たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×30-32
だいたいどのあたり :昔々でないジャスティスリーグ。 とか全くのエルスワールド。
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
ちゅうい :腐女子向けだよ。




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30.おねだり
[23,24,25からの流れで、昔々でないジャスティスリーグ。ロイがレッドアロー]

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「シャチョーさんvvv いつも御指名アリガトー!(//∇//) キャ
 ねー、今日はバレンタインだよー O(≧∇≦)O
 あたし新しい車ほしいなァー (゚∇^*) 」


営業メール、ではなく。
ウォッチタワーのモニタールームで。
レッドアロー(一児の父親)が、バットマン(四男一女の父親)の膝に乗っかって甘えた台詞である。
そこに、交代時刻を少し過ぎて現れたグリーンランタン(恋人はF-22)は、
不思議そうに首を傾げ、

「これ何の店。 俺も混ぜて」
「いいけど、順番待ちだよ」
「予約制?!」








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世界の平和を見守るウォッチタワー2月14日。
バレンタインて何の日だっけ。

膝に乗っかってくる野郎を、邪魔だと思いつつ右から左へ聞き流すだけなんだけど。
蝙蝠は緑矢一族が大好きだから、最終的にはお願い聞いてくれるよ。
クリスマスのサンタさんのお膝は子供達のためにあるんだから、
蝙蝠のお膝は大人のためにあっても良いじゃない。

ちなみに。
この世界では、CRY FOR JUSTICEなど発生せず、
ライアンが二番目に好きな四駆はバットモービルです。
一番は、パパとお出かけする車は何でもだぜ。

F-22は適当です。









31.おねだり 2
[30に同じく、昔々でないジャスティスリーグ]

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[注:蝙蝠が白濁液にまみれるハプニングなんてざらにあってイイと思うんだよね!(略 ]
   の流れで、おハルさんの番です。






スムージー。
主成分は、バナナ・りんご・桃・ヨーグルト。
が、大人しく口に入らなかった。


「……なんだよ、その『ガキみたいなことしてバカじゃねぇの』って思ってる冷たい目は!
 さっさと何か拭くもんよこせ」


甘く白い飛沫は、頬をとろりと伝い落ちて、
唇まで零れるそれを、真っ白いグローブの親指が
ぞんざいにぬぐって、口に含む。
ウォッチタワー 実験室A。
世界に数台しかない貴重な精密機器も並ぶ中、
それを失念したのか、盛大に液体をぶちまけたグリーンランタンを。
ダークナイトは、常と変わらぬ冷淡な視線で。
すぐ傍にある、備品のペーパータオルを取ってやることもなく。
黒いグローブの指を、自分の顎に。

「ハル」
「あぁ?」
「その姿、妙にそそる」
「お、おまえッ 一体いつから俺をそんな目で!」
「F*** me, PLEASE. と言えば、このペーパータオルをやらなくもない」
「ダメっ、ロイが見てる……」

ずっと横にいたレッドアローは、プリンをぱくりと一口。

「あ。 おかまいなくドーゾドーゾ、先輩方」





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おやつの時間でした。
ウォッチタワーのモニタールームは仕事の空間だけど、
実験室はバットケイブの一部みたいな扱いだといいよ。 つまり遊び場。

リバース後の蝙蝠は、隙あらばおハルさんに陰湿ないじめをします。
プリンはロイがその場で作りました。
冷蔵庫もレンジもあるよ。

















32.箱庭遊び
[*閲覧注意:エルスワールド、♀×♀、デレデレ。 めんどいから女子でも名前は同じだよ]

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2月14日と言えば。
人それぞれ、様々な愛を形にするもので。
花束や、チョコレートや、ダイヤの指輪。
ゴッサムシティの街中も、可愛らしい赤やピンクのハート、ハート。
道を行くのは恋人達。

と、その夜空に、美しい花火が咲いた。
誰もが足を止め、仰ぎ見る歓声の、空は。
金の、銀の、無限の流星と、まるでオーロラ。
エメラルドグリーンの、優艶な光の爆発。

信号待ちのタクシーの親父は、訳知り顔で。
後ろに乗せた若い恋人達に語る。

お客さん、いい日にゴッサムに来たね。
この街じゃ、毎年バレンタインには、こうやって盛大に花火が上がるんだ。
すごいもんだろ。
こいつは、ウェインのお嬢さんが16で婚約した年からの、お祝いでね。
……あんた、俺が言ってるのは、あのウェインエンタープライズだぜ?
そりゃあ、バレンタインのプレゼントだって、うちのババアのとは訳が違うさ。
けれどなぁ、去年は寂しいもんだった。
……なんだ、知ってるのかい?
そう、可哀想な話だよ。

