たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×33-35
だいたいどのあたり :昔々のジャスティスリーグ。
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
ちゅうい :腐女子向けだよ。




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33.エイプリルフール

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久し振りにぽかりと空いたような土曜日。
(おそらく土曜日だと思うが、はっきりとは知らない。)
朝から雨が降っていた。 冷蔵庫にピザの残りがあった。
昼になると少し明るくなった。 コーヒーを淹れた。 プレッツェルをくわえた。
だらだらの、ぐずぐず。
稀にはそんな午後。
ひょいとベッドを見ると、黒髪の大富豪が。
ぐちゃぐちゃのシーツの上、端然と腰掛けている。

何ヶ月振りかぽかんと空いた土曜日。
(そうでなかったとしても、別にどうもしない。)
ベッドで恋人を抱っこしながら昔の映画を眺めている。
のなら、充実した休日の過ごし方だろうが。
生憎、ハルが抱っこしている良い匂いの物体は、恋人でなくブルースで。
ハルのことを、手足のあるクッションぐらいにしか思ってない。
上物のネクタイとジャケットは、ぽいっと脱いでほったらかし。
ハルに背中を凭れて、ラップトップの小さな画面に視線を落としている。
テキストとグラフ。 何だか分からないような数式。
ハルは、テレビの白黒映画を眺めている。

「ブルース」
「ん?」

大西洋に臨むアフリカの町で、男は酒場を経営している
戦災を逃れた人々が合衆国へ亡命するために辿り着く町で

「ハンフリー・ボガード」
「ん」

ブルースは顔を上げずに頷く。
その首の後ろに軽く唇を寄せると、くすぐったそうに。

「もう少しすると、イングリッド・バーグマン」
「うん」

As Time Goes By
ニヒルを装うダンディズム
孤独と反骨の男の愛は叶わない

「おまえそれ、仕事?」
「ああ」
「ふーん。 じゃあ手伝ってやるよ」

ぱたんと閉じてしまえば本日の業務は終了しました。
ラップトップをベッドの脇に置くと、ハルはブルースを抱え直す。
ブルースは、大人しくテレビの方を眺めていたが、
やがて、瑠璃玉のような瞳がハルを振り返り、

「三つ数えろ?」
「おまえホント、何も知らないな」













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正解は『カサブランカ』
まあ特に意味はない。
『三つ数えろ』は未見ですが、たしかハンフリー・ボガード。
でも何となくこっちのがぼっちゃま知ってそう。 アルフレッド経由で。
ぼっちゃまは知識を有していても、映画自体は見ないと思う。

おハルさん、時間が空いたら掃除洗濯買い物、という感があまりない。
テレビで映画をやってるとなんとなく見ちゃう派。(好きなのに限る)
でも新作を映画館に見に行ったりはしない。
そもそも地球にいないことも多いので。
GL業務で宇宙に行ってる時は、リングがポータブルプレイヤー。
便利だぬ。















34.チャリティー

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チャリティー?
ふーん。 で、カレンダー。
リーグ全員の。 そりゃすごい。
あー。
やっぱりな、そりゃそーだろー。
あいつプレスだろうが何だろうがサービスしてやる気ゼロだし。
というかあいつ、映らないんだって?
ちゃんと撮ったはずなのに映ってないから『やっぱり吸血鬼だ』て言われてんぞ。
ん?
誰からって、えーと、赤毛だった かな。
それはいいんだよ。
要は、使えそうな写真が無いからどーにかしなきゃなんだろ?
あ、ちょうど来たな。

よォ、セレブでビッチなダークナイト様。
恵まれない境遇の子供達のために、寄せて上げてオッパイ窓お願いします。

俺?
俺は無理。
貧乳だもん。










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セクハラとかそんなんでなく、きちんとした発案のつもりで話している。
Batboobと言われてたりするのでいっそwindow。
パワガのオッパイ窓恋しやリランチDCnU。
しかし、蝙蝠のオッパイ窓解放により天は燃え地は裂け世界は灰燼に帰すのである。(JL#5より)
嘘である。





















