たいとる : 『三千大千世界の満月に』
ながさ :短い。
どんなおはなし :2月14日はゴッサムヴィランの皆さんが蝙蝠様に愛をぶつける日です。 そんな日のジョーカーと蝙蝠。




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鐘が鳴る。
その街の夜を響き渡る。
弔いを告げるように荘厳に。
純白の花嫁のように華やかに。
今宵を祝福し、鐘楼は次々と歌う。

(不思議な色のガスで恋人達は厭人症にかかり)
(少女達は時計兎に誘われて姿を消した)
(人質は双子ばかりが22人)

鐘が鳴る。
鐘が鳴る。
青のフォルテ。
黄のアレグロ。
斑のグラーヴェ。
緑のカンタービレ。

そして、旋律の街の夜空に、飛行船が浮かぶ。
白く膨らんで、とびっきりの笑顔を描いて。
率いますは 紫の道化師。

船上、盲目の楽団は奏でる。
哀切きわまるメロディーは葬送曲。
目隠し、綱渡り、踊る空中サーカス。
踏み外した足の下には何もなく、笑いながら真っ逆さま。
率います道化師の。
誰に捧げる花束か。
風散る赤は、心臓から溢れる薔薇の色。

「……待ちくたびれちまった……」

「けれど、待つのは嫌いじゃァないんだ」

「おまえが無事に生き延びて、俺のところまで来れるかどうか」

「考えていると、胸が張り裂けそうなぐらいドキドキしちまう」

「だから、待つのは好きなんだ」

月光はあらゆる世界に響き渡り。
いつのまにか道化師の後に降り立った闇の、長い長い影を照らし出す。

「ちゃんとクジ引きして順番を決めたんだ」

「俺達仲良いだろ? 入院生活長い者同士だから」

「そしたら、俺が最後」

闇を、影を、道化師は振り返る。
真っ赤に裂けた唇の、消えない笑顔が喝采を上げ。

「けれど、おまえは来た! 俺が信じたとおり、おまえは俺に会いに来たんだ!」

漆黒の影は答えない。
声の届かぬ夜闇が、形を成して現れたようで。
鈍い銀の双眸も、やはり感情を映さない。
この街で、黒は忌み色。
色鮮やかな旋律の底に潜む、深淵の黒。
道化師は、笑みに裂けた唇を吊り上げる。

「どうしてこの日なのか、分かってるのかい? ダーリン」

白い指先に、月光。
踊るように手を差し伸べて、花は散る。

「病める時も、健やかなる時も、お望みなら地獄の底まで、
 寂しい貴方のために一緒にいてあげる、て奴よ」

けれども彼は、吐き捨てるように断るのだ。

「生憎だが、アーカムには友人達と戻れ」
「つれないねェ、おまえはいつも」

飛行船は、二人を乗せて悠々と。
大海に浮かぶ鯨のように、真円の月へと船出する。
鐘楼は今宵の最後を奏で、またの宴まで眠りについた。
今はただ月光が、あまねく世界に降り注ぐ。
雲に、海に、彼等の街に、等しく染み込み、人知れず境界を浸す。

漂流の、白い船は。
二つの影だけが決して交わることなく。
鏡に映した像のように。
これほど近しいものはなく、これほど遠いものもなく。
死が二人を別つまで、物語は永遠に対峙するのだろう。


その不変であることは、たしかに純愛の構造をしていた。
























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そんなバレンタインデー。
でも、J王子的に出会う毎日が常にプロポーズだと思う。
王子には飛行船みたいなワクワクする乗り物がお似合いです。 そして中に入ってるガスはきっと有害。
途中にちらっと書いた方々は、スケアクロウ・マッドハッター・トゥーフェイスでした。
特徴の分かりやすい人を選んでみました。
スケクロ先生のガスはバレンタイン仕様なのでピンク色です。 大変気持ち悪い。
ちなみに。
ハーレイ&アイビーは昼間のうちにブルース様のところへ突撃隣のバレンタイン。
昼間も夜も忙しいので、イベントのある日はゴッサムから出られないブルース様でした。
ある意味モテモテだな!




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