たいとる : 『昔々ある所に、性格の複雑に屈折したダークナイトと、やることがちょっと大博打なグリーンランタンがおりまして』
ながさ :短い×17-19
だいたいどのあたり :昔々のジャスティスリーグ。
どんなおはなし :GL/蝙蝠小ネタ集。 セフレがいいとこな二人です。
ちゅうい :腐女子向けだよ。 19は朝からいちゃいちゃしてるので良い子の15歳以下は見ちゃいやん。




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17.目撃者の証言によれば

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「でも、似てるけどなあ……」
「こんな何にもない町のダイナーにブルース・ウェインがいたら、逆にスゴイ」
「ハイ、こっちのページの記事。 セレブは今頃アドリア海、と思わせてマカオだって」
「結局この人誰と付き合ってるの? あたし何度も言ってるけど、あの女優嫌いだから」
「あ。 向かいの席に人来た」
「そのまま座ったから、知り合いなんでしょ」
「……」
「……」
「わー」
「わー」
「すっごい、機嫌悪そう」
「あれはヒく。 何話してるか分からないけど」
「引く。 ドン引きです。 いくらブルース・ウェインに似てても目付きが鋭すぎます」
「予期せぬ展開になってまいりました、突撃隣のゲイカップルウォッチング」
「カップルですか」
「カップルです」
「なんでもう一人の方はこっちに背中向けてんの!」
「見たい。 今どんな顔してるか見てみたいッ」
「じゃあ、向こうのボードに貼ってあるポスターを見に行く、という設定で!」
「さりげなく、落ち着いて」
「挙動不審にならないよーに」

「……」
「……」

「あの人、普通にパイ食べてた……ッ」
「しかもクリーム特盛り」
「カップルですか」
「カップルです」









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実際のところ、ちょっぴり機嫌が悪いだけ。
本当に機嫌が悪い時は嵐を呼ぶ。
ジャスティスリーグのメンバーにとってはそれぐらいが日常。
坊ちゃまは表情がまるで違うので、まずバレない。















18.疑問その2

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「蝙蝠って言うけど、なんで猫じゃないんだ? 耳もあるし夜中に目が光る」
「言いたいことはそれだけか」





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しかし尻尾はないのだよ。




















19.茶をすすりつつ仏陀が言うには、「人の一生は全て気の迷いです」


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『兄貴もいい加減結婚したら?』

久し振りに会った弟が、笑顔でそう言ったのを、ハルは唐突に思い出した。
何故かは分からない。

目が覚めると見慣れない部屋のベッドの上で、
隣には、目の覚めるほど可愛らしい生き物がシーツをぎゅっとしてる。
名前はブルース・ウェイン。
兆のつく大富豪のはずが、悪党をしばき倒すゴッサムのダークナイトが本業。
トラウマはバンビ。
この、シーツでも枕でもぎゅっと抱えるのは、寝てる間の癖で、
ただし、悪夢を見てない場合に限る。
今朝は良く寝てる。

見慣れないと思った部屋はそのとおりで。
こんな良い部屋に泊まるのは、偶然に偶然が重なって、
ウェイン・エンタープライズの、仕事しないことで有名なCEOが、
珍しくまともな理由で出張した先に、ハルが出向くような類の事件が起こった時ぐらい。
発生頻度は極めて低く。
従って、部屋なんか良く見てなかったのが、昨日の晩。

寝ぼけてた頭が、だんだんはっきりしてくる。
少し冷静になってみる。
隣には、目の覚めるほど可愛らしい生き物がシーツをぎゅっとしてる。
並んで立つとハルより背が高い。
あのトンガリ耳があるともっと高く見える。
似たような体躯といえば、美術館に飾られてるルネサンスか古代ローマの彫像で。
違うのは、触ってなぞって噛んだりする内に、
無愛想な目許まで赤くするところ。

昨日、左足の小指を舐めたら 本気で泣いた。

もぞもぞと身体を起こして時計を探す。
いつ頃から眠っていたのか分からない。
電話の音を聞いたような気がする。
隣の、目の覚めるほど可愛らしい生き物はまだ起きない。
起こした方がいいのかもしれない。

小指は、そんなに弱いと思わなかった。
なんにも分かんなくなってくると、意外と 泣く。
頻度は極めて低い。
から、ぽろぽろ泣いて、本気でしがみ付いてくるまで。
"次"があるなんて思ってるわけがない。