信号が青になり、タクシはー動き出す。
可哀想、と口にした親父は、
事実、そこには同情も含まれていただろうが。
人は、不運の物語に、特別な魅力を感じるものだ。

ゴッサムシティを創り上げた一族の、莫大な資産の全てを受け継いだ令嬢は、
悪魔か死神にでも魅入られているのか。
彼女と婚約した人間は、皆死んだ。

「今じゃ滅多に表に出てこないし、修道院に入るって噂まである。
 綺麗なお嬢さんが、まだ若いってのに……」

まるで、呪われてるみたいだろ?






しかし、そんな地上世界の些末な会話など、ハル(♀)にはどーでもいいのである。

ウェインタワーの程近く。
ゴシック建築の鐘楼の屋根の上。
ガーゴイルに跨って、足をぷらぷらさせ、
チョコレートたっぷりのドーナツを頬張りながら。
天空で爆発させる、アブサングリーン。
散華する流星は、綺羅。
タクシーの親父は、まるで見当違いをしていた。
このグリーンランタンは、ゴッサムシティの慣習など知らないし、
足の遥か下で、今日どれだけ多くの恋人達が溢れているかなど、
全く、爪の先ほども、興味がない。

第8空軍に所属する21歳のエースパイロットは、
おまえにチ××が生えてないのは絶対におかしいと良く言われるが、
(このセクシーボディで何故そんなことを言われる必要があるのか、と自身では思う。)
宇宙最強の武器の所有者として選ばれたとしても、付いてないものは付いてなく。
夢はコトブキ除隊の、乙女である。

そしてこれは、単なるSOSだ。

目をひけば、それで良い。
欲しいのは、何千何万のカップルがキャーキャー騒ぐ歓声ではなく、
この街のどこかにいるはずの、たった一人。
まず、ケータイを携帯してない。
屋敷を訪れても、三日前に "外出"したまま帰ってこないと言われた。
執事に伝言を頼んだが、まだ何も。

だから、ゴッサムの全天。
散りばめる光の、四方乱舞する光輝の。
いつまでも、ただそれだけの。
ハルは少し、膨れっ面で。
ミルクティーのストローをかじる。
視線は下へ落ちる。

その拍子に、気づいた。

斜向かいのビル。
貯水タンクの傍に、先程は無かった影が。
上空で眩く散った光に一瞬、見間違えなどではなく。
そして、夜の奥に消えた。

ハルの反応は思考よりも速く。
そして精神は、右手のリングと直接繋がっている。
手から離れた甘すぎるミルクティーが、カップの底で鐘楼の屋根を叩くよりも先に。
亜音速のハルは、黒い影の佇んでいた場所の真上に出現している。
しかし、何の姿もない。
素早く周囲を見回す視界の端、ちらりと。
風に誘われた、黒衣の裾が。
別のビルの裏側へ。

「ふぅん?」

ハルは虚空に静止して、笑った。
鬼ごっこは好きだ。

摩天楼に発生する乱気流の中、
ハルは、水脈を知る魚のように、影を追う。
天空では閃光弾が炸裂し、真昼同様に辺りを照らす。
けれども、すぐに覚った。
ゴッサムの街並みは、死角が多い。
追うごとに陰は複雑に交叉し、そこには深い闇が滞っている。
指を伸ばせば、その先からするりと逃げる、目隠し鬼。
声はなく、微かに痕を残し、誘う。


通りで花火を見上げていた人々は、
最後の流星が砕け散り、その翠色の滴も消え去ると、
また来年のバレンタインを期待して、それぞれ動き出した。
その上空。
ゴッサムの夜闇が、本来の暗さを取り戻す頃、
ハルが降り立ったのは、都心のビル街が形成する林冠の、一つの密やかな死角。
見上げるのは、ただ青い三日月。
そしてハルは振り返った。

影は、夜闇そのものを身に纏い
相貌は漆黒の仮面。
男か女か
人なのかも判然とせず
ハルは笑う。

「何それ。 どーしたの」
「家で見つけた。 昔の舞台衣装か何かだと思うが、」

サリエリの死神は、ハルの目の前で、
その仮面とフードを、事も無げに取り去った。

「存外好評のようだ」

そう言って、澄んだ藍色の双眸は、少女のように微笑む。
これで、ハルより余程、危ない遊びがお好きなのだから、
困ったお嬢様だ。




人は彼女を、悲劇のヒロインと言う。
生れ落ちる前から、望み得る全てのものを与えられながら、
幼い頃に両親を殺害され、25歳になるまでに婚約者を三人失った、"ウェインのお嬢さん"
(とある低俗ゴシップ誌によれば、彼女は快楽殺人者で、)
(婚約者は全員、その犠牲になったという。)

