冥界小話 翼竜と蟹。 春の景色と翼竜の髪色

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やたらに人の髪をいじりまわして何を言うかと思えば。

「意味が分からん」
「切り捨てるの早っ! ちょっとは考えるとかしろよー。 見たら絶対すげーって言うからさ」
「言わん」
「だって春だし」

冥界にいて春も何もない。 まして菜の花など。
地上の季節が移り変わろうと、亡者には既に係わりのないことだろう。
それでも浅はかに、他愛無く言う。
その黄花の密集を見せたいと。

意味が分からない。
脈絡が無い。 話の前後状況とも結びつかない。
この阿呆の頭を割ってみれば、おそらく脳味噌が液状化している。
連想性の原因とその結果を外部から窺い知ることは不可能に近い。
そもそもこの阿呆は、いったい何なのか。

ふと傍らを見ると、先刻まで人の頭で遊んでいた手指は止まり、
いつのまにか意識を眠りの淵に沈めている。
薄青い夜影を独り夢の底。

「……寝言は寝てからにしろ」

ぷらんとする手首を取って、噛み付いた。


















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翼竜×蟹を推奨したいようです。



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