『赤いんだよ』





肉塊は、有無を言わせずそこにある。

「ただいまー」
のんきなその声に、土屋は唸るような返事をした。
外から勢いよく帰ってきた相賀は、鼻の頭や頬を赤い。
大掃除の済んだ部屋を見回すと、その丸い目をさらに丸くして首を傾げた。
「何それ」
土屋のいる台所には、何か妙な塊があった。
「それ 肉?」
「みやげ、らしい」
土屋の声は何故か疲れが滲み出ている。
しかし、みやげと聞いて相賀は逆に笑顔になった。
「俺もおみやげあんだ」
土屋は肉塊から目を逸らし、相賀のほうを振り向いた。
相賀は右の掌に乗せていたものを得意げに見せる。
「雪積もってたから作った。すげぇよ? 三連なのにここまで持ってきても壊れなかった」
それは小さな、雪だるま。
三つ重ねた雪玉を眺め、土屋は一瞬、言いようのない脱力感に襲われた。
おまえは小学生かと叫びたくなる。
しかしそんな台詞は年中吐いているので、今更のように思えた。
「……ふぅん、良かったな」
だから結局、それだけだ。
それでも相賀は随分と楽しそうに笑う。
「緋咲さんは?」
「ついさっき出てった。すぐ帰るって言ってたからそのうち来るだろ」
「じゃあ、緋咲さんにも見せてやろ」
そう言うと相賀は冷蔵庫を開けた。
「おい、何すんだ」
「うん? 入れる」
「バカ、冷蔵庫じゃ溶けるだろ」
「そっか」
改めて冷凍庫を開ける相賀を眺め、土屋は妙なことに気付いた。
「……なんでその雪だるまは赤いんだ」
「え?」
相賀はきょとんとして視線を下ろした。
右手の雪だるまを見ると、たしかに下の雪玉が赤くなっている。
自分の手を見てみた。
やはり赤かった。
「……なんだろう?」
笑って誤魔化す相賀に、土屋は溜息をついた。
「とりあえず手を洗え」
「はーい」
「あと、それ捨ててこい」
「えッ! なんで !? 俺の力作だよッ !?」
「うっさい! バカッ」




「……あー、全然年末の気がしねぇよ……」




























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年末も年始もお盆もクリスマスも、こんな感じ。

ちなみに冷蔵庫に雪だるまを入れてみたことがないんで、保存に適しているかどうかわかりません。
でもどちらにしろそんな赤いのは、いや。


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