『BATMAN AND SON』

WRITER : GRANT MORRISON / PENCILER : ANDY KUBERT

出版:2007年
掲載:BATMAN 655-658 , 663-666 (2006−2007年)





<大まかすぎるあらすじ>

ジョーカーが子供達を人質にした事件は、"バットマン"がジョーカーの頭を拳銃で撃って終わった。
それは元警察官がバットマンの姿をして行ったことだった。
そして、表面上ゴッサムシティは平穏になった。
「だから暫くまったりしなよ」的プレッシャーをかけられてブルース・ウェインはロンドンに。
そこでのんびりするはずが、パーティーでマンバットの軍隊が襲来。
拉致された先で、昔関係のあったタリア嬢から子供を押し付けれる。
曰く、「あなたの息子だから責任持って躾けてくださいね」
そんな息子の名前はダミアン。 とってもオーメン。

取りあえずダミアンを家に連れて帰ると、案の定ロビンでウェイン家の養子なティムと衝突。
主な原因は、ダミアンの性格と態度と行動と、お父さんを間に挟んだ子供二人の複雑な心境です。
お父さん、困った。
色々揉めたりティムが死に掛けたりする中、タリア嬢の本当の狙いが判明。
バットマンとダミアンの二人はジブラルタルを目指す……。

ジブラルタルの事件後、ブルースは以前ロンドンで出会った女性ジザベル・ジェットと頻繁に会うようになる。
以降ジザベルは『BLACK GLOBE』『R.I.P』などに登場。名前だけなら『HEART OF HUSH』にも。

一方、ゴッサムシティでバットマンが遭遇したのは、バットマンの姿をした二人目の男だった。
そして彼は思い出す。
以前彼は悪夢の中で、三人のバットマンに会った。
一人は拳銃を持ち、二人目はベインのように肉体増強をし、三人目は悪魔に魂を売った。
悪夢だったはずの彼等が、現実のものとしてゴッサムシティに現れた。

そして、数十年後の未来。
猟奇的な殺人事件の続くゴッサムシティには、バットマンを継いだダミアンの姿があった……。








<私的雑感>

これ一冊でも読めますが、やはり『BLACK GLOVE』そして『R.I.P』と読み進んでいただきたい。
ちなみに私は『R.I.P』を最初に読んでしまいましたが!
そんな方はこの『BATMAN AND SON』に戻ってみるべきです。 1ページ目から おぎゃーッと叫びます。

さて、眉間を撃たれたはずの道化王子ですが、その後も元気ですね!
JOJOのマジシャンズレッドの人と同じような状況だったんではないでしょうか。
王子が生きてると分かった途端、蝙蝠は王子をぽいっとゴミ箱に捨ててました。
正直そんな蝙蝠様が大好きですが、後の『BLACK GLOVE』では大富豪自らゴミ箱に入ってました。

道化王子のその後は、本中の『The CLOWN at MIDNIGHT』で語られてますが、
あんまり読めてません……(泣)
ただ、赤と黒のバラなど『R.I.P』に繋がるアイテムが出てくるので、最初に『R.I.P』を読んだ私はぎゃふんと言いました。
『The CLOWN〜』は短いお話ですが、蝙蝠と王子の遣り取りが好きな私には嬉しかったです。
でも「The eyes of the two men lock into place like dancers in a tango.」には口からなんか噴きましたが。
いや、うん、好き。 正直言って好き。

などなど。
『BATMAN AND SON』は、この後の流れの中で重要になってくるキャラや出来事などが垣間見えるんですが。
それとは別に、蝙蝠一家の遣り取りがとぼけていて好きです。
ティムがサンドイッチ食べるシーンがあるんですが。
 作業中のお父さんの傍にある皿から何気なくサンドイッチを取るティム。
 →その後でアルフレッドに言う台詞が「Don't forget to feed the bats.」
 →アルフレッドの返事は「The very idea that I would ever forget to feed the bats,master Tim?」
ティムの台詞は、「蝙蝠の餌やり忘れないでね」というより、「あのお父さんにちゃんとゴハン食べさせてね」で、
そのサンドイッチはやっぱり、お父さんのだったんでしょう。
お父さんはどうも、夜食を用意されても作業に夢中になってると食べるのを忘れるようです。
それを当たり前のように食べるティムと、とくに反応しない蝙蝠様。 慣れてるね。
ちなみに↑の台詞に対するお父さんのコメントは、
「What? You feeds the bats?」
はいッ 一人だけ分かっていませんッ!
素だァ、この人……。 そんなあなたが好きですありがとうございます。

そんなティムが、週末ちょっとお出かけして帰ってきたら、子供が一人増えてるんですから。
人生色々ですね、この方々の場合。
ティムのダミアンへの反応は、大人なお子さんでした。 良い子だな……!
でもお父さんの前だとティムはちゃんと すねます。
 「If he is my son--even if he's not--he deserves some love and my respect.」
と言うお父さんに、
 「So let him earn it,like everybody else.」
と返して出て行くわけです。
わーいティムが怒ったー。 そりゃ怒るよ!
蝙蝠様のloveもrespectも滅多にお目にかかれない代物ですらかね。 (至極分かりにくいだけとも言う)
ただ、今回に限ってはこのお父さん、まともなことを言ってる気がします。
けど、なんだ、普段ちょっと吹っ飛んでる人が、たまにマトモなこと言うと、なんか怒りたくなるよね。
とかそんな気分ではないでしょーかー、ティム少年は。

その他、酷い怪我をして錯乱状態のパパを目の当たりにして、
「I'm always careful.」
とか言いつつ一人で突っ走った行動をしちゃうティムなどなど。
ティム→パパの構図に何やら胸がきゅんきゅんする一冊でした。
というか、モリソンさんの書くお話は、キャラが皆して蝙蝠様のこと大好きですね。


ダミアンについては。
ちょっと良く分かってないことが多いです。
つか、ああいう作られ方をした子供を実子と言っていいのかどうか。
ところで、ダミアンと言えば映画『オーメン』ですが。
あれは、取替えっ子のダミアンが両親を死に至らしめて莫大な遺産を受け継ぐ、というのがパート1です。
きっちりと恐ろしく、かつ映画として面白いので、一度どうぞ。
ダミアンを演じたあの子はすごいと思います。


最後に。
ペンシラーのアンディー・キューバートさんの描くケープがたまらなく好きです。
ちょっと癖になるざわざわ感。
そして尖がってる!
明らかに状況によって伸縮してますが、あれはきっと蝙蝠様の特殊能力なんだと思っておきます。



(2010年5月)

もどる