壁のカレンダーは1月。
眺めるその人は頬杖ついて、ちょっと難しい顔をしていて。

おれは聞いてみようとした。

でもテーブルに放り出していた携帯が鳴って、その人は外に出ていった。
そういう時はお仕事なんだから邪魔しちゃいけない。
けれど、おれは見た。
カレンダーの脇を通り過ぎる時、中指で ぴん と弾いたのを。
おれは、テーブルに並べるはずだった皿を持ったまま、はっきり見た。

「12日って、なんの日なんですか?」

おれは昼食の準備に忙しい先輩に聞いてみた。
面倒くさそうな返事がかえってくる。
二歳年上の先輩はもう聖闘士になってるけれど、
偶々師匠のところに遊びに来ていて、いつもどおり食事当番に任命された。

「12日。さっき師匠が指で、ぴん て」
「知らねえ」

師匠と先輩に言わせると、"食えたもんじゃねぇ" ものしかまだ作れないおれは、
並べるはずだった皿の裏をぴんぴん指で弾く。
先輩が振り返って、ちょっと考えるように眉根を寄せた。
でもやっぱり、分からないらしい。

「聞いてみろよ」

外に出た師匠はまだ戻ってこない。
おれは、問題のカレンダーの前に立ってみる。
1月 12日。
もうじきじゃないか!

なんとなくドキドキして、おれは考える。
知りたい。
12日がなんの日なのか知りたい。
師匠にとってどういう日なのか、好奇心でうずうずしてくる。
あの人のことが分かる機会なんてそう簡単にありつけないんだ。



ふと、思いついた。

おれはカレンダーを ぴん と弾いた。
赤いペンを持ってくる。

「ダンテ先輩の誕生日っていつでしたっけ」
「……3月29日」

先輩はさっきよりも考え込んでから答えたみたいだった。
おれはカレンダーを二枚めくって、ペンのふたを取る。

「何だよ」
「えへへ、12日って誰かの誕生日なのかなって思って」
「そうなのか?」
「分かんないですけど」

「だったらちょっと可愛いじゃないですか、そんな師匠」


先輩は、なんともいえない顔で唸ってから、
3月29日を赤いハートマークで囲んだおれの頭に拳骨を落とした。











「師匠ー、ごはん出来ましたよー」





























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1月12日。
正解は、山羊さんの誕生日でした。
よって城戸家嫡流の特徴は、
1)何故か直感スゴイ
2)度量もおかしいぐらいスゴイ

師匠はたぶん、お誕生日会(という名の嫌がらせ)をどうしようか考え中だったんだと思います。
そして盟ちゃんは、師匠がいる時は脳細胞が薔薇色の花を咲かせます。
普段はこんな子じゃありません、たぶん。


なんで師匠が携帯使ってんのか なんて 知 ら ね え 。
先輩って単語はなんだか甘酸っぱい。



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