たとえば、何かつまらないことを思いついて、それを聞いてもらおうとしたとき。 あの人の言葉を聞きたいと思ったとき。 おれは同時に気づく。 (あの人はいない) 気づくたび、改めて驚かされる。 胸の奥をするりと突き刺される。 痛いんじゃ ない。 ただ、慣れていないんだ、まだ。 そうやって、同じことを何回も繰り返す。 何度も気づいてそのたびにあの人は死ぬ。 それでも おれは どうしても 燻らせていた煙草から灰が落ち、見るともなく眺めたその後。 「盟」 「うん?」 「急にぼんやりして、どうしたんだ?」 弟が目をくりっとさせて人の顔を覗いていた。 天真爛漫なようでいて時に聡い、その目。 「……ヤローの心配なんかするより、 星矢ちゃんは他にもっと気づかなきゃいけないことがあるんじゃないかなァ」 「へ? なんだよそれ」 「シャイナさん美人なんだろ?」 「うん」 「あっさり言うなよ」 「シャイナさんがどうかしたのか?」 「……いいや? まァ、いいんだ 気にすんな! お子ちゃま」 煙草を消す。 立ち上がる。 俺は、上手に笑う。 「時間だな」 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ギガントマキア中 その人のことがまだ思い出にならない。 (07/07/15) ←もどる |