茫漠とした枯れ野の、蒼空に雲はなく
細い道はうねりながら彼方へと続く。
青く霞んだ遠い山影。
白梅の花は咲いた。

そして、私は四辻に立っている。













東雲の夢は あどけなく
頼りなく潤み、彷徨い、出会う。
夢は、真夜。
黒々とした竹林の天空に、丸い月は浮かび
鏡のように冴え渡る湖に、月が浮かび
水辺の小鬼は独り泣く。
幼い涙は手指を濡らし
哀しく嗚咽を震わせる。
その声に誘われたか
真夜の闇は
ざわざわと ざわざわと
無数の、無形の、鬼神の群。

群雲のように湧き出でては
小鬼の前で淵に身投げした。

月の鏡の、水は静けさ。
その水は凍てつくほど冷たいと
小鬼が泣いている。

私の差し伸べる手は
私のものよりも幼く
彼よりもなお小さく
泣き出した私の手と
泣き止まぬ彼の手と
溢れるものは、血の温みに似た、柔らかさ。










真夜の情は すぐに途切れ
小鬼は私を残して遠くに去った。
亡者を誘う深淵の、無尽の清冽さを
嘆いた子供は、二度と帰路に着かず
見知らぬ他人の顔で擦れ違い
また別れた。
















そして、私は四辻で待っている。
沃野はたっぷりと潤み、萌芽の風は仙境から吹くという。
黄の畦道は彼方から此方へ、黄昏から宵闇へ。

私の大事な小鬼は、今は冥府。
逢魔の四辻で袖を引く。

桃の花弁を、風が撫でる。
この風は、私達を育てた峡谷から吹くという。
立ち尽くす私の袖を揺らし、大地を渡る。
春の夕月は、朧ろ。

私は ひふみの言霊数え
逢引きのように四辻で待っている。























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小ネタ「静心なく」と「じーちゃんとマロ」に続きまして、
当サイトは、羊と蟹は五老峰で子供時代を一緒に過ごしてたら良いよね! 妄想を続行中です。

何気なーく冥界編の後に全員復活したりしてますが、蟹さんは地上に帰ってこないかも。
でも羊が呼べばきっと来る。 こわいから。





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