切り裂いて、引き裂いて、ぶちまけて。
ああ、汚いなあ、もう。
青空が地面を焼いてどろりとした光沢。
何もかもが赤くて面白みもクソもない殺戮の後。
さてここに転がる肉塊らしきものはいったいどこの部位か?
しかし、この切断面の、まったくの美しさ。
鮮やかに断ち割られた、骨も、髄も。まったく。
どうしてやろうか。
頬摺りしてやりたいほどの愛しさ。厭わしさ。
どうしようもない。
青空の流れる川の真ん中。
頭からずぶ濡れの男が立っている。
纏う黄金の光輝は神代から在る至高の正義、その証。
たとえ不浄なる血に穢れても、神の名は全てを洗い流してくれるという。
そんな戯言に涙の一つも見せてやろうか。
真っ直ぐに立つあの背中、殺戮者のいとおしさ。
「よお、人が寝てる間に勝手に勅命ぶん取ってくれた山羊くん」
振り返る肩、悠然とこちらを見遣る顔。
薄い唇が引き上がって、少し笑った。
その顔を殴りたいのか殴られたいのか斬り殺されたいのか。
よく分からず、川に足を突っ込んだ。
なまぬるい感触に怖気立つような震えがくる。
洗い流して消えるものでもない、血と臓腑の匂い。
濡れた黒髪の間から溶けきらなかった血の塊が赤い筋を垂らす。
「……おまえさー、ぶった切るしか能がないんだから、もっとマシなもん切ってろよ」
その腕がもたらす聖なる軌跡は、本来誰の返り血に塗れるべきだったのか。
「鈍くせえ奴……」
腹が立って、その頬に残った赤い汚れを舐め取った。
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この場合、どんくさいのは蟹の方ですが、そこはそれ。
蟹のトラウマが13年前の山羊だと楽しいのです。
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