『BATMAN : TIME AND THE BATMAN』 


WRITER : GRANT MORRISON / FABIAN NICIEZA
ARTIST : TONY S. DANIEL / FRANK QUITELY / SCOTT KOLINS / ADAM KUBERT / DAVID FINCH / CLIFF RICHARDS

出版:2011年
掲載:BATMAN #700-703(2010年)




【大まかすぎる概略】

-- TIME AND THE BATMAN --
三人のバットマン、そして。
ブルース、ディック、ダミアンが、過去現在未来それぞれのバットマンとして事件を解決していく物語と、
タイムマシンを発明したカーター・ニコルス博士の最期にまつわる事件。
"過去"の事件でブルースを助けたのは誰だったのか。
"現在"で、内側からロックされた部屋で凶器も残さずニコルス博士を殺害したのは誰なのか。
"未来で"、ニコルス博士を殺害するためにダミアンの前に現れたのは誰なのか。

そして、終わらないバットマンの物語。


-- R.I.P. - THE MISSING CHAPTER --
『BATMAN : R.I.P.』で、バットマンがDr.ハートのヘリコプターを墜落させてから、
『FINAL CRISIS』で、ダークサイドからオメガサンクションされて石器時代に飛ばされるまでを、ブルースの視点からもう一度語ったお話。
どんな事件が起きたかはこのサイトでもぐだぐだ書いたことがあるので省きますが、
『THE RETURN OF BRUCE WAYNE』や『BATMAN & ROBIN』へ続く要素たっぷり。


-- THE GREAT ESCAPE --
これはライターがNICIEZAさん。
ディックとダミアンが姿をくらます泥棒さんを追ったり、そこにヴィッキー・ベールが絡んでたり、ティムが協力してくれたり。
父と子にまつわるちょっと良い話があったり、ダミアンが子猿みたいだったり。
まあ、一番の疑問は何故このお話をこの本に収録したかですが。
(答え:そうしないとページ数が少ないから。 だったらモリソンさんのどきどきするスクリプトでも公開しちゃおうよ!)
このお話は、『BATMAN : BRUCE WAYNE -THE ROAD HOME』に入れてあげるべき、ホント。





【つれづれ雑感】

今日もぐだぐだ! TIME AND THE BATMANからいきますよー。
これBATMAN#700でして、すぺさるな感じに、ブルース、ディック、ダミアンの、三人のバットマンが揃ってるわけですが。
三人が三人ともキャラクターが違ってて面白い。
気になるのは、ディックといた頃のダミアンと、その未来のBATMAN#666のダミアンの、差が。
未来ダミアン、暗いですよね。 絶対猫しか友達いないだろ! あ、ブラザーアイもいたね。
一方、現在ディックは、とっても相変わらずで。
バットマンの格好のままガーゴイルの上でヒゲそったりしてんですけど、なんでそこでT字剃刀。 家帰れよ!
あと、ダミアンとの会話で、ムチャな発想するようになったらバットマンになれるよ、というのが、確かにね。
過去ブルース様も、ニグマの歯を折ったりでご健勝なにより。

というわけで、このお話、過去現在未来の個々の事件自体はシンプルなんです。
が、ニコルス博士がね。 (発音合ってるか分かりませんが。)
私、最初に読んだ時は凶器が何か分からなくて、でも良く見たらちゃんと拾ってポケットに入れてたんだね。 うっかり!
で、私自身のためにちょっと整理しますと、

過去:ニコルス博士(この時点での博士ではない)が警察に通報し、バットマンを助ける。
現在:ニコルス博士(80歳代)の胸を撃たれた死体が見つかる。 凶器は無し。 ロックは内側から。
未来:誘拐されていた博士(80歳代)のもとにニコルス博士(60歳代)が現れ、一緒にタイムトラベル。
    そして、現在において80歳代を殺害し、過去において警察に通報。 その後は?

この、ね。 読んでいくとね、
まだ起きてない出来事が既に過去で起きているというか、過去に既に起きた出来事が未来においてまだ起こってないというか。
タイムマシンが絡んでくるとこれだからよゥ! 頭ぐるぐるぱーん! になりそな私ですが。
でもこの感覚って、『FINAL CRISIS』も『BATMAN : THE RETURN OF BRUCE WAYNE』も同じだなあと。
過去に起きた出来事の始まりが未来にあるという。