今、
何か悟った気が。

『兄貴もいい加減結婚したら?』

そう笑った弟の、美人の嫁さんの腹の中には既に一人目。
あの時はさっくり締め落とすだけで勘弁してやったが、弟よ。
おにーサマは、別に好きで結婚しないわけじゃあない。
ただ、おにーサマが数多くの女性と出会うのは、もう運命だ。

が、突然今、
確かに、悟った。
数えてしまった。

隣で寝てる奴と、前にセックスしてから昨日まで。
その間に、何人と出会って別れたか、指折り数えた。
だけでなく、その順番で、少し考え込んだ。

「これは、結婚、できない」

愕然と、真理。
曇りを拭い去る瑠璃光のような。

「 …… ハル、何をしている」

聞こえた声は、全くの平常で。
相変わらずシーツをぎゅっとしたまま、煩そうに片目だけ明ける。

「人生の悲哀と虚しさに向き合っている」

正直に告白したつもりが、胡乱げに人の顔を見上げ、

「……一知人として教えておこう。
 目を覚ました時、すぐ隣で全裸のお前が深刻そうに考え込んでいるという状況は、
 整合性の欠片もなく不気味でしかない。
 言ってみろ。 病気か? 借金か?」
「バリーに借りてた分はこの前返したし定職にも就いてます。
 俺も息子も至って健康なのはおまえも昨日確かめたハズですが」
「そうか。 忘れていた」

もごもご呟くように目蓋をまた下ろして、シーツを引っ張り上げると、
それっきり動かない。

「寝るな! 聞くなら聞け! 言わないけどッ」
「うるさい。 黙るか出て行くかにしろ」

寝返りして人に背を向けたコイツの。
こーゆー腹の立つところは良く知っている。
ので、シーツでも引っぺがしてやろうかと思っていると、
その肩が、小刻みに揺れているのに気づいた。
顔を覗きこむと、

「キャロル・フェリスと結婚しなかったくせに、
 今更何を言うかと思えば……」

笑ってる。
思わず自分の右手を確認した。
今絶対近くに巨大隕石でも降ってきたはずだが、リングには特に反応もない。
でも、ブルースが、声を上げて笑っている。
ハ 、の音で白い歯を見せて。

「止めろハル、妙な顔をするなッ
 涙が滲んでくる……」

と、頼むので期待に応えたい。
黒髪の傍に手をつき間近に覗き込めば、両目をきゅっとつむる。
けれど、人の悩みをやたら快活に笑ってくれた唇は、まだ物足りないらしいので。
キスはそこから。
軽く繰り返して、頬や目許やこめかみにも。
吐息の下、溜息みたいに気配が微笑った。
そこからは、ブルースが自分で唇を重ねる。
なんだか無性にそんな気分になって、顔が勝手に笑うのを感じた。

「……まあ、心配することはない」

唇は、離れて。
たしかに藍色の瞳がきらきらしてる、意地悪そうに。

「そのうち、お前の子供だから責任取れと言われて押し付けられる日が、必ずやってくる」

意地悪そう、でなく、意地が悪い。

「おまえ、さっきから、酷い。 気遣いがない」
「酷くはないぞ? そうなったら家ぐらいは買ってやるから責任を取れ」
「だからッ そんな事故は起き……起きないって言ってんだろ!」
「お前の場合、素直に彼女と結婚しておけば大概の問題は解決したと思うが」
「ホント、そこから離れろ、お願い」

がっくりして、耳の中では再びエコー。
美人の嫁さんの腹の中に既に一人目のいる弟よ。
見ろ。 おにーサマはむしろ弄ばれる側だ。
どーだ、かわいそーだろ。

あくびが出る。

結局は、朝なのだ。
ごろんと横になって、やっぱりシーツの中が良い。
シャワーはもう一度目が覚めてから。

「あ。 さっき電話が鳴ってた」
「……そうか」
「本日のウェイン氏の御予定は?」

夜闇の底から睥睨するダークナイトとは違い、
仕事しないことで有名なCEOは、眠たいあくび一つ。


「それは秘書に聞いてくれ」

















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"可愛い"という単語をゲシュタルト崩壊しそうなほど並べようとして、挫折しました。
非常に残念です。

で。
DCUキャラ最後まで結婚できないよランキング ワースト1、2位。(偏見)
実際、責任取ってと言われて子供を押し付けられるのは、ブルース様の方ですが。
子供と子持ちには優しいよ。(比較的)

















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