暗夜の海を流れ流され、波間に、水母の死骸。
崩れて溶けた、透き通る屑。
そういう類だ、私は。





「私は」
「うん」
「私は、今」
「ん?」
「どちらの私だ」
「ん」
「私は今、何なのだ。私は誰だ」
「あんたはあんただよ」
「分からないんだ」
「そう」
「教えてくれないか」
「あんたが決めればいい」
「おまえが選んでくれ。そうすれば、私は良くなるような気がする」
「俺はいいよ」
「おまえの言葉がなければ、私は何者にもなりえない」
「そうじゃない」


途切れて。
それを恐れ、手を取った。


「すまん」
「何が」
「おまえの役に立てない」
「おかしな事を言うね」
「おまえは私に用があったのだろう。けれど私は、私が何なのか分からない。おまえの役に立たない」
「いいんだよ、俺は」
「おまえは、何故ここにいる」
「俺はね」

笑顔、子供のように。

「誕生日おめでとう、サガ」












暗夜の海を渡り、月の白浜に流れ着く、
顔の無い何物か。
私は、そういう類のもの。































07 役に立てる奴じゃなくてごめんね
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サガにとってのサガがいなくなっても、蟹はやっぱりそこにいればいい。






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