『BATMAN & ROBIN : BATMAN REBORN』 


WRITER : GRANT MORRISON
ARTIST : FRANK QUITELY / PHILIP TAN

出版:2010年
掲載:BATMAN & ROBIN #1-6(2009年)




【大まかすぎる粗筋】


『FINAL CRISIS』でバットマンは倒れ、ティムはバットマンが生きているという証を探すためにゴッサムシティを離れた。
そして街には新たなダイナミックデュオが生まれた。
最初のロビンだったディックが、師でありパートナーだった"バットマン"の役目を引継ぎ、
ブルースとタリアの息子で、暗殺集団の中で育てられたダミアンが"ロビン"として、奇怪なサーカス団の暗躍や"レッドフード"と対決する。
出てくるヴィランがとても変態っぽいので乞うご期待! (ピンクは危険色だ!)
『BATMAN &SON』などに収録されている「BATMAN #666」も合わせてご覧になると色んな意味でドキドキします。




【つれづれ雑感】

これ、位置させるとしたら『BATTLE FOR THE COWL』の後になるのでしょうが。
そっち読まなくても問題なく、この『BATMAN & ROBIN』一冊だけで充分読める本になってるかと思います。
新しい物語を始めるよーという本なので、今まで蝙蝠を読んできた方も、始めて読むよという方も面白く読めるかと。
さくっとした読み味で、あれとかこれはこれからどうなるの? と興味を引く話もたっぷり。
ブルース様のそれからが気になる方も、このタイトルからは目を離せない展開ですよ。

で。
蝙蝠家長男ことディックがバットマンやっちゃってるわけでして。
ダミアンとの関係やバットマンであることの重圧や、悩みは多く深くあって当然なのですが、
そんな彼へのアルフレッドの助言と、ディックの受け止め方が、ああ、すごくディックらしいなあと思いました。
順応力があるというか、根っこが正しいから、今目の前にあることにちゃんと目を向けられる。
そんな長男がパパの死に関して述べたのが、

「I've always known what I'd do if... if anything ever happened to Bruce.」
「I just didn't want to face it. This was my worst, worst nightmare when I was a kid.」

まあ、パパも(あれで一応)人間ですから、クライムファイターなんかやってたらいつ死ぬか分からんわけで。
それでも、パパのやっていたことを終わらせてはいけないという責任を、駒鳥の頃から感じていたというのは。
この二人の関係はやはり深いんだなあと思いました。 なにか厳格ですらあるような気もする。
それを指して「worst nightmare」と表現するあたり、愛だな!
しかし、何だかんだいってダミアンとのやりとりを見てると、面倒見の良い兄ちゃんです。

ダミアンは。
適度にクソ生意気で、程よくムカツク面白いお子さんですね。
いやしかし、『BATMAN & SON』の頃より大人になったなあと思います。 背も伸びたかね。 ん? それ速くね?
このダイナミックデュオ、二人とも全く性格が違うんで楽しいです。 細かいやりとりにぷふっと笑ってしまう。
そういえば。
家族の写真が飾られているシーンがあるんですが、ダミアンにもちゃんとお母さんと撮った写真があった。
超生意気そうだけど。


で。
この本の中のもう一対のダイナミックデュオというか、帰ってきました赤帽ジェイソン!
レッドフードつーか、別の会社の人? あ、人違いですか。
『BATTLE FOR THE COWL』での登場では、この子の頭もうダメなのかしら……と私などは思ったものですが。
この本では元気そうでなによりです。
ていうか、ニキビできちゃった、とか、ハゲてきそー、とか、余裕じゃねェか!! きっとハゲないから安心して!

ちなみに、『BATTLE FOR THE COWL』はトニダニさんで、この『BATMAN & ROBIN』はモリソンさんなわけですが。
別のライターさんが書いたお話はもう別世界のお話だよ、と思ったほうがアメコミは素直に読めるような気がします。

さて、赤帽編。
サーシャという女の子がスカーレットとしてレッドフードの相棒になるわけですよ。
で、そのサーシャとジェイソンの出会いが。
多分、ジェイソンはサーシャの父親を殺しに来たんだと思うんですが。 (父親は一話目から登場してるサーカス団の麻薬の運び屋)
そこで、自分の父親を殺したサーシャに出会って、彼女に言った言葉が、

「You need a friend,right ?」
「And me, I'm looking for a partner to help me wipe the vomit off the face of Gotham once and for all.」

もう! ジェイソンの寂しがり屋なところは誰が書いても一緒ですね!
と、言いたいところですが。
このサーシャへの対応は、今まであまり見たことがない類のような気が。
なんというか、ちゃんと彼女のことを気にかけている。
これは最後までそうだった。
何でかなあと考えて、ジェイソンにとって彼女は同類なのかなあと思いました。
サーシャは、自分の父親を殺した。 ジェイソンはそれを見ていた。
ジェイソンにとって、その人間が、人を殺すのか殺さないのか、というのは、重要な判断基準になってると思うんですよ。
そして、自分は殺す側だと思っている。
サーシャも、その一線を踏み越え、やっぱりひとりぼっちで、とても怒っていて、とても悲しくて。
だから、ジェイソンはサーシャに手を差し出した。
……この、同類を懐に入れるというのは、むちゃ蝙蝠と駒鳥の関係に通ずるわけですが。
そんなレッドフードが不安そうなスカーレットにサイドキックの何たるかを語ってるのがこちら↓

「Can't you just smile and crack jokes like a sidekick's supposed to ...」

ちゃんと駒鳥が蝙蝠にとってどういう役割をしてたのか、ジェイソンは分かってるんだね。 大人になったね……(涙)
そう、駒鳥ってやっぱり必要だったんだよ、あのパパにとって。


この赤帽編、タイトルが『REVENGE OF THE RED HOOD』で、ジェイソン自身も

「I guess this is about the revenge of one crazy man in a mask... on anothre crazy man in a mask.」

と言ってるんですが。
さて誰への復讐かと考えて、物語の中で対峙しているディックじゃあないよなあと思ってますよ。
彼はcrazyじゃないし。 ディックについてジェイは、

「When I was Robin, Batman made me dye my hair to look more like Grayson.」

とか、

「I tried really hard to be what Batman wanted me to be ... which was you.」

とか言ってて、ジェイにとってのディックは、なりたくてなれなかった象徴だと思うのですが。 つか悲しいこと言うな!
で。↑の、ジェイの髪は元は赤毛だったけど黒く染めた、という話。
ブルース・ウェインというお人は、基本的に自分んちのお子さんのことが本当に大事で、
さらに、モリソンさんの書くパパは根本が清く正しいお人なんで、これ↑は、何か深刻な行き違いなのではないかと思われる。
つまり、ジェイソンの誤解じゃないかなあと思ってるのですが……。
ちなみに。
1985年の『CRISIS ON INFINITE EARTHS』による設定改変前の話ですが、 ジェイソンがディックに扮するために
自分で髪を黒く染めるというエピソードはあります。(1983年 BATMAN #366)
……↑は「Batman made me〜」で、made、なんですよね、動詞が。
これ、自分がそれを望まれているんだと思って、自分でやっちゃた場合も、madeになるのかな。
えーと、本の中ではっきりしたことなんて書かれてませんし、この赤毛設定がこれから先まで残るかどうかも知りませんが。
蝙蝠に言われたからジェイが髪を黒くした、と考えるより、ディックになることを望まれていると思ったジェイが自分から染めた、
と考えたほうが、私の中ではすっきりするように思います。
が、それよりジェイソンがその後ずっと髪を黒く染め続けたということの方が……いじらしいどころの話じゃない!
ちょっ、誰か本当にパパを呼んできて!
それで何が解決するかは分からんけど、せめて一目でもこの二人を再会させようよ! お願いだからッ!

だから、ジェイソンの復讐は何に向けられているのかと考えて、"バットマン" なんだろうなあとやはり思うわけです。

「Batman is dead... I'm taking his mission to the next level. I'm doing what we should have done years ago,」

「We're going to do what Batman never could... We're going to stamp every last crook in Gotham into the dirt where they belong.」

バットマンが絶対にしないこと(出来ないこと)で、ジェイがやっていること、といえば、人を殺すことだと思うのですが。
んまあ、たしかに蝙蝠が最初に王子を殺していたら、バブは車椅子にならずジェイも殺されることはなかったのでしょう。
……というか。
そこらへんも含め、バットマンがバットマンだから、そんな人に出会ったことが、ジェイの不幸の始まりのようで。
出会って、傍にいて、殺されて、もう一度目を覚ましたら、駒鳥の時と同じようには世界を見ることなど出来なくて。
バットマンのやり方を否定して、自分の方が正しいのだと証明しようとしても、それも成功したことがなくて。
結局、ずっとそこにこだわっている。
何事を考えるにしても、バットマンの存在を消すことができない。 支配されていると言ってもいい。
だから、これは彼の復讐なんだと思う。

その復讐、今回は少しでも果たせたんでしょうか。
フラミンゴっつー、ピンク色した、一度見たらしばらく忘れられないヴィランが、ゴッサムにやって来るんですがね。
いやまじで、見た瞬間、ひっと悲鳴を上げたくなるタイプのヴィランが。
そいつをジェイソンが生き埋めにした後の、ディックとの会話の中で、

「Just remember, tonight I did something even Batman couldn't do. I beat my archenemy...」

その場にはダイナミックデュオがいたのに、バットマンがいたのに、自分の手でヴィランを始末したということは、
ジェイソンにとってすごく意味を持つことだと思うんですよ。
それは自分の正しさを証明することになるから。
だから、やっぱり↑のarchenemyは、バットマンのことだと思っておきます、私。
電話投票にも勝ったしね! 今回は!
ジェイソンが、少しでも前に進めたらいいなあと思うのですよ。
この人の場合どっちが前なのか分かりませんけど。
……しかし、フラミンゴは本当にあれで死んだんでしょうかね。


そんなジェイが、最後にディックに言ったのが。
何故ディックはラザルスピットを使ってブルースを蘇生させないのか、ということで。

「You think any of this would be happning if he was here?」

パパさえ生きていれば、そもそもこんな事態は起こらなかったとジェイソンが考えているのなら。
結局はジェイソンも、ゴッサムにバットマンは必要だと思っていたことになり。
……本当に復讐したかったのかなあということになりそう。
難儀な子ですね。
で、ジェイソンは、ディックがパパを蘇生させないのは、ずっとパパの影でいることに耐えられなかっただけ、と責めるわけですが。
しかし、ジェイソンや。
長男のパパへの愛を甘く見てはいけないよ。
というあたりで、次巻に続きます!



……またジェイソンで長々と書いてしまった。
最後になりましたが、スカーレットの消え方が好きです。
あの仮面は、ゴッサムシティという狂気の舞台に上がるためのものだったんだなあと思う。
仮面といえば。
すごく怪しい後姿をさらしていたEl Penitenteが、『R.I.P』でトーマス・ウェインのハロウィン衣装を持ち逃げしたド変態に見えますが。
そこらへんどうなんでしょう?
まだ解けない謎がたくさんなので、これからも楽しみ。







(2010年4月)

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