腕の話 (蟹と山羊)




きらりきらりと光の粒が反射する。
目の奥眩ます青天白日。
自分の爪先と、影の落ちる手前ばかり、眺めて歩いた。

顔を上げたのは、何か言われたから。

俺はいつも、後ろを歩いているので、
大抵まずその背中を見る。
次に振り向かない後ろ頭を目に映す。
振り向かないね、まず間違いなく。

最後に眺めたのは、腕。
それはいつでも、いやに鮮やかに視覚域を切り取って存在する。
何物と代わることなく。
全く。
まったく、そのとおり、そこにある。

俺はいつか、前を向いたきり振り返らない奴の顔を忘れても、
きっとこれだけは忘れないような気がする。



腕の、その形それだけを





ところで何のお話で?















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話を聞いてないのはお互い様。


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