35.壜詰

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衛星軌道から時速三万㎞で地表に叩き付けられる。
岩だらけの惑星にまた一つ崩落するクレーター。
その抉れた底から、ざらりと掠れた砂の空を。
見た。

跳ね起きたつもりが、血反吐。
手足が千切れてないだけマシ。
まあ、千切れたら繋ぐだけ。
まだ動ける。
ひしゃげた肋骨に内側から釘を刺す。 臓腑は潰れてもいない、大部分は。
まだ動く。

岩壁に削られた空が暗く翳る。
砂嵐が来る。
覆い尽くすように闇が来る。

声を、聞いた。
ぐらり傾きながら後ろを振り返る。 それだけの動きで身体が軋む。
せいぜい、もったいぶって見えればいい。

「おまえさっき、死亡宣告されてたぞ」

空を閉ざされた薄闇の底。
闇よりも暗く深い影が答える。

「都合が良い」

光ではない白銀の眼が二つ。
冷たく射貫くように。

そいつの顔を見た瞬間、何故か急に、腹が減った。










この惑星に水が存在した頃の名残で、
地下には巨大な洞穴が蜘蛛の巣のように広がっていると、
周囲100mごと塵にされたはずの男は講釈を垂れながら。
人の傷口を、指でも突っ込みたそうに、眺めている。

「意識を失えば、死ぬな」
「その前に片付ける」

まだリングがあるのなら。
搾り尽くすための血が一滴でも残っているのなら。
事はそれだけで足りる。

「だろ?」

口許しか見せない仮面はニコリともしない。 機嫌が悪いかも分からない。
それでも、始末の付け方は全て、この仏頂面が知っている。

「あー、ハラヘッタ」

食いそびれた昼メシは、
チキンとチーズのホットサンド。 山になったフライドポテト。
思い出したら、胸の奥が きゅーっと

「……その手は何だ」
「なんか食わせろ」

こいつのベルトは何でも出て来る魔法のポケット。
ハロウィンじゃなくてもキャンディーバーの一つや二つ、きっと

ない。

真っ黒のケープの中に手を突っ込んで
腰の後ろまでなぞって撫でてみても。
ない。
ベルトごと、ない。

「どうした、痛むのか。 間抜けな顔が更に間抜けになっている」

どこで何の犠牲にしたのか知らないが
相変わらず面白くもなさそうに、人の頭を肘で殴打。
怪我人に対する配慮ってものがまるでない。
くらり、と
意識が揺れる。
ヒビ割れから流れ出るだけ流れ出て、タンクが空になっている。

「おまえ、もうチョット考えて行動しろ……」
「ほう、貴様は考えて行動しているのか」

こんな砂漠のド真ん中。
岩しか転がってないような穴の底。
食えそうなものなんて一つしかない。

あー、と口をあけて
かぶりつく。
人を小馬鹿にしたような、その唇に。

真っ黒黒の蝙蝠が、何故口許だけは隠してないかというと、
主に他人をせせら笑うためなのだが。
唇を押し付けて、舌で中を引っ掻き回しやすいのは。
評価しても良い。

歪曲した空は真夜のようで
黒い嵐が頭の上を覆っていく。
轟轟と風が吠え、いい加減に、と吐き捨てる悪態を掻き消し、
ただ潤んで、熱に溶ける、鉄錆と砂の苦さ。
唇と、舌と、その区別がなくなるほど
触れて、探って、絡み合って
手足のない生き物が二匹
お互いを貪り合うように。




暗闇にぴたりと封をして
こぼれないように閉じ込めた、
なにか酷く飢えて混ざり合う、切ないような貪婪の。
空が再び明けるまでの、僅かの間。
















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隙あらばイチャイチャしてるように見えて
ただのセフレでございます。







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