ぽつり ぽつりと 遠くの方に
小さな灯りが浮かぶだけの
何もなく沈殿した暗闇を
歩いている。
歩いている
腸か
蛇か
産道か
胎内巡りというのは どこの世界にもあるもので
歩いているうちに死んだ俺は
生まれることもなかったのかもしれない。
(何やら今さら 胃のあたりがぞわわと)
ぽつり ぽつり 遠くの闇は
冷たい灯りが溶け出した。
いつから 何が どうなのか 分からなくなりそうな
俺は歩いていて
隣のバカも歩いてる。
(いつか見たようなこの景色を何と言ったか)
と、
思い浮かんで唐突に
口を開いたその刹那
こぉおお
背から闇が吠えた。
どんどんと近づいて あっという間に飲み込まれた 怒号
闇から闇を貫き 突き破り 現れた 地下鉄道金属塊は
殴りつける突風で 微弱な音波を彼方に押しやり
喉も言葉も純粋な沈黙に生まれつく。
(さて この口は何のためにあったのか)
隣の バカの 頭を抱え
耳のあたりに顔を近づける
一語 一語 はっきりさせる。

「耳、食い千切っ ちゃいそう」

すると、奴は 妙に嬉しげに息吹して

「同じ事を考えた」

と 言いやがった。





























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ある意味イチャイチャ蟹と山羊。
でも、仮に山羊は同じ事を考えたとしても、きっと蟹の5倍くらいの強度で思ってる。




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