晴れた空を、弔いの鐘が鳴る。


先に立って墓地の出口へと歩く夫の後ろ姿を、
少し離れて彼女は眺めた。

夫の背は、妙に機嫌良さそうだった。
指の先で弄ぶ、白い薔薇の花。
近頃、色々な人の葬儀に出向く機会が増えた。

「いつかは私も見送られるんだ。
今は、人と人との絆を大切にしたいと思っているんだよ」

そうやって、国中を忙しく立ち回り、
確実に実績と人望を重ねていく先に、
アメリカ合衆国大統領の椅子が、夫を待っているという。
夫は、稀有な才能に恵まれた、天才だ。
彼女は、夫を愛してはいなかったけれど、
夫のことを良く理解していた。

レックス・ルーサーという男は、あらゆるものを己の道具と見なしている。
大統領になることなど、目的のための一歩に過ぎないのだろう。

「……怖い顔をしているな? あまり私を怯えさせないでくれ」

彼女を振り返ったルーサーは、おどけたように言った。
結婚して20年以上になるが、夫には全く変わらないことが一つある。

「あなた、彼のこと 諦めたの」
「私が? まさか」

ルーサーは、墓地の真ん中で立ち止まり、笑った。

「私ほど彼を理解している人間は、この地上にいない。
だから、私は今、待っているんだ」

この地球で最も神に近い生命体を倒すことに取り憑かれた男が、
彼女の夫だった。

「彼が、もう二度と戻れないところに達するまで、
引き止めてくれる者もなく、自分で自分を殺すしかなくなる日が来るまで、
彼を、待っていてやろうと思うんだ」

弔いの鐘が響き渡る。
どこからかヘリコプターの音が近づいてくる。

「……ロイス、君はいつだって美しく、聡明だ。
いつか君も理解する。
彼を追い詰め、息の根を止めるのに、本当は武力なんて必要ないのさ」

秘密を打ち明けるように、彼女の夫は楽しそうに囁く。

「たった一言で、充分なんだ」

くるりと背を向け、また歩き出したその背中を、
ロイスは独り、足を止めて眺めた。

墓地の向こうにヘリコプターが降りる。
頭のどこかを今日のこれからの予定が掠めては消える。
夫の背中は、やはり機嫌が良い。
その腕から、白い薔薇が飛んだ。


こうやって
仕方のない男達の、仕方のない世界の結末を見届けるのは
彼女なのかもしれない。

「冗談じゃないわ」
























振るった腕から、白い薔薇の花は
見知らぬ誰かの墓に、ふわりと落ちた。
口ずさむように、呟く。

「餞別だ」

くっくと笑って、ルーサーは凱歌に迎えられる人のように、墓地を後にした。






























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(結)

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(後書きめいたもの)


ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。
しかも、こんなとこまで読んじゃうよ、という方は、ありがたすぎて涙が出ます。 ぼろぼろです。

基本、短文ばっかり書いてる奴なので、長い文は、もう、酷い!
色々のたうち回りました。 勉強になりました。

さて。
妄想過多なお話でしたが、原書をご存知ない方にお教えしますと、
ぶっちゃけ03以外は全て妄想です。 夢いっぱいです。
原書では蝙蝠はシベリアで自爆、しかしその後も彼の志は受け継がれていったよ、というのが『SUPERMAN : RED SON』
『COUNTDOWN PRESENTS: THE SEARCH FOR RAY PALMER』も、だいたいそこまでで話が終わります。
しかし。
何とかあの超人に一言申したい! ていうか超人が怖いからどうにかしたい!
とかそんな心意気で頑張ってみましたが、いかがだったでしょうか。


キャラクターについては。
まず、ルーサーと蝙蝠の関係からいきますと。
原書の中であの装置を造ったのがルーサーだと明記されてたので、盛大に妄想してみました。
ルーサーの切り札である一言、というのは超人本ありますので、気になるよという方はそちらを御覧ください。
ちなみに、ロイスがルーサーの妻、というのもそちらの本にあります。

03、04あたりで言われている『彼女』はダイアナ姐さんです。
カウントダウンで彼女のその後が気になった方は、超人本の方を御覧ください。
ちゃんと復活した姿が見れます。

04にいたレイさんは、カウントダウンと同じ設定です。
そちらでは蝙蝠と同志で、最終的にはソ連大統領を脅迫してくれるナイスガイでした。

同じく04にいた三人の子供ですが、ええ、ジェイソンですとも。
大きいほうから、ディック・ジェイ・ティミーの順でした。 すごく妄想です。
ジェイは、カウントダウンでレイさんを探しているはずが、どう考えても蝙蝠を探してる割合の方が大きかったと思います。
なんかもうジェイソンには色々と募る思いがありまして、思わず話に入れてしまいました。
ちなみに、寒冷地の駒鳥は渡りをするらしいですね。

超人については。
「あなたはやっぱりカンザスの人でいてください……」という私の心の叫びが伝わったら、
もうそれだけで充分です。

あ。 最後にちらっと書いた蝙蝠の師というのは、ノリ的にデュカード師匠です。
夢いっぱいに妄想しております。


蛇足かもしれませんが。
04の終わりをどうするか、蝙蝠をどう退場させるか、については。
当初ははっきり描写するつもりでしたが、だんだん気が変わって、曖昧に終わらせようと思いました。
「なんじゃこりゃー!!」と思ってくださったら幸いです。
が。
一応、あそこに書かれたそのままでない、別の可能性も、なくはないかなあと思っております。
そこらへんは、読む方が好きなように読んでくださったら良いなあと。

ちなみに、キエフの化学プラントで事故云々は、カウントダウンの方で、
捕まったレイさんを蝙蝠が助け出す時に、陽動として計画されてたらしいけど、
なんか上手くいかなかったみたい、とか蝙蝠が言ってました。
おかげで超人がホントに怖かった。



以上、つらつらと駄文失礼しました。
ここまでお付き合いくださって、ありがとうございました。




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