水晶の城が、黄金の炎に巻かれ崩れ落ちてゆく。
赤々と照らし出された大地から、金色の黄昏へと狼煙が昇る。
ああ、屍の山が燃えている。
蹂躙され尽くした世界から黒い嘆きが幾筋も幾筋も立ち昇る。



その目で、見ているのだろう。

止めど無く流れた血潮を、引き千切れた四肢を、望み絶たれた涙を、
その憐れみと慈しみを浮かべた目で見ているのだろう。
優しく微笑み、まるで救いの手を差し伸べるように、世界を炎の中になげうった、その目は、
まだ穏やかに微笑んでいるのだろう。

まさしく、おまえは神そのものだ。






この光景を忘れない。
世界を失ったこの日を忘れない。
たとえ永劫の輪廻を外れ、無間の闇を浅ましく彷徨い続けるとも。
女神よ、おまえの目を忘れ去ることなど決してない。






















天を、大地を、青白い光が焼き払った。
そして最後の意識も蒸発した。




















































「……ん、あ」
「どうした、しゃがみこんだりして」
「いや、なんか知らない顔がいるなと思って」
「君は覚えているのか、どれが誰なのか」
「そりゃあ同居人みたいなもんだから、自分が殺したのかそうでないかぐらいは分かりますよ。
隣の住人の顔もはっきりしない希薄な人間関係と比べたらずっとマシだろ? いやあ、いかんね現代社会」
「そんな同居人も君のような隣人も、私なら遠慮するが」
「ひどッ……あ、消える」

「……すっかり無くなってしまったな。何なんだ? 今のは。他の死仮面とは違うようだ」
「さあ、ね。夢でも見たんだろ」
「夢? 何のことだ?」

平らになった石床を、広げた掌が撫でる。
巨蟹宮は、神代から降り積もった死者の記憶と共に、再び静かな眠りにつく。


「……おやすみ」






















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逆側から見た女神ってこんなもんかなあと思ったり思わなかったり。
その場合、黄金聖闘士のノリは巨神兵ですよ。


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