「では、ここで問題です!
聖域では、女性が聖闘士になろうとした場合、仮面を着用するという習慣がありますが、
それは何故でしょうか。 具体的に答えてください。
お二方 どうぞ」

「聖闘士の世界は女神以外は女人禁制だから」
「女であることを捨て去るために仮面をつける」

「ブー。 それじゃ二人とも及第点はあげられません。
俺は具体的にと言いましたね。
女人禁制と言った場合、この女人はいったいどういうものを指すんでしょうか?
はい、シャイナくん」

「……女じゃないのか?」

「それはね、そうなんだけどね、同じこと答えてどうするの。
魔鈴くんは? わからない? うーん、難しく考える必要はないんだよ。
この女人ってのは、つまり普通の女の人ってことだ。
普通のおねーちゃんが聖闘士なんかやってたらダメだろ。
この世の中は、女がいなきゃどーにもならねーの。 男だけいたって世の中何にも回らねーの。
だから、普通の女の人は聖闘士なんかになっちゃダメなんです。
元々やるべきことがたくさんあるからな」

「でも、私達は」

「そ。 仮面をつけてこの聖域にいる。 おまえたちは、普通の女じゃない。
じゃあ、おまえたちは何なんだ? 男か?
そうじゃないだろ。
君らは、特別な女ってことだ。
女神に仕える、特別な人間だ。

そもそも、仮面をつけるというのは神聖な行為だった。
通常の人間ではない、もっと高次の存在に変わるってことだ。
教皇は何で仮面をつける?
あれはな、俺達が今こうやって喋ってるような普通の、地上の人間が過ごしてる時間の流れから離れて、
"神"に近づき得る者になったっていう象徴だ。
神性を獲得するために仮面を被るんだよ。
おまえらのもそう。
古来、その仮面が意味するのは、女神の神聖さだ。
秘められた、近づいてはならない神聖な力の象徴。 それがその仮面だ。

分かるか? つまり君らはこの聖域の中でも、特別な存在なんだよ。
聖衣なんか無くてもな」

「だから、私達には聖衣が授けられないって言うの?」

「さあ。 決めるのは教皇で、俺じゃない。
……睨むなよ。 顔が見えなくても声に出てる。 仮面の意味が無ぇぞ。
まずはその仮面に釣り合うだけの人間になりなさい。 聖衣はその後だ。
聖域にいるのは聖闘士と、それを跪かせる者だ。
お嬢ちゃん達じゃあ、まだまだ」



優しい、優しいだけの声 "お嬢ちゃん達 "
一くくりのままで



「……んー、不服か?
それともちょっと凹んじゃったか?」

「勘違いするな」
「そんなことない」

「まあ、実際はおまえらの言ったとおり、聖衣をもらえるだけの力はあるよ、もう。
小宇宙を操るのも上手いし、頭も悪くない。 二人とも後は実戦に出るだけだ。
白銀聖衣が二つ、空位のままにしてある。
おまえたちの分だよ。

けど、もう少しだけ戦闘以外の経験も積んでから、正式に聖衣を賜ってほしいんだな。
おまえたちが、戦うだけの奴になってもらっちゃ困るの。
極端な話、それだけなら黄金聖闘士がいれば全部足りるんだよ。 あれは完全に、化け物だ。
でも、分かるな? それだけで済むほど単純な話じゃない。
おまえたちには、おまえたちだから出来ることをしてもらいたいんだよ。
そうなるように、もっと成長してほしい。
聖域がおまえらをなかなか実戦に出さないのは、それだけ将来性を買ってるってことだ。


分かったら、お嬢ちゃんたちは戻って、
訓練生の指導という大事なお仕事がんばってください。
いやー、助かるね。 君らに頼むと余計な死人が出ない。
じゃあそういうことで、これ以上質問等もないようだし、おにーさんは行きます。
おにーさんだって仕事があるんです。
鍛練ならアイオリアに付き合ってもらいなさい」

「逃げるの」
「逃げるんだね」

「そうだよ。 可愛い子二人に囲まれたら負けるしかないだろ。
ハイ、本日はこれで解散! おつかれさまでした」










声と同時に姿は掻き消えた。
残された二人は、ちらりと顔を見合わせ、
仮面の奥、隠した感情。
隠すべきもの。


悔しいのは、聖衣をまだ授けられないことではなくて、
その 子供扱い。

































++++++++++++++++++++++++++++++

蟹はシャイナさんと魔鈴さんのことが好きだといいですよ。
どれくらい好きかというと、アタシが産んで育てました! なみに。

聖闘士になる年齢は、黄金がべらぼうに早くて、白銀と青銅は13〜ぐらいでどうでしょうか。
それでも早いな。



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