白い、華奢な、蜘蛛のような
ほっそりとした手足を、闇の底に投げ出して
青褪めた爪先で愛撫する無明夜。

「結局、貴様がそんなものに成り下がったのは」

"そんなもの "の伸ばす指は、煩わしい。
煩わしい、忌まわしい、か細い手首。
その仕草を、ラダマンティスは冷やかに観る。

「自分に課せられた使命から逃避したかっただけだ。
実に見苦しい」

地獄の判官は常に真理を告げる。
この地を女神がぐるりと巡り、また地上に戻って以来
彼の守護する冥府の監獄は、たった一人の死者もいない。
ただ、蜘蛛が笑っている。
色も熱もない目をして
月に濡れた娼婦のように。

「おまえは、使命とか似合う奴だな」

かつて、使命はそこにあった。
肉であり、骨であり、血潮だった。
そして、全て途方もなく死に絶えた。
けれども、女神は、灰塵に再び血肉を与えたから
たった一人の死者も、冥府の監獄に残しはしなかったから
成り下がったのか、成り損なったのか
白い、華奢な、蜘蛛のような
ほっそりした四肢の
喉ふるわす声は少女の清しさ。

「もう、ここには何にもないのに」

今はもう、かつての形など死に絶えて
静かに夜は微睡んでいる。
闇の底、伸ばした腕に触れるものが
真理であるはずがない。
白絹が指に流れ
狂い果てた異形の指が流れ
楚々として闇をなぶる、忌まわしさ。

膝に乗せ上げた肢体は、焼いた骨のように軽やかだった。

















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4月1日。
復活後、お互いに時間はあまっているけれども、建設的なことをしようとはまるで思わない。
そもそも何で復活しちゃったの? という疑問。



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