*注意*
聖戦後に復活したら蟹に乳が生えたよネタ。 カイーナからお送りします。
めりーくりすます翼竜。


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聖なる星夜に
鈴の鳴り 笛を吹き
楽の音にぎにぎしく現われたる 百鬼夜行
三千世界の悪霊 十万億土の魑魅魍魎 引き連れて
首なし馬を駆る 西方浄土に鐘の音




『 マレビト来たる 』




「サンタ、ていうのは、昔からどこにでもいたんだよ」

行儀悪く机に腰かけ、赤いブーツが脚を組む。
白いふわふわが無邪気に揺れる。

「年の瀬に、森の奥、深山、海の底から、人里にやって来て、
一年の間に溜まった悪いもん全部、邪気怨念諸々あばき晒して、向こう側に連れて行くんだ。
んで、新しい健やかな年のために、幸福を連れて来る。
そういうね、人の世と神の領域を行き来する "マレビト" だったんだよ。
まあ? 今じゃだいぶ規格統一されて人畜無害そうな顔してるけどね。
赤い色を見たら気をつけな。
良い子にはプレゼントをくれるけど、悪い子は 連れてっちゃうんだってさ。
あ、なんだよ言い忘れてたじゃねーか。

めりーくりすます、ラダマンティス」


真正面から言われた彼は、その生き物を、
世界で初めて発見された珍奇な動物であるかのように眺めていた。

「……もう一度聞く。 何のつもりだ」
「だからサンタだって。 見て分かれよ」

彼の執務机に座り込んだ、ご丁寧に赤い帽子までかぶった生き物は、
不服げに口を尖らせ自分を指差す。

ラダマンティスは、天猛星を宿運とする冥界三巨頭は、
たしかに、神代の頃からクリスマスも年の瀬も関係が無かったが、
しかし、赤いものを着ていれば何でもサンタクロースと認識されるわけではない、と考える。
少なくとも、彼の知る伝統的なサンタクロースは、肩や脚を見せない。
まして乳など、絶対に無い。

「まず貴様は地獄に堕ちろ」
「もう地獄だろー。 おまえ自分がどこいると思ってんだよ」
「当然のように答えるなッ 亡者でもない貴様が何故いつも下らん理由でこの場にいる!
第一に、貴様まだそんなふざけた形を……平然と乳を生やしているな!! 莫迦か貴様はッ」
「平然とじゃねェ! これでも俺は苦労してんだ !!!」

憤慨したサンタクロースもどき(♀)は拳を握る。
ふんわりしたラインの赤い衣装は、子供のために愛らしいのではなく。

「どうしてもミニを履かせようとする奴等をかわすのが、どんだけ大変だったと思ってんだ!」
「知るか莫迦ッ」
「やっとこの形で妥協させたんだぜ。 あいつら鬼か」

そう言うと、それまで大人しくしていたサンタの両膝が、左と右に別れ、
すぐ上を白くふわふわと縁取っていた裾を、指でつまみ、持ち上げる。
サンタは、立てた膝を抱え、小首を傾げた。

「なあ?」

赤いワンピースの下は、赤いホットパンツ。
自分の姿を見下ろし、水銀色の目は難しそうに批評する。

「……まあ、色気はちょっとないかなァ……。
脱がせてこれだったら、ガード固っ!と思うね。 ちょっと色々考えちゃうかなー。
おまえどうよ そこらへん」

ラダマンティスは時折、この眼前の生き物の、
自己意識を持つ一個体としての、あまりの不条理と、いい加減さに、
(いっそ卓越していると言っても良い、その可塑性に)
なにか奇妙な、感傷めいたものを、ほのかに感じる時がある。
無論それは、断固とした彼の精神性の、極僅かだったが。

「貴様は……本当に、どう仕様も無いな。 呆れて物も言えん」
「だろー?」

サンタは ふんにゃり笑って、
脚を投げ出すと、赤いブーツを彼に向けた。

「もうね、情けなくなるね、この細っこい脚。 骨格から変わってんだぜ」

彼の手に乗せられた膝裏を、軽く持ち上げて試してみれば、
たしかに言葉のとおりだった。
親指を滑らせてなぞる、柔らかな薄い皮膚の下、
青く透ける静脈が、ひそやかに色を秘める。

「貴様は、何をしに来た」
「んー? 見せたかっただけ」

聖夜の赤と、あどけない白を 乱して
水銀質の目が笑った。
















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サ ン タ ガ ー ル !
特に何の意味もないけれど、翼竜のことはからかいたい。
そんな蟹。
着々と何かが進行していく……ッ






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