目が明いた。
シュラは、私室の天井を眺める自分に気づいた。
そのまま意識を周囲に展開していき、覚醒を促した要因を索敵する。
結果はすぐに自ら姿を現した。
「何だ起きたのか、可愛げのない男だ」
「そのまんま昼寝してたらイイことしてやったのになー」
ソファに横になっていたシュラは思いきり眉を顰めた。
針のように細めた両目が冷え冷えとした光を放つ。
その視線の先、断りもなく磨羯宮の私室に入り込んできた二人。
無駄に顔の綺麗な友人と、無駄に頭の悪い友人は、不思議なほど似通った表情で笑った。
二人とも、シュラは不機嫌なのではなく単純に寝起きが悪いのだと理解している。
その証拠にシュラの目蓋はまたゆるゆると閉じていく。
「んー? おまえその目、どーしたの」
声はシュラの上からした。
もう一度目を明けると、いつのまにか腹の上に乗っていた悪友が顔を覗きこんでくる。
目、と言われてもシュラは記憶にない。
「擦ったか、指を入れるでもしたのか。 眼球の一部に内出血が見られるな」
アフロディーテの言葉を聞いても、やはり覚えがない。
無意識かそれとも眠っている間にそんなことをしたのかもしれない。
鏡を持って来てやろう、と気配が視界の外を動く。
が、シュラは正直なところ全く関心がない。
ただ、腹の上の悪友は、鈍い鏡色の目を大きく見開いて、
まじまじと、まるで人の眼球を舐めるように執着する。
やがて、ふにゃりと笑った。
「金魚」
唐突な言葉はけらけらと笑い出し、人の上に突っ伏してもまだ止まらない。
遂に頭がいかれたらしい友人に、シュラは歎息した。
アフロディーテは戻ってくると、笑う背中と訳が分からないという顔を交互に眺め、ああと頷いた。
「君の目の赤い部分が金魚のような色だと言いたいそうだ」
的確に解説して丸まった猫背をぽんと叩く。
笑い声はようやく止んだ。
「……そんなことか?」
「そんなことなのだろう」
美神は微笑む。 腹の上では猫背が起きて にっと笑う。
「おまえ達……何をしに来た」
シュラの声は欠伸まじり。
二人はちらりと視線を交わし、
その、顔の作りはまるで違うくせにどこか良く似た笑みで、
「金魚を見に」
異口同音に答えた。
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答え:遊びたいだけ。
昼間から酔ってまーす。
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