たいとる : 『夜はまた来る』
ながさ :短い。
だいたいどのあたり :原書「FINAL CRISIS」後。
どんなおはなし :ジェイソンは本当に一人きりになると、ブルース様のことしか考えないよ。
           John Doeは「ROBIN : SEARCH FOR A HERO」のジェイソンがブラックゲート刑務所で使ってた名前です。
ふんいき :乙女。



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John Doeはいつも同じ朝を繰り返す。
二段ベッドの上、目を覚まして、ぼんやりと今日も。
下のベッドには誰もいない。
John Doeはすぐに誰かを壊してしまうから。
だから下のベッドは空いたまま。

ドアが開く。
一斉にドアが開く。
オレンジ色の服着た囚人達が、
ぞろぞろと、ぞろぞろと、一斉に。
John Doeは、大きな猫みたいに目を眇め、歩き出す。

そして一日が始まる。
起床から就寝までの規則正しい時間割を。
苦もなくJohn Doeはすりぬける。
John Doeに名前はなく、John Doeは誰でもない。
彼はどこにも存在しない。
そうやって一日が終わる。

ドアが閉まる。
一斉にドアが閉まる。
John Doeはひとりきり。
二段ベッドの上、目をつむり、ぼんやりと今日も。

(明かりのない部屋の、窓の向こうは霧の夜)
(死人の影が歩いたところで、誰も気づかない)

胸に抱いて眠るのは、冷たい骨のような寂しさ。
John Doeの愛しい人は、
きっとJohn Doeを覚えてはいないので、
いつまで待っても、迎えに来てはくれないのだろう。
がりりと噛んで眠る、骨のような哀しさ。



(けれど、いつか子供は眠りに落ちて)
(羽に包むように、たった一つの優しい夢を抱いていた)
(雛のように丸くなり、もう一度、殻の中の夢に抱かれた)









John Doeはいつも同じ朝を繰り返す。
二段ベッドの上、目を覚まして、ぼんやりと今日も。
夢のことなど忘れてしまった。

John Doeに名前はなく、John Doeは誰でもない。
網膜に焼き付けた影も、胸に仕舞いこんだその声も、もうどこにもない。
悲しみ方を忘れたJohn Doeは、ぼんやりと今日も。
一日が始まり、一日が終わり。


そして、夜はまた来る。



























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最初に「ROBIN : SEARCH FOR A HERO」と言ってますけど、気分は更に後の「BATMAN&ROBIN」#6後です。
あの子また刑務所に入ったんだと思います。
ちょっと大人しく人生見つめようぜ!

とりあえず、ブルース様はさっさと帰ってきてジェイに愛してるの一言でも言ってやってください。
そんな2010年1月冬。




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