で、この話、ニコルス博士がひどい。 かわいそうだ。
まず、過去の時点で、博士は警察に通報したのが未来のいつかの自分だというのに気づいていて。
この博士はどうもその後自分のタイムマシンの研究なんかを壊して、姿を消したらしく。
で、現在の時点(60歳代ニコルス)で、再びタイムマシンを使う。
目的は、過去に戻って警察に通報することと(そうしないと、バットマンはその時点で死んでいたから)、
未来に行って自分を殺すこと。
タイムマシンをもう一度使ったのがいつかは作中でははっきり書かれてないですが、個人的には、
80歳代の死体が見つかった後じゃないかなあと思う。
それで、自分がいつ頃どうやって死ぬのか、誰が殺すのか、気づいたんじゃないのか。 前みたいに。
だから、未来の80歳代ニコルス博士は、「Is it time now? Is it time?」と言った。
そして、60歳代ニコルスは未来に行き、そこの80歳代ニコルスを連れて現代に戻り彼を殺害、自分はさらに過去に戻って警察に通報。
その後は。
作中では描かれてないんですが、また現在に戻って来て、そのまま80歳代になるまで、生きてたんじゃないかなあと思う。
いつか自分に殺される時を待ちながら。
そう思うと、この人の人生、何なの。
そんな博士のもっと若い頃が、『BATMAN : THE RETURN OF BRUCE WAYNE』に登場するわけですが。
もうね、その時から呪われてたんじゃね。

そんなわけでTIME AND THE BATMAN。 満足でした。
生脚ロビンあり、DKRネタあり、まさかのビヨンドネタあり、ONE MILLIONあり、と蝙蝠要素がいっぱいつまってる!



んで、R.I.P. - THE MISSING CHAPTER
これはあれです。
『BATMAN&ROBIN』や『RETURN OF BRUCE WAYNE』を読んでる人のために、今までのおさらいをしてやろーという親切設計。 珍しく!
なんだか久し振りにブルース様視点で、それだけでなんかニヨニヨしてしまうのですが。
えーと。
ちゃんと予備のマスクなんか持ってたり、それがなんだか柔らか仕様だったり。
『BATMAN AND SON』の時に出てきた女の子に再会する、ちょっと良い話だったり。
もうね! ブルース様が帰ってきたと知ったときのアルフレッドがホントに嬉しそうなんだ……。
ぴしっと玄関に立って待ってたりね、たまらんこの主従関係。
ていうか、好きなもの作って待ってるなんてね、うん。
で、ブルース様がディックとティムにお礼に行きたいな、とか言ってんですけどね、その後こんこんと眠るブルース様。
うん、とっても疲れてたんだね。 でも、
寝る前に二人に会いに行けよ! それか呼べばきっと飛んでくるよ!?  せめて電話ぐらいしてあげてッ!!
と思ったのは私だけでないと信じてる。
だって結局二人に会ってない気がするのよね、ブルース様だし。 起きたら即『FINAL CRISIS』だし。
そして拉致られた挙句オメガサンクションなわけですが。

おさらいと言いつつ、『BATMAN&ROBIN』や『RETURN OF BRUCE WAYNE』へと繋がる要素もちらちらしてるので、
そちらを読む上でも親切設計。
ダークサイドや魔法の銃弾がどういう存在なのか、オメガサンクションとはどういうものなのかも語ってくれてますし。
この時点で、既に何かしら察していたみたいなんですよね、ブルース様は。
でも負ける気はきっと全くないのよね、バットマンだから。
自分のことを、ただの人間ですー、とか思ってるわりにね。
つか、そういう謙遜の心がブラザーアイとか作っちゃうことに繋がるんじゃないのかね、この人の場合。

ダークサイドら"神"や、魔法の銃弾なんかは物質でなく、生きた"概念"みたいなもので。
だから、この銃弾というのは、今現在地球にある全ての弾丸の大元で。
ジョー・チルの弾丸がブルースの両親を殺害して、バットマンが生まれたのだと考えると、
そのバットマンが、銃弾の根本概念みたいな存在をダークサイドに撃ち返すというのは、
なんだか、壮大な復讐劇のようだなあと思いました。
それでも、ダークサイドが寄生している宿主を殺そうとしないあたり、とっても蝙蝠。

ところで、このお話。 作画がTONY S. DANIEL氏なのですが。
魔法の銃弾の解説をしてるブルース様の後ろで話を聞いてるウォーリーが、なんか無駄にかっこよくポーズして見えて。
いや、別にいいんですけどね。


おハルさんがスチュアート殺害未遂事件諸々で逮捕されたことについては、
超人が、
「Alpha lantern Kraken's version of events has Hal Jordan becoming possessed then killing Orion...」
と言ったことに、蝙蝠が
「With a gun? That scans.」
と答えてた……ッ!
ちなみに、『FINAL CRISIS』で描かれてたのは、
「...look,I was never Jordan's biggest supporter,but this just doesn't scan. Don't tell me you trust Kraken.」
で、なんかこっちのほうがツン度低め。
もしかして、「With a gun? That scans.」の後に「...look,〜」と繋がるのかもしれないけど、
なんかね! 蝙蝠のツン度がまた上がったね!


最後に。
このpart2全体が、蝙蝠が超人に残したメッセージだったわけですが、そのこと自体が、感慨深い。




(2011年4月)

もどる