はいはーい! 現在ちょっと遅いお昼の準備中ー。
おれの前にはぷりっぷりの大きな青魚がありまーす。
いつもならダンテ先輩がすぱぱーとさばいちゃうところですが、
先輩が鍋の方にかかりっきりな隙をついて、今日はおれが独りで頑張ってみようと思いまっす!
大丈夫、いける、前もやったことあるし。
あの時は、ぐちゃぐちゃにしちゃったけど、これはおっきいから大丈夫、たぶん。

それでもちょっとビビりながら包丁を持った時、
後ろ頭をぺしっと叩かれた。

「豚のエサでも作る気か。 おまえにゃ早ェよ」

そこに立ってたのは、向こうの部屋で新聞読んでたはずの師匠。
(今までおれの料理は"犬のクソ"以上の評価をもらえたことがなかった)
師匠は、おれが答える前にさっさと包丁を取り上げると、
あっという間に魚を綺麗にさばき終えてしまった。
早い。 ものすごく早い。

「師匠って、料理されるんですか?」

シチリアに来てから今日まで、この人が包丁を握ったところなんて見たことがない。
コーヒーは自分でいれてたけど。

「するけどしないな。 こいつがいるから」

こいつ、と言われた先輩は、ちょっと肩をすくめただけだった。
なんとなくおれは、先輩に料理を教えたのも師匠なんだって分かった。
おれも絶対教えてもらおう。
師匠は、小首を傾げて言った。

「俺の方が上手いけど、こいつの方が美味いんだよ」
「……おふくろの味ってやつですか?」
「それだ!」

ツボにきたらしい師匠、
のわきから伸びた先輩の足がおれを蹴った。


「おまえら、食いもん作るとこでバタバタすんなよ」














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家族構成:
おとん兼おかん、にいちゃ、末っ子



(07/07/15)
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