しかし、お嬢様という生き物は、世間が思う以上に、謎と神秘に満ちているらしい。

そして "影"は、夜闇の底、餌食を貪り出した。
愚者へと振り下ろされる断罪の、その苛烈な暴虐は。
いっそ清廉な結晶であるかのように、それ以外の一切を語らず。
今晩も、首尾は上々。


これが、ハルの可愛い友人。
去年の夏、カリフォルニアのバーでナンパして以来、
事あるごとにゴッサムに通うのは、ここがブルースの街だからだ。




古めかしい黒衣は、彼女の体型をすっぽり覆い隠すのに丁度良く。
ハルが面白がって、あちこち触ったり撫でたりするので、
くすぐったそうに小さな声を上げ、微笑む。
その細腕で、犯罪者の魂に楔のような恐怖を打ち込む、白百合のたおやかさ。
ウェインさんちの大事な大事な箱入り娘は、
その育ちのせいか、少々おっとりしているところがあり。
突然ハルに ぎゅうっとハグされても、
水晶のような眼差しは。
空に浮かぶ月の、鋭利な青を愛でている。

「ハル、おまえの携帯電話が繋がらない」
「壊した」
「またか」
「だって腹が立ったから」
「また、誰か殴ったんだな」

ハルは、アメリカ空軍が誇る精鋭達の中でも、群を抜くウルトラエースだが、
素行不良に軍規違反、上官を殴る、同僚を殴る、同僚全員食い散らかす、等々。
勲章にも昇進にも程遠い、一番の問題パイロットで。
ブルースの、可愛い友人。
抱擁は、二人。
同じほど強く、しなやかに。

「あたし、間違ったことは何にも言ってない」
「分かってる」
「でも、今度こそクビになるかもしれない」
「遅かったぐらいだ」
「今夜泊めて」
「好きなだけいれば良い」
「アルフレッドのごはんが食べたい、デザート付きで」
「連絡しておく」
「今日いっしょにお風呂入ろ?」
「別に構わない」

手と手と
胸と胸と
重ね合わせ、隙間のないよう。
私と私は境界を失う。
秘めやかな、甘やかな、その倒錯。
女の身体は、抱き合うように作られている。

「あたし、ブルースのお嫁さんになりたい」
「それは無理だ。 修道女の誓いをしたから、結婚は出来ない」
「シスターなのに下着は黒のレース!」
「いけないか」
「ううん、好き。」















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という、女子×女子。
男子より女子の方が、好き好き大好きだと思うのですよ。
その他色々、生き方がやっぱり違うんじゃないかと。

お嬢様の婚約者を次々殺したのは、幼馴染の外科医(♀)で、
赤毛の幼馴染をアーカムに叩き込んだあたりから、お嬢様の何かが目覚めたようです。
今まで見ない振りしてきた、彼女の街に蔓延る悪を、
情け容赦なく排除するという、女王様気質。
タイトルの箱庭って、そういうことです。

でもお嬢様は、それまで普通に箱入りだったので、近接戦闘は無理だといいよ。
だから絶対に、相手に姿は見せない。
その代わり、ブービートラップ使いまくり。 ハメまくり。
犠牲者にとって見慣れたはずの空間が、知らぬ間に惨劇の舞台に!
無駄に複雑な機構の残虐ピタゴラスイッチ!
ドキッ お部屋いっぱいのトラバサミ!
とか。
良い子の18歳以上は映画『ワナオトコ』を御覧ください。
犯罪者を殺すことはないけど、箱詰めにしてゴッサム市警にプレゼントするよ。
ぼっさまと違って、手加減も出来ないので、
ゴードン本部長からは困ったちゃん扱いです。 というか立派なヴィランです。

おハル(♀)は、あんまり変わりませんでちた。
でも、パララックスにはならん気もする。
ああいう発想って、女と違うと思う。
ちなみに、お嬢様との関係は何度も↑書いてるけど、友人。
しかし、友人を嫁にしたい、あるいは嫁になりたいという日が、女子にはある。
あ、修道女の誓いとかテキトーですよ。






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