「おまえまだコレ乗ってんのかよ」


赤いちっちゃな車が白い砂利道をガタガタ走る。
真青な空の陽は眩しい。


「もうそろそろ新しいの買えよ。 金がねェわけじゃないんだからさ。
これなんか廃棄寸前のもらったんだろ? 外は塗り替えても いい加減中身がいかれてる」


坂道をのんびり登っていくエンジンはうなりっぱなし。
陽炎、海風、砂ぼこり。 夏草ひるがえって。


「俺が選ぶからさー。 て、おまえ なんて顔してんの」


隣を見れば、ハンドル握って難しい顔。
ぎゅっと眉間にしわ寄せて前を睨んでいる。


「あ? メガネ忘れた? おまえ聖闘士がメガネなんか言っててどーすんのよ。
視力はいいけど乱視? バカかッ 気合でどーにかしろ」


せまい車内をぐるり見回せば、後ろのシートに転がっているケース。


「ほらよ」
「どうも」


きちんと前を向いたまま、受け取った眼鏡を片手で慣れた風にかける。
その横顔を、隣でまじまじ眺め、それから


楽しそうに笑い飛ばした。



「車の前に、メガネを選んでやろう」



















++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

その前にまずは免許かな。



(07/07/18)
←もどる