イライラの理由は。
日が沈みかけた海岸線。
緋咲は何をするでも無く、ぼんやりと夕日を見ていた。
遠くで響く排気音。
―――この音……
緋咲は聞き慣れた爆音が近づいてくるのを聞き、振り返る。
パールホワイトのFX。
それが秀人である事が瞬時に分かる。
もの凄いスピードで緋咲の停車している方向へと近づいてくる。
そして、そのまま、緋咲の横を猛スピードで通り過ぎる。
その一瞬。
2人の視線が交錯する。
秀人が流し目で緋咲を捉え、緋咲は真正面から秀人を見据える。
緋咲はスローモーションのように、秀人の視線を捉えた。
通り過ぎた秀人の姿を追って振り返ると、爆音を残し遠ざかって行く秀人の背中。
見る間にそれは小さくなっていく。
―――…ムカツク
大嫌いな秀人を見たからか
そんな秀人の姿を追ってしまったからか
秀人の視線が脳裏に焼き付いて離れないからか
「…チッ」
緋咲は吸っていたタバコを地面に押し付け、自分のFXに乗りその場を離れた。
部屋に帰ってきた緋咲は、冷蔵庫を開け、ビールを取り出す。
イライラは治まらない。
秀人の姿を見ただけで、どうしてこんなにイライラするのか。
秀人の事、キライだから。
なのに、思い出したくも無い秀人の姿が、脳裏から離れない。
特にあの目が。
一瞬交差した視線。
それだけなのに。
―――イライラする。
あの視線を振り払うかのようにビールを煽る。
―――いくら飲んでも酔えない。
脳裏に焼き付いた秀人の視線が緋咲を見ている。
全てを貫くような強い視線。
あの目が嫌いだ。
何故だか目を逸らしたくなるから。
でもそれでは負け犬のようでムカツクから、意地でも逸らさない。
「ハァ、」
緋咲は溜息を吐いて、ベットに寝転がる。
―――マジでムカツク……
秀人が。
「緋咲さん、…飲みすぎじゃねーすか?」
いつの間に部屋に入ってきたのか、目を閉じてウダウダしていた所を土屋に声をかけられる。
思考を秀人の事に奪われていた緋咲はボンヤリ目を開ける。
土屋は、緋咲の空けた大量のビールの缶を見て言う。
「……酔っ払ってます?」
「酔ってねえ」
―――……酔えねえってのに
緋咲は土屋には構わず、そのまま目を閉じる。
ベットがギシリ、と軋む音がする。
土屋は緋咲に圧し掛かり、そのまま唇を塞ぐ。
「……ッ」
―――コイツは、ちっとスキ見せるとこうだ…
緋咲は、半目を開けて自分の唇を貪っている土屋を冷たく睨む。
だけど面倒だったので、そのまま土屋の好きにさせておいた。
土屋は思う存分緋咲の唇を貪ると、
「…何で抵抗しないんスか」
唇が、触れるか触れないかのギリギリの所で緋咲に問う。
―――別に。面倒臭かっただけだ
緋咲が言葉を発する前に、また唇が塞がれる。
深く、激しく。
「…ッ…ハァ…」
思わず、吐息が漏れる。
しつこく口内を荒らし、最後に舌先で唇をペロリと舐めて漸く緋咲を開放する。
「やめろって、言わないんスか?」
「……じゃあ、やめろ」
緋咲は睨んだまま、気だるげに言う。
てゆーか、始めッからンな事すんな、と半ば呆れながら。
「やめません」
キッパリと告げた土屋は、今度は耳朶へと舌を這わせる。
耳に息がかかり、濡れた舌が入ってくる。
緋咲は、ゾクリ、と身を震わせる。
……ああ、この感覚は、秀人と対峙する時と、似ている。
またしても、秀人の事を考えてしまった自分に舌打ちする。
アレから、秀人の事が頭から離れないから。
ずっと、秀人のあの目に見られているから。
見るな。
オマエに見られたくねえ。
落ち着かねんだよ。
「……土屋ァ、…何も考えられねーくらい、ヨクしろよ…?」
脳裏に焼き付いたアイツを振り払いたくて。
そう、土屋に命令する。
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『BLUE-SKY』のチイさんから、サイトの一周年+α記念としていただいちゃいましたよ〜(感涙)
あぅ〜、可愛い〜 可愛いなぁ〜緋咲さんvv なんでそんなに秀人くんが気になるかな♪
にしても。
土屋ですよ!?土屋!まさか余所様のこんな強気な土屋が拝めるとは……ッ
すっかり「土屋=ヘタレ」という図式が出来あがってしまった僕には新鮮な衝撃でしたvv
はー、もうウットリしちゃいます☆ありがとうございました!
もどってみる。