腕の話 (蟹と山羊) きらりきらりと光の粒が反射する。 目の奥眩ます青天白日。 自分の爪先と、影の落ちる手前ばかり、眺めて歩いた。 顔を上げたのは、何か言われたから。 俺はいつも、後ろを歩いているので、 大抵まずその背中を見る。 次に振り向かない後ろ頭を目に映す。 振り向かないね、まず間違いなく。 最後に眺めたのは、腕。 それはいつでも、いやに鮮やかに視覚域を切り取って存在する。 何物と代わることなく。 全く。 まったく、そのとおり、そこにある。 俺はいつか、前を向いたきり振り返らない奴の顔を忘れても、 きっとこれだけは忘れないような気がする。 腕の、その形それだけを ところで何のお話で? ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 話を聞いてないのはお互い様。 ←もどる |