは実際、クリスマスに拘りはなく、
上司の言い分は、一面の真実を捉えているようにも思う。
それに、理解させようという気もないので言わないが、
彼にとっては、地球にいること自体、休暇のようなものだった。
そして、461FLTSの、居残り一名。
人影のほとんどなくなったエドワーズ空軍基地で。
彼曰く地味な雑務をこなしつつ、銀翼達の静かに眠るハンガーをぷらぷら散歩。
日が落ちれば、将校向けのバーから上物のウィスキーを拝借し、娯楽室でビリヤード。
テレビは昔の映画。
外は雪。
晴れたら晴れたで、ぎんと冷え。
眠くなったら猫と寝る。
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当たり前な話、ここの管理人はエドワーズ空軍基地がどういうところか
分かってて書いてるわけじゃないので、別アースということで一つお願いする。
ので、461も名前だけ借りてるよ。
51.ハルと猫 =ネコ係の人はここですか?=
12月23日、エドワーズ空軍基地。
何がどうしてそうなったのか。
クリスマス休暇中、例のネコを世話をする係は、ハルに決められた。
無論、彼の承諾を得たわけはなく、誰がそんなことを決めたのかもハルは知らない。
だが、その日の昼には、基地にいる猫好き全員の知るところとなっていた。
すると、来るわ来るわ。
休暇中、自分の代わりにあの子にエサをあげてほしいと、ハルのもとへ。
善男善女の猫好き達は、臨時ネコ係のめんどくさそうな表情を見ると、
ご丁寧にも猫の世話についてメモを書き残し、彼に託して基地を去った。
『一日一枚、インスタグラムに写真を載せる。』
そう書かれた一枚をくしゃっと潰し、狙い定めてハルは投げる。
指先から放たれた紙屑は、凡そ理想的な軌道でゴミ箱に収まり、
中で待っていた仲間に当たってかさりと鳴った。
その膝の上。
スフィンクスのように佇む、真っ白猫。
彼方を見やる眼差しの、きりりと澄んだ藍色の野性。
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たぶん色んな人からちょびっとずつエサもらってた。
という、とっても野良猫生活。
あ、スフィンクスは猫の品種の方でなく。 念のため。
52.ハルと猫 =ネコの『ね』=
人間を、寝床を温める装置、と思っている。
53.ハルと猫 =猫充乙=
『兄貴、クリスマスなのに仕事お疲れm9(^Д^)プギャー
今年はおじさん来てくれないの? とうちの可愛い子供達が寂しがってます。
年が明けてからでいいので遊びに来てください。プレゼントを持って。』
という、弟からの心温まるメールに、
ハルは、隣のカウチにいる猫が、ドン・コルレオーネを見ている写真を送った。
猫の品種など知らないが、海の上の綿雲のように白く、ふわっふわの柔らかな毛並み。
不思議そうに小首を傾げる青い眼は、くりり。
外面だけは大変愛くるしいと、ハルも認めざるを得ない。
『兄ちゃんはこれから寂しく、こいつと一緒に寝ます。
基地の備品なのでそちらには持っていけません。』
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スーパーマン(1978)→マーロン・ブランド→ゴッドファーザー(1972)
ロングハロウィン→ゴッドファーザー でもいい
54.ハルと猫 =猛獣注意=
カリフォルニアの大寒波は、やはり異常気象のようで、なかなか去らない。
今日も朝からちらちら、白いものが舞う。
ハルは、雪の上に小さな足跡が続いているのを見つけた。
目線で辿ってみると、いる。
一面の雪野に同化した、肉食性小動物。
「猫」
呼ばれてやって来る愛想は、ない。
二股ある純白の尻尾を、大きく宙に翻し。
肩越しに鋭く振り返る、藍色の眼。
そして、白い獣はハルも呆気にとられる勢いで駆け出した。
灰色の空の下、その姿はすぐに見えなくなった。
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懐いてはいない。
55.ハルと猫 =ニコルソンが見てる=
人間と猫は、違う種の動物である。
両者の間には、微妙な攻防が起こりうる。
ハルが1980年のキューブリック映画を見ていた時だった。
ふと視線を感じると、猫が傍に来ている。
その藍色の瞳で、じぃっと見上げてくるので、頭を撫でてやろうと手を伸ばせば、
猫はするりと逃げ、白いしっぽをふわふわさせてどこかに行ってしまう。
ハルは、何事もなくテレビの画面に目を戻す。
何度か見ている映画だが、記憶に残る鮮烈な場面が多い。
しかし暫く経った後、視界の隅を小さく白いものが動く、と思うと、
猫が隣のカウチに座っている。
そして、じっと彼を見上げてくるのだが、腕に抱き上げようとした途端、逃げられる。
そんな攻防を三度ほど繰り返し、遂に猫はハルの膝に乗った。
だけでなく、胸のあたりに前脚をかけ、下から彼の表情を覗き込む。
星の煌く、青く澄んだ二つの瞳。
小さな愛らしいピンクの鼻。
猫は物を言わない。
ただ真っ白く、ふわふわで、
宇宙のあらゆる“かわいい”が結晶したようだ。
それでもハルは耐えた。
約十五秒、しかし彼は、五分は堪えたつもりなのだ。
テレビの中は、猛吹雪に閉じ込められた山上のホテル。
父親がそろそろ斧を持ち出す頃だが、
けれどもう、仕方ない。
ハルはテレビのスイッチを切り、猫を抱き上げる。
そして、隣にある仮眠室に向かった。
腕の中、猫は素知らぬ顔。
尻尾をゆっくり揺らし、ハルの腕にくるんとした。
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いつ寝るかは猫時間。
バットマン(1989)→ジャック・ニコルソン→シャイニング(1980)
まだまだ続くよ猫又とパイロット。
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