寒い日にはアツアツのおでんをどうぞ パートU。




 『おでん その2』





おとうさまのお帰りは、いつもジャストなタイミング。
何故ならお帰りの前にはちゃんと連絡してくるから。
でもたまに、間違えも起こったりする。


「おかえりなさい、ちょうど良かったですね」
「ぉかえりなひゃひ」
「おまえは早すぎなんだよっ」
熱々の大根を頬張る人間の頭を叩くのは大変危険な行為だ。
けれどそんなことでめげる人間は、この家族の中にいない。
ちょっと涙目になりながらも懸命に大根を胃の中へ片付け、にっこり笑う。
「おかえりなさい」
「……ああ」
しかし答えたほうは、なにか難しい顔をしていた。
柳眉をほんの僅かに顰め、食卓を眺める。
「おでん……?」
「あれ? 携帯でさっき言ってなかったですか? 今日はすげぇ寒いからっていきなりこいつが……」
と、更に大根二個目に挑戦している奴を指す。
「らってほへんんまー」
「何言ってっか分かんねーよ」
「……つーか、またおでんか?」
「また、って……最近してなかったと思うんですけど」
「だって昨日」
「昨日はいなかったでしょ」
「……ん?」
ふっと何かに気付いたらしい。
酷く嫌そうな顔をして暫く考え込んでいた。
が、
「まあ、おでんに罪はねぇしな」
と言って何事もなかったように席についた。
「……他でも食ってたんですか?」
「ん。でも」
「はい?」
「味違うし、美味いから」
「……そうですか」
「そう」

家族の食卓は、基本的に平和だ。


「いただきます」



























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「らってほへんんまー」→「だっておでんうまー」 でした。

おとうさまの、昨日のおでんにまつわる嫌な記憶を考えてみよう。
1)コンビニで。 出た瞬間にニャンコに囲まれた。
2)屋台で。 酔っ払いにからまれた、後に素早く鉄拳制裁。
3)最強外道さんちで。

つーか、おとうさまって……おとうさまって!

おとうさまはいてもおかあさまはいない。
それが横須賀最強バカ家族。


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