寒い日にはアツアツのおでんをどうぞ。




 『おでん』




学校帰り、コンビニ前。

「うわっ! さっぶい」
「あー、曇ってきたしなー、今夜あたり降るか?」
「やーめーれ。寒ぃの嫌いなんだよ」
「っつーか、リョー! さっびいとか言いながら俺の卵に何すんだッ おまえもう自分のはんぺん食っただろ!」
「ちっと間違えただけだろー? まったく目ざといんだからよ、ジュンジは」
味の染みこんだ卵が割り箸で摘まれる。
「はい、ジュンちゃん。あーんして」
「きしょい。あ、バカ! 落ちるっ 卵落ちるって! ちょっ……カズ! どうにかして」
差し出された手がおでんの容器を卵の下にする。
「あぶねーだろ? リョー」
ついでに割り箸も持ち主を移動。
「んじゃあ、いただきます」
寒空の下、厚揚げはぶっちゃけすごいうまい。
「カズ……次は俺って言ってたのに」
「悪ぃ悪ぃ。半分やるからさ」
「じゃあ俺もカズに半分やる」
「あんがと」
そんなやりとりをしてるうち、後ろで唸り声がする。
「あー、んあー、頭痛ぇー」
「そりゃ真冬にピノ食えばそーだろ」
「おでんとアイス同時に食おうとすんのはマー坊くんぐれーだ」
「わっかんねーな、その感覚」
「うまいんだからしょーがねぇじゃん。ハイ、一つあげる」
「冷たっ! 甘っ! 寒っ!」
「え? 俺も? いや いいよ。まだ口ん中おでんあるし」
「俺もまだ卵の味を大事したい。取敢えずマー坊くんもおでん食えば? 冷めちまうよ」
上手くアイスとおでんの交換を誘導するのに成功す。
真冬でもピノは変わらず美味い。
けれど真冬だからこそおでんは美味いから、
「あったけぇー……」
あどけなさの残る満面の笑み。
「あっちゃーん、おでんうまーっ」
携帯で兄貴に何か確認していた背中が振り返る。
「ハイ、アっちゃんも あーん」
割り箸が摘んでいるのは、熱々汁だくがんも。
いきなり口に入れるにはちょっと危険なブツ。
(コント……?)
(コントなのか……?)
(しかもアっちゃん相手に? うちの頭は鬼だ……)
「アっちゃん、あーん?」
小鬼は小首を傾げて自分の幼馴染を見上げる。
なにか困ったようなその顔を眺めていたかと思うと、口を窄めて、
ふーっとがんもに息を吹きかけた。
(フーフーした!)
(フーフーしたらコントじゃねーし!)
(いや、そんなことでがんもが冷めるとは思えねえ。まさかフェイント?)
渦巻く疑惑の中心で、小鬼は気楽にがんもを冷まそうとし、そのうち、
ぱくっと食べてしまった。
「あっ」
(食った!)
(自分で食いやがった!)
(それ全然意味ねぇし!)
思わず食べてしまった小鬼は口をもごもごさせながら、
きまり悪そうに幼馴染を見上げた。
「ごめん、アっちゃん……」
幼馴染は、ちょっと呆れたように溜息をつくと、小鬼の金髪をくしゃりと撫でて、
「いいって」
それから笑ってみせた。
そしてまた携帯に戻る。
(アっちゃんて……)
(アっちゃんだ……)
(やっぱりアっちゃんなんだ……)
小鬼は安心して、おでんの汁をすすった。




「そんじゃあ、真嶋商会に行こっか」





















+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「」とか()が三つ並んでるところは、上からジュンちゃん、リョーくん、カズくんです。
あんまり書きませんけど、爆音の↑の三人が好きです。
マー坊もまじってキャーキャーわーわー騒いでほしい。
そしてカズくんとジュンちゃんはナチュラルにいちゃついてほしい。
そんで皆してアっちゃんが好きなんです……こんな爆音です、イメージ。

ミツが書けなかったのが心残り……


もう帰る。