たいとる : 『うっかり女体化した。』
ながさ : ほどほど
どんなお話 :ハルが帰ってきたら友達がみんな性別反転してた。
ちゅうい :おハル(♂)×ブルース(♀) 仕事の早い男とちっぱい処女
良い子の18歳未満は見てはならぬ。
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1.
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「ふぅん、五次元インプ? のイタズラで、性別が反転したw
あー、ダイアナが後を追っかけてる。 で、おまえらは留守番。 生理中みたいな顔して、ポニョ見てた。
着るのが無いからジャージでね、うん、うブッぶははははははははははははははははははははははwwwww」
ウォッチタワーのラウンジ。
ハルはどうしても笑いが止まらず腹を抱えて床に崩れ落ちる。
憂い顔で溜め息をつくメガネの巨乳はクラーク(♀)、
その隣で「あのねぇ、僕達本当に困ってるんだけど!」と口をとがらせるバリー(♀)はチョコレートアイスを抱え、
テーブルに並んだピザの空き箱とコークの瓶から考えるに、別に困ってないんじゃないかとハルは思う。
そして、七つの海を統べる女王陛下は今日も我関せずと、イカゲソ唐揚げ。
「ブルースは? あいつはどうなってんの?」
どうにか小康状態までなったハルは身体を起こすが、友人等はしれっとした顔で明後日の方を向いている。
ハルは一つ肩をすくめて、
「ハイハイお邪魔しましたー、勝手に見てきますー」
ぶらりと立ち去りどこかへ歩いていく。
通路の途中で思い出し笑いをしたらしく、その声が三人のいるラウンジでも聞こえる。
と、それまで無言だったアーサー(♀)が一言。
「あれは今のうちに去勢しなくていいのか」
2.
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ブルースに、出会った途端に殴られる。
一回休み。
3.犯人はモンキーレンチ
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「な ん で いきなり殴んだよ! 鼻血出たッ」
「振り返ったらそこにいた。 少し驚いた。 他意はない」
コントロールルーム。
じろりとハルを睨み、至極どうでもよさそうに言い捨てるブルース(♀)は、
頭一つ以上身長が縮み、やはりジャージ姿に作業用のウェストバッグ。
長く伸びた黒髪をどうやって後ろでまとめているのかと思えば、電気コード用の結束バンドだ。
色気の欠片もない。
と考えるハルの脳内で、いやコレもありだろ、と別の意見が現れては、ねェよ! と言い返す喧々囂々。
そんな彼を放置し、ブルースは慣れた手つきでコンソールのカバーを開ける。
所在ない時はメンテナンスをして回るのをハルは知っている。
その後ろ姿に、腕が伸びた。
指の先で結束バンドを引っかける。
元が摩擦の少ない材質は、艶やかな髪に沿ってすーっと滑らかに伝い落ち、
「うぅ!」
珍しく驚いたような声を上げたブルースの、それなりに苦心しただろう纏め髪は呆気なく、はらりと解けた。
恐ろしげな目つきで振り返る彼女(仮性)に、ハルはてへっと笑う。
その顔目掛けて振りかぶられる、モンキーレンチ。
「邪魔をするなッ」
しかし、既に一度殴られているハルは、相手が工具という名の凶器を所持していると知った時から
こうなることを予測しており、両者の間に瞬時に“壁”を構築した。
こう見えて、宇宙最強の武器を任されたグリーンランタンであり、USAFの最も勲章から遠いトップエースなのだ。
が、壁に跳ね返されたモンキーレンチがその手からすっぽ抜け、派手な音を立ててコンソールにぶつかると、
ブルースは、信じられないものを見たように自分の右手を見据え、とすんと椅子に崩れ落ちた。
「何だこの貧弱な身体は……」
これは予測してなかった。
見ると、先程ハルの顔面を殴り飛ばした拳は色が変わっており、随分華奢になったその手が小さく震えている。
どうやら痛むらしい。
「……まるで自分が半分になってしまったようだ」
がっくり肩を落としてそんなことを呟くので、ハルは友人を慰めたく思う。
俯く顔に長く垂れた黒髪を掻き上げてやり、うなじまで梳き流す。
「ダイアナに任せておけば大丈夫だろ、すぐ元に戻る」
けれど、耳朶に囁いても額に唇を寄せても無反応。
いよいよこれは重症で、ハルはとりあえず、そのジャージのファスナーを下ろしてみる。
中から現れた白い肌は雪夜の月光を浴びるよう。
そして、これまで数限りないチンピラを拳一つでボコボコにしてきた本人の、見る影もないほどほっそりした肢体は、
見事な“ちっぱい”だった。
さて、女性の好みを言うならハルは自分のそれを至って標準的だと思っている。
すなわち、胸と尻が豊満であれば多少のことは気にしない。
が、今。
たしかに以前と比べて半分ほども質量が減ったかもしれない友人(♀)の、楚々とした微乳を目の前にした時、
ハルの胸の内は静粛に、これもアリ、と宣言した。
「……何をしている」
「ん? どれぐらいどうなのかなって。 肉ごっそり落ちたなー、あばら浮いてね?」
無言で重い溜め息をつくので、ハルは励まそうと、
その寄せても上がらない白くなだらかな曲線に優しいキスを降らせる。
綺麗な色の乳首がつんと尖っているところなど充分可愛らしいと思う。
「ハル」
「見てるだけ」
けれど、たとえば白いケーキに紅いクランベリーが乗っていたら、そこから食べてみたくなるのが人情で。
舐めて口に含んで美味しくいただいてると、ハルの肩に爪を食い込ませたブルースが、鼻にかかった声を微かに。
ハルの反応は早かった。
ブルースの腰の下に片手を入れ身体を浮かせると、もう片手で下着ごとジャージを一気に膝まで摺り下ろした。
「ハイ足上げてー」
この黒のボクサーは本人のだな、と分析しつつ残りを両手でしゅるりと脱がす。
さてお次は全く太さのない太腿を左右に開かせて、と考えた彼を、ひゅんっと跳ね上がった爪先が顎を強かに蹴る。
「いてっ、舌噛んだ……」
四肢の柔軟性だけでも武器になる。
ハルはその足首をそっと捕まえ、ブルースの表情を見下ろした。
唇を引き結び、睨むようにハルを見上げる瞳が、しきりに睫毛を震わせている。
「キンチョー、してる?」
「……こんな、男か女か分からない、得体の知れないモノとセックスしようとするお前の精神が、理解出来ない」
「得体の知れないって、」
「何故笑う」
「おまえ、“自分の”見たことないだろ」
すっとその頬に血の色が淡く差す様に、ハルはどうしたって煽られる。
「ちゃんと濡れてる」
瞬間、ハルの下でブルースの身体が小さくふるえたのは、羞恥のためだけではなかったと彼は思う。
が、その時ドアを突然開けた、トライデントに代わりにあたりめを携えた海の女帝。
つかつかとコンソールに歩み寄ると、ボタンを一つ押した。
「セックスするならマイクを切れ」
コントロールルームは、ウォッチタワーの中枢だ。
状況に応じてジャスティスリーグのメンバーに指示を出さねばならない。
無論、タワー内の全階層に放送するためのスイッチがコンソールにある。
ハルは、その傍に落ちているモンキーレンチに目を留めた。
「おまえだな?」
既にアーサーは立ち去った後。
挿れる前で良かったとハルは思う。
それでも、この“不運な事故”のおかげで、ただでさえ気難しいブルースは完全に機嫌を損ねただろう。
しかし、その予測は半分ほどしか正しくなかった。
「……ブルース?」
藍色の瞳は、見開かれていた。
瞬きもしない、言葉も返さない。
その凍りついた瞳に、潤んだ光が揺れたかと思うと、見る間に水晶のような雫を結び。
ぽろぽろと溢れてはこぼれていく大粒の涙。
三十二歳にして突然処女にされたことは、実は想像以上に人間を不安にさせるのかもしれないと、
思い至ったハルは、けれど、その涙の味を知りたさに喉が鳴る。
一瞬、動くのが遅れた。
その瞬間何かに突き飛ばされた。
4.セコムしてます
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「……納得いかない……」
ラウンジの隅で小さくなったハルは、恨めしい声で呟いた。
向こうではクラークの膝の上に抱っこされたブランケットの塊が、子供のようにあやされている。
二人の声は聞こえないが、まだしゃくりあげているのかもしれない。
ブルースは頭までブランケットにすっぽり包まれ、どんな顔をしているかもハルには分からない。
その背中を、ソフトさきいか片手にアーサーがぽんぽんと慰めるのを遠目にしている。
「俺が全部悪いのかよ……事故だろあれは……」
すっかり意気消沈した親友の隣、新しいチップスの袋を開けたバリーは特に同情するでなく。
「誰のせいとかじゃないんだよね。 身体の性と自分の意識が合わないのって、すっごいストレス」
と、チップスに伸びるハルの手をぺしんと叩く。
はあ。
溜め息をついたハルはぼそりと、
「まだ何にもしてなかったのに」
「……“したせいで”泣いてたなら、今頃どうなってたと思う?」
ハルのリングは“後任者”を求め宇宙を旅していたことだろう。
彼は確かに宇宙最強の武器を任されたグリーンランタンとして数々の戦場を潜り抜けてきたが、
激怒したクリプトニアンと交戦して生き延びる自信は無い。
カウチの端で膝を抱え、親友(♀)がとことこ歩いていきブランケットの塊をハグするのを眺めていた。
四人がぴったりと寄り添い合う光景は、元の“奴等”の姿を思うといっそ神秘ですらあり、
同時に、どこかエロティックでもある。
ハルは溜め息。
「俺、女の子になりたかった」
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ちっぱいになる予定は当初なかったことをここに告白します。
顔でも何でもボコボコにされるのは慣れてるのに破瓜は経験ないので怖いですとか思ってる三十路が僕ぁ萌えるな!
セコム作動条件は何をされたかでなく、嫌だと感じるかどうかだと思う。
心拍数その他により本人よりも本人の精神状態をわかってるセコム。 ♀化してるとなおさら過保護。
ジャージはおそろい。
おハルさんは実際、ちっぱい好きでも処女厨でもなく蝙蝠なら何でもいいとかそんな